第7回 魔法とは便利なものだな(棒読み)

「なっ、なんなのじゃコレはーーーー!!」

「だからゼロムストライカーと言っている。バイクだバイク。」


ギルド入口に出現したのは俺の愛車ゼロムストライカーだ。

形こそレーサータイプのバイクに近いがオフロードにも対応しており、更にマシンにも浸透しているナノマシンによって公道だろうと土の上だろうと問題ない。

そして漆黒のカウルに走るのはメタリックグリーンの二本のラインだ。これはゼロムのスタイルチェンジに合わせて色が変わる仕様となっている。

最初はガソリンの心配をしていたが俺から供給される生体エネルギーにて動くので問題ないようだ。

特徴的なのは後部にとウイングが畳まれているくらいだろう。


「そうではない、どこから出したと問うておるんじゃ!こんなウマのようにでかい・・・機械か?そんなサイズのものが入る収納空間魔法などありえんだろう!」

「まあもっと大きいものも入ってるからなぁ・・・ってそれよりワイバーンだろ?さっさと倒しに行くぞ。」

「は?それこそフレイムベアーなどより危険な魔物じゃぞ!ワシに任せてっておい、なぜばいくとやらに乗せるのだ??」


俺は問答無用とジオをリアシートに乗せると跨りエンジンを起動し、人々が逃げてくるのとは逆の方向にバイクを走らせた。


「なっ、本当に馬のように走るのかコレは・・・って、速すぎるのじゃーーーーーいーーやーーー!!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そしてあっという間に里の大通りを俺たちが入ってきたのとは逆に走り抜けたゼロムストライカー。

直ぐにワイバーンとやらの姿が見えてくるのであった。


「よっと、あれがそうか・・・って大丈夫か?」

「酔ってはいないが・・・二度とゴメンなのじゃ・・・。」


想像していたよりもデカいなこれは・・・。


「GYOOOOOOOOOOOOON!!!」


なんせ地面に仁王立ちしたその姿は少なくとも三階建てのビルくらいは優にあるのだから体高だけで5~6メートルは下らないだろう、羽根を広げればもっとあるに違いない。

ミサキのやっていたゲームのワイバーンなんてとかげにしか見えないサイズだ。


「ここまでサイズ差があるなら・・・」

「喰らえ!【拘束呪法バインド】!!」


いつの間にか立ち直っていたジオがバインド?やらの魔法を放つと彼女の指示棒のようなものから光る呪文で出来たリングが複数ワイバーン向かって飛んでいくとその巨体に絡みついていく。

これが魔法か・・・俺にも使えやしないだろうか。


「どうじゃ、これがハイエルフの上級魔法であるぞ!見たこともないであろう!!」

「確かに、俺の世界にはこんなもの無かったからな。」


そう答えながら(これなら安全に変身できるな)とホルダーから【チェンジ】のカードを抜き、ベルトにスキャンさせた。


「変身ッ!!」

『カァメンレイダァアアッゼロムッ!!ウゥインドォスタァァイルルルゥッ!!!』


なんで今回は若干巻舌なんだ。

そうして俺は仮面レイダーに姿を変えて緑光のマフラーを首に巻きつけた。


「よし、あとは任せ」

「な、今度は貴様が変身するのかぁぁ!!??」

「とにかく任せろ、行くぞ!」


直後、拘束を無理やり剥がしたワイバーンが空へ急上昇した!


「いかん、ブレスが来るぞ!」

「炎を吐いてくるってことか?なら。」


俺はサッとジャンプして追いつくと大口を開けた竜の顎を蹴りあげて着地、ワイバーンは口の中で炎が爆発したように見えた。


『GURAAAAAAAAAAAAAAAA!?』


が、落ちてくることは無い。たしかにフレイムベアーに比べればタフなようだ。


「な、なんてジャンプ力・・・。」

「こっちの世界には変身して戦うような奴はいないのか?それだけリアクションがあると却って新鮮だ。」

「2000年生きたワシが知らぬのじゃ!」


こちらの世界には仮面レイダーはいないらしい。

まあどんな世界にも一人はいるなんてルールがある訳でもないだろう。

そうこうしているうちにワイバーンの方もこちらを敵と定めたのか、先程よりも高い位置で滞空して警戒しているようだ。


「どうするのだ?この高さでは流石のぬしでもとどかぬじゃろう?」

「平気だ、そのためのウイングユニットだ。」

「ういんぐ??」


カードを今度はバイクのタンクに直接差し込む。すると後部ウイングユニットが開き、ジェットエンジンが凄まじい音を立て始める。

そして俺はウイング部に膝立ちになる。


「ゼロムストライカー改め【ゼロムウインガー】起動!空はお前だけの縄張りじゃないとレクチャーしてやろう!!」


宙を駆け始めたゼロムウインガーはそのまま上昇していき目を見開いたワイバーンを捉えたのであった。

そのまま翼をはためかせて大風をぶつけてくる飛竜だったがその程度で俺を落とせるとは思わないことだ。


『サモォォン、ソォォドッ!!』

『ファアアイナルゥアタァァックゥ!!』


スキャンしたカードがたちまち剣の形を成し、本来ならば足先に向かうエフェクトの力はゼロムセイバーに吸い込まれていき・・・!


「トドメだ。」

『ゼロ・スラッシャアアアアアァッ!!』


加速した俺とウインガーは激しいメタグリーンのエフェクトを纏いながらワイバーン向けて突撃していき・・・すれ違いざまに一刀両断に切り捨てた。

ワイバーンは耐えきれず爆発四散した、南無三!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「・・・そうして飛行機械に立ち乗りして空中を走り始めたかと思いきやまた翡翠色に激しく光ったかと思うといつの間にか手には剣。それに光が吸い込まれるとワイバーンに突撃、そのまま斬り捨てると彼奴めは何故か大爆発!その後素材になって落ちてきた・・・なんて誰が信じるんじゃあああああああああああぁぁぁ!!!」

「まあ実際やったんだ、目撃者もいただろう?」

「現場に同行した者としてレポートは必須なんじゃ、これならまだワシが空に逃げたワイバーンを爆裂魔法で倒したとでもホラを吹いた方が納得がいくわ!そんな強力なもの使えはするが周囲への被害が尋常ではない。」


俺が倒すと爆発こそするものの、周りの建物まで吹き飛ばすほどでは無いようだ、斬って倒したのも爆発が最小限だった理由かもしれない。


「とにかくお主らは晴れて冒険者じゃ。ギルド統括としてはワイバーンとフレイムベアーの素材は売ってくれると助かるな。」

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