ユリの心配事

「ゲンにぃ~?ゲンにぃ~?」

 朝、とある一軒家にユリの声が響く。

「ゲンキ様は、ご友人と三泊四日のご旅行中ですよ」

 朝だというのに、きっちりと燕尾服を着込んでいるユウが素早くユリのもとに行き言う。

「そうだっけ?誰と?」

「ゲンキ様が一昨日言っていらっしゃいましたよ。リオデレラ様とシュウト様とコウ様と……」

「あーわかったわ。いつものメンツね。仲が良くてなにより!」

 ユリは不貞腐れている。

「ユリ様、機嫌を直してくださいまし。あの私服真っ黒魔道士なんていなくてもいいじゃないですか」

 さり気無くゲンキをディスっているユウ。

「だってだって!最近、ゲンにぃ、休日とか、わたしの相手してくれないもん!」

「何を言っているんですか。先週は、フランクフルト?さん?との約束を断ってユリ様とお出かけしてくれたじゃありませんか」

「そうだけど!そもそも、フランクフルトとかいう奴の名前を教えてくれないあたり、その人が実在しているかどうかすら怪しいのよ!それに、ゲンにぃは絶対にリオデレラ達との約束は断らないじゃないの!」

 ユリはまくしたてるように一気に言う。そのあとにしゅんとして「わたしより、リオデレラの方が大事なのかしら……」と呟く。

「そんなことはありませんよ。ゲンキ様のユリ様LOVEっぷりは疑いようがありません!」

「じゃあ、なんで、最近、リオデレラ達とばっかり……。ま、まさか、ゲンにぃ、リオデレラに気があるんじゃ……!?」

 ショックを受けたような表情をユリは浮かべる。

「それはナイとは言い切れないですね。ゲンキ様が親しくしている女性の方はリオデレラ様くらいしか思い当たりませんし」

「そ、そんな……!」

「リオデレラ様は美人で聡明な方ですし、男性の多くは惹かれるでしょうしね……」

「く、くううううう」

 ユリは悔しそうに頬を膨らませる。

「ほらほら、ユリ様、そんな可愛い顔をしないでくださいませ」

「ゲンにぃ、そうだったのね……。そういうことだったのね……」

 ユリはそうひとり言を言ったあとにユウの方を見る。

「ユウは、リオデレラとゲンにぃの組み合わせはどう思う?」

「んんー。まぁ、そこそこお似合いだと思いますよ。リオデレラ様は美人ですし、ゲンキ様は、好みは分かれそうではありますが、イケメンの部類ですから」

「そう……」

「ま!ユリ様。そう心配しなくても大丈夫ですよ!ゲンキ様にとってユリ様はオンリーワンです!俺もユリ様のこと大好きです!それに、リオデレラ様には意中の人はいらっしゃるようなので、ゲンキ様は玉砕する運命ですよ!」

 しれっと自分の意見と身も蓋もないことを言うユウ。

「そうなの!?」

 ユリの表情が途端に明るくなる。

「そう、そうなの!ところでユウ、今日の朝食は何かしら?」

「ユリ様の好きなエッグベネディクトですよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

連作短編・AGAIN @sori_ag

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ