王様だーれだ


「ぱんぱかぱーん。それでは、第1回王様コンテストを開催します」


 何ですか、その投げやり企画感丸出しのネーミングは。


「ルールは簡単! 我こそはと思う参加者は、こちらの出したお題で競い合い、最も王様に相応ふさわしい者が選ばれる。優勝者はズバリ、一年間この国の王様をやっていただきまあーす! イエーイ」


「いえーい」


「ノリが悪いぞ、宰相! そんなことで儂の側近が務まるか!」


 いきなり王様モードに切り替わられましても、話の内容とかみ合ってないですが。


 それでも、主君に求められればどんな道化も演じてみせるのが忠臣の矜持きょうじです。


「Yeeeeeeeah! Oh! Yo! Ohサマ・サイコー!」


「これは身分や年齢に関係なく、誰もが王様になれるチャンスだ。さあそこのアナタも、レッツ・王様! ……ってな感じで、宣伝ヨロ」


 ……スルーされた。


「立て看じゃんじゃん立てちゃって。あ、何なら城壁に垂幕バナー吊っとく? ついでに、広場にあるオレの銅像も活用してくれちゃっていいからさ。王様やる人、この杖とーまれ! みたいな!? あ、それ良くない?」


 王笏おうしゃくね。


「んじゃ、細かい競技内容なんかは宰相に任せるよ」


 本当に投げやりだった……!


 しかしこの王様、だてに世界7大ダンジョンを制覇しておられません。

 やるとのたまったら、その行動力並大抵ではないのです。


 たちまち驚異的な求心力を発揮あそばされ、会場をおさえ、演出、司会、その他諸々スカウトし、ケータリングの手配までなさって。

 そうしてその月の明けぬうち、ついに『第1回王様コンテスト』なるものを開催あそばされてしまいました。


 いえ、2回目はないですからね? ……願わくは。



 そして、翌日。


「っあぁー、スッキリした!」


 陛下は長年かけて伸ばしてきたひげを剃り落とし、髪もサッパリ短くして、頭陀袋ずだぶくろ一つを供に召されて仰せになりました。


「んじゃ、行ってきまーす」


「はっ!? ちょっ……お待ちください! 屈強な兵士を百名ほど選んでお供につけますので、しばしお時間を」


「はあ? 何それ、戦争に行くんじゃないんだから。オレは! 知ってるか、宰相。そういうの、チートっていうんだぞ」


「たかが百人で戦争は起こせません」


「そこは、百一人だろ? キミ、宰相なのに数字弱いの?」


「は、失礼いたしました」


 そうですね。千百人であれば、少なすぎるということもないでしょうか。


「んじゃ、そういうわけで!」


「待たんかーい! ……コホン、失礼いたしました。お待ちください、陛下。……あっ、陛下!?」


「…………(ツーン)」


「ははっ、臣は万死に値致しまする。さすれば――って、だから陛下、お待ちくださいと……!」


「オレもう、陛下じゃないもん。一介の冒険者だもーん」


 メンドクサ。


「いっとき冒険者に身をやつされていても、陛下はわが国の王であらせられます。どこでどうされているか、およその状況だけでも把握できねば国政に関わります」


 ていうか、このまま遁走とんそうされてしまっては敵いませんからね。


「じゃあ、宰相、一緒に来る?」


「はあっ!?」


 いえ、臣は宰相でして……。冒険などは、業務外です。


 剣を握ったこともないですし。たぶん、腕立て伏せもできないですよ?


腕立て伏せプッシュアップよりもシットアップをやるがよいぞ」


「……いきなり何の話ですか?」


「ようし、まずはドラゴンを倒しに行くぞ。ついて参れ!」


「はい?」


「待ってろよ、オレのユッケ丼!」


 はいいいいいぃー!?


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