第29話 蒼い髪のエレイン4

「で……どういうことなのかしら? 一応確認するけど、セインとエレインは付き合ってないのよね?」

「当たり前だろ!! 彼女なんてできたことないっての!!」

「えっと、これには色々事情があってだね……」



 俺とベル、エレインさんはヴィヴィアンさんに少しテーブルで待機してもらって、カフェの外で事情を聞くことにしたのだ。不審に思われるかと思ったが大量にプリンを注文するとヴィヴィアンさんは満足そうに「いっておいで」といいながらプリンを凝視していたので、大丈夫だろう。

 俺とベルの視線にエレインさんは目をあわさずきょろきょろとしながらもごもごとしている。



「これはその……冒険者をやめる事をみんなに説明したんだけど……なぜか彼氏ができてお嫁さんになるために家事見習い中って言う風になってて……なんか誤魔化すのも恥ずかしいから……」

「俺を彼氏って言う事にしたと……」

「だからって彼氏役はセインじゃなくても良かったんじゃないの?」

「すまない……まさか、確認に来るとは思わなくて……それに……セイン以外の男性の友人居ないんだ……」



 俺とベルは同時に頭を抱える。そりゃあ俺だってこんな美人な人と付き合えたらッて思うけどさ……事前に相談をしてくれていれば、もっとましなやり方はあったと思うんだが……



「後出しになって悪いんだけど、セイン君、ヴィヴィアン姉さんが帰るまで彼氏のフリをしてはくれないだろうか? 場合によって彼氏ができていないなら帰ってこいって言われるかもしれないんだ」

「まあ、Sランク冒険者ですもんね……」



 確かに貴重な戦力であるエレインさんを遊ばせておくのはパーティーメンバーとしてはもったいないと思うのも無理はないだろう。恋人がいるなら離れたくないっていうので納得はしてくれてもフリーなら話は別となるかもしれない。でも、俺に彼女いたことないんだがごまかせるか?



「仕方ないわね、セイン……あなたが嫌じゃなければ受けてあげてくれないかしら? 私の方でもフォローはするから。私もエレインがいなくなったら……寂しいし……」

「ベル、助かるよ!! この前、君が大事にしていたお皿を割ってしまったからクビになると思ってたけど私の事を友人だと思ってくれていたんだね」

「ごめん、思い出したらムカムカしてきたわ」

「ベルゥゥゥゥゥゥ!!」



 そう言って、一瞬エレインさんにデレたベルの表情が怒りに包まれる。なんでこの人は余計な事を言うんだろう。でも……俺もエレインさんがいなくなるのは嫌だ。いつの間にか、ベルやエレインさん、ガレスちゃんと過ごす日々が大切なものになっている事に気づく。




「わかりました。どこまでいけるかわかりませんが、彼氏のフリをしてみますよ」

「本当かい!! 助かったよ」

「でも、ヴィヴィアンさんって嘘が見抜けるんじゃ……?」

「ああ、そこまで聞いているのか、でも、大丈夫さ。彼女のスキルはあくまで感情を見るだけだからね、それに関しては秘策があるんだ」



 俺の言葉にエレインさんは得意げに笑った。なんか絶対失敗する気がするけど大丈夫だろうか?


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