19

マリアとポーラは道の端で地面に座りうつむきながら物乞いをする。


ポーラ「……マリア……」

マリア「……」

ポーラ「マリア……」

マリア「……なに、ポーラ」

ポーラ「ごめん……」

マリア「……どうして謝るの」

ポーラ「こんな惨めなことになって……私がマリアを誘ったばかりに……ごめん」


マリアはポーラを抱き寄せる。


マリア「いいよ……ポーラがそばに居てくれるだけで私は嬉しい。ありがとう、ポーラ」

ポーラ「ありがとう、マリア。私も嬉しい」

マリア「……うん」

ポーラ「お腹空いたね。このまま飢え死にするのかな私たち」

マリア「……なんとかなるよ……いままでそうやって生き延びてきたから」

ポーラ「そうだね」


アーサー登場。マリアとポーラの前を通りがかり、懐からパンを取り出して恵む。


ポーラ「ああ……ありがとうございます。マリア、パンだよ、パン」


マリアは頭を上げる。


マリア「……アーサー? なぜ」

アーサー「……マリア? まさか、マリアでは」

マリア「どうして、どうして……あの時、私を……私を助けてくれなかったの」

アーサー「それは……」

マリア「どうして……どう……はあ、はあ」


マリアは過呼吸を起こし意識を失う。


アーサー「マリア!」

ポーラ「マリア! 大丈夫」

アーサー「近くの宿で休ませましょう」

ポーラ「いまさらなにしに来たの。あなたのことはよく知っている。マリアから聞いたわ、見捨てたんでしょ! 最低な人ね。いまさら懺悔ざんげでもしに来たの」

アーサー「それは……そう思われても仕方ありません。確かに私の行いはマリアを見捨てたも同然です。しかし、もう過去の私ではないのです。マリアを救うと心に誓ったのです。マリアと共に戦うためにここへ導かれたのです」

ポーラ「嘘! どうせ自分のためでしょ。ぬぐえない罪悪感から少しでも解放されたい詭弁きべんでしょ!」

アーサー「なんと批判されようとも構いません。私はマリアを助ける一心のみです」

マリア「ポーラ……アーサーを責めないで。私もつい……言い過ぎてしまった」

ポーラ「マリア、無理しないで」

アーサー「外では寒さが体に障ります。とにかく宿でマリアを休ませましょう」


ポーラとアーサーはマリアを担いで退場。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る