第41話 野球小僧-41

『さぁ、バッテリーの打ち合わせも終わって、試合再開です。バッター高松君、左打席に入った。イチロー君、無造作に投げた』

『あんたね』

『ストライク!無造作のようでしたけど、違いますか?』

『無造作と言えばそうだけど、無駄な力が入ってない投げ方で、イチロー君らしいフォームなのよ』

『でも、投げやりでしたよ』

『次を良く見てもらえばわかるけど、下半身が安定してるから、問題ないわ』

『そうですか。あ、イチロー君投げた。ストライク!ホントですね、普段とはずいぶん違ってカッコいいですね』

『かなり努力してますから』

『第3球、投げた、打った、打ち上げたぁ、ピッチャーフライ。あっけなく凡退です。たいしたものですね、江川君以外にもこれだけのピッチャーがいるとは。しかも、それがイチロー君とは、驚きましたね』

『それだけ野球部はレベルが高いということです』

『確かに簡単に同点に追いつきましたし、愛球会に勝機はあるんでしょうか?』

『ありますよ』

『どういう点でしょう?』

『それは、あきらめない、ということです』

『は?』

『どんなに不利になっても、どんなに追い詰められても、あきらめないということが第一です。必ず勝つとは限りませんが』

『…はぁ、なるほど、ありがとうございます。さて、今度は野球部の攻撃です』


 野球部の攻撃をサンディは3人で終わらせた。プレッシャーのせいか、さすがに疲れているようだった。

「サンディ、大丈夫?」

「サンキュー、リョウ。ダイジョウブ、デス」サンディ

「サンディ、次の回からは小林に投げてもらおう」高松

「まだ、ダイジョウブ、デス」サンディ

「サンディ、みんなが上手にならなきゃ」

「…そうデスね。リョウ、わかりました。ジュン、次はおねがいします」サンディ

「はい。じゃ、ちょっとキャッチボールしておこう」小林

小林は池田と一緒にキャッチボールを始めた。ちょっとサンディが淋しそうだなと思って、亮は戸惑ってしまった。


 イチローの球は制球されているように思って打ちにいくと外れて、見逃す決まるという、うまい荒れ方で7番の木村、8番の林を三振にしとめた。そして、亮は、縮こまって立っているといつの間にか、フォアボールになった。

 やったやった、と塁に出ると、次は気合の入った山本が素振りしながら打席に入った。


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