[11話]佐々木幸の頼み事

 ホームルームが始まり、先生から夏期講習の説明が始まった。

期間は2週間ほどで、月曜日から土曜日まであり、

月曜日から金曜日は午前と午後、土曜日が午前中だけとなっている。


 科目は数学と英語と現国が週3回授業があり、

間の日に社会系や理科系の授業が入る形になっている。


 別にこの講義に強制されているものではないので、佐々木たちのように

夏休みを謳歌するでも、由崎のように部活集中したいから参加しない、

などは有りだ。


 俺は夏休み特に予定もないし、前期の試験で数学が赤点だったので、

数学の講義を申し込む予定だ。ああ早く文系になりていよう。


 てか佐々木は俺よりも成績ヤバいのに大丈夫なのかと思うが、

まぁ学年3位の桜井にでも飛びつけば大丈夫だろう、知らんけど。


「ねぇやじまーは夏休みどうするの?」


 ホームルームが終わると佐々木が俺の前の席に座って

こちらに体を向けてきた。制服が夏服使用になっている。

春より肌面積が広い。えい目のやり場のこまるずら。


「あ?ああ、そうだな。基本的には家にいるぞ。最近暑いから、

外出たくないんだよ」

 

 家でゴロゴロしながら、ゲームは至高のひと時といるだろう。


「まぁ最近てかここ2,3年熱いよね」


 顔の前で手を仰ぐ動作をする。

まじで地球温暖化せいで、大体27、28度とか暑すぎっだよな。


「まじそれな。まぁそれに家の用事以外特にないから

関係ないな、うん」


「なんだか、悲しくなるよ~」


 わざとらしく、ぐすんと泣くモーション付きで佐々木は言った。


「やめろ、憐れむな。ぼっちに日々磨きをかけてるだよ俺は」


 いつでもぼっちの日本代表にエントリーすること請け合いだ。

ステルス機能とか潜伏とか必要だろう。面倒くさいことに

巻き込まれないぞ。


「それは磨かなくてもいいよね!!でもそっか予定ないのか」

 

 俺の悲しい申告を聞いて、佐々木がすこし安堵したような気がした。

何、期待を裏切られない、ぼっちスピリッツに安心したのか。


「なら、うちの犬預かってよ」


「犬?お前犬なんて飼ってたのか」


 てか、突然どういう流れ。脈絡がねぇ。


「そうなの!超可愛いの。今見せるね。ほら、これ」


 佐々木が慣れた手つきでスマホを操作して、俺に写真を見せてきた。

てか近づくな、いい匂いするから。


「ミニチュアダックスフンドで名前はココアっていうの」


 佐々木に駆け寄る写真が佐々木に似て人懐っこいやつだとおもった。


「で、その犬をなんで俺が預かることになるんだ。じゃなくて、桜井とか冴島に

頼めばいいだろう」


「いつもは火憐かれん…たちに預けてたんだけど、皆予定が入っているから預けることが出来なかったんだよね。それに美奈子にも聞いたけど、ペットがそもそもだめらしいだ」


「ほう~なるほど」


冴島も桜井もダメと来たか。それで俺におはち…が回ってきたのか。


「だからお願い、夏休みの3日間だけ預かって貰えないかな」


 手を合わせて、俺にお願いをしてきた。


「でも家にペット用の餌とかリールとかないぞ」


「それは用意しておくから大丈夫」


「う~ん、とりあえず親に聞いてみるは。多分大丈夫だとは

思うがな」


家は動物が苦手とかなかったはずだ。


「ありがとう!助かるよ~」


 そんなキラキラした顔をされると断れないだろうが。

それに有希も喜ぶだろう。





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