09

牢屋。深夜。

マリアは牢屋の隅で丸くなっている。

町人(女)が登場。町人(女)は慎重にマリアの牢屋に近づく。


町人(女)「起きて……起きて……助けに来たから」


マリアは町人(女)に気づいて近寄る。


町人(女)「大丈夫? あのとき、すぐにかくまっていればこんなひどいことにはならなかったのに。本当にごめんなさい」

マリア「……あなたは……あのときの」

町人(女)「ここから早く逃げるのよ。牢屋の鍵を盗んできたから」


町人(女)は牢屋の扉を開ける。


町人(女)「さあ、早く。看守に見つかってしまう前に」

マリア「でも……どこへ……私には帰る所すらなくなってしまったのに。逃げても……この苦しみからは逃れられない。いっそ死んでしまった方が」

町人(女)「やめて、そんなこと言わないで。生きて。今はとにかく逃げて。お願い。あなたはなにも悪くないはずなのに、こんな仕打ち間違っている」

マリア「私を信じてくれるのですか」

町人(女)「ええ、もちろん。私も過去に性被害にあったから。けど、話しても全く信じてもらえなかった。だから分かるの。あなたの訴えは真実だって。だから、あなたをこのまま見捨てることなんてできない。ここから逃がすことしかできないけど。さあ、早く逃げて」

マリア「……ありがとう」


マリアと町人(女)が退場。

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