第15話

 10月25日(月曜日)は尚哉の誕生日だ。

 前日である今日は由紀の両親が、当日には自宅で簡単な誕生日会をする予定で、戸川や古角、二宮さんに田村さんも祝ってくれるらしい。


 由紀の自宅に行くと、知らない男性がテーブルに座っていた。

 この人、絶対何やってるなと思った。

 何かとは、空手とかプロレスとか、要するに格闘系の何かだ。

「こんにちは」

 とあいさつすると、男性があいさつと自己紹介をしてきた。

「こんにちは。初めまして、工藤英治といいます。話は色々聞いてるよ」

 と言った。

 何の話だ?と思いながらお父さんの顔を見ると、にこにこしながら、

「私の誕生日プレゼントさ」

 と言った。

 え?俺はBLの趣味はないんだけどって、困惑してると、

「工藤くんは私の友人の息子さんでね。警察官なんだよ」

 と言った。

 しかも交通機動隊らしい。

「残念ながら、僕自身はパトカー専門で、白バイ隊員じゃないんだけどね」

 と言ってから続けた。

「君が警察官目指してるって聞いて、高校生になったらジムカーナもするんだろ?なら何か役に立てそうだなって思ってね」

 すごくありがたい話だ。

「ありがとうございます。本当のところ何をしたらいいのか分かってないから助かります」

 と言った。

「実際、競技に出ている隊員もいるし、非番の時に競技について行ってもらったり、アドバイスももらえる必ずプラスになるよ」

だけど……

「僕なんてまだ中学生だし、警察官になりたいって言ってもまだ先の話なのに悪い気が……」

尚哉がそこまで言うと、工藤が、

「まぁいろんな理由があるんだろけど、最近は警察官目指してる人が減ってるんだよ。

人材確保は大変なんだ。英才教育ってわけでもないんだけどね。力になれることは沢山あるからね」

 お父さんもお母さんも、頷いている。

 断る方が失礼だな。

「ありがとうございます。じゃ、お言葉に甘えさせて下さい」

 と言った。

 一通り話しが終わったあと、4人で食事をとって、工藤さんは帰って行った。

 帰る前に、連絡先を教えてくれたのでスマホに登録した。

 LINEを送れば返信してくれるとのことだった。

「色々気を使ってくれてありがとうございます」

 由紀の両親にそういうと、

「息子が夢を追いかけてるんだ、全力で応援するのが親ってもんさ」

 とお父さんは言い、お母さんは頷いた。


 誕生日当日、朝、学校に行くと、戸川や古角、二宮さんたちに、

「お誕生日おめでとう」

 と言われた。

 みんなが離れた隙に、二宮さんが寄ってきて、お弁当を俺に渡した。

「今日、おかずが余ったから、一つ余分に作ったんだ。高橋くんがよかったら、私がお弁当作ってきてもいいんだよ」

 気を使ってくれてるんだろう。

「ありがとう、確かに一度お弁当になるとパンが味気なくなるのは事実なんだけど」

「ならいいじゃない。うちは3つくってるから一つ増えても変わらないよ」

「ありがとう、ほんといい友だちを持ったよ」

 二宮さんは

「へへ」

 っと、照れ笑いした。

 授業も終わり、みんなで俺の家に向かう。

「ただいま~」

 そう言うと母さんが、

「みんな、いらっしゃい、どうぞどうぞ」

 と、手招きする。

 料理は出来上がっていて、テーブルの真ん中にイチゴのショートケーキが置いてある。

10人分位はありそうな大きさだ。

 ローソクが15本立ててあって、母さんが火をつけた。

 せーのー……で、ハッピーバースデーの歌を歌って、終わってから一気にローソクの火を消した。

 母さんがケーキを切り分けて、お皿に乗せていく。

「おばさん、ケーキすごく美味しいです。またケーキ一緒に作らせて下さい」

 二宮さんが、頼み込んでる。

「うちの母さん、料理も上手いけど、ケーキもめちゃ美味だよ」

「うわー、高橋くん羨ましい。うちの母さん、スポンジケーキ膨らまないし、変に砂糖ケチるからケーキらしくないんだ〜」

「土曜日、日曜日ならいつでもいらっしゃい。あっ、ついでにうちで勉強すれば一石二鳥よ。みんなカラオケハウスじゃなくて、勉強はここですればいいのよ」

「高橋くんが邪魔じゃないならいいけど……」

俺の顔を覗き込む。

「高校行ったらみんな別になっちゃうし、俺はいいよ」

 まぁ、その方が気も紛れるし、由紀だって反対はしないだろう。

「ありがとう。じゃあ、ケーキの材料は買ってきますから、よろしくお願いします」

「いつでもどうぞ」

 母さんがにこにこして言った。

 ある程度食事も終わったころ、みんながプレゼントをくれた。

「みんなで買いに行ったんだ。これ、絶対尚哉着たら似合うだろうなぁって服をコーディネートしたんだ」

 戸川がそう言った。

「開けてもいいかなぁ」

 俺が言うと、

「いいよいいよ、開けて開けて」

 とみんなに言われた。

 開けると、そこには、ちょっとした高級レストランでも着ていけそうな、中学生が着るには大人っぽい服が上下で入っていた。

 あと、ネクタイも。

「結構高かったんじゃないのか?」

俺が言うと、

「まぁ、4人で割ったからな。大丈夫だよ。俺の誕生日期待してるから」

 戸川が笑いながら言った。

「ほんとみんなありがとう」 

 誕生会もお開きになり、

「じゃあまた明日」

 と言ってみんな帰って行った。

 2、3分してからチャイムが鳴る。

 そこには二宮さんが立っていた。

「あれ?どうしたの?」

 俺が言うと、

「プレゼントの渡し忘れ、別のお店でベルトも買ってたの。これもみんなからだからね」

 変に念を押してきた。

「ありがとう、気をつけて帰ってね」

「うん、じゃあ明日」

 そう言って帰っていった。


続く

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