第9話
突然にスマブラがやりたくなった。
誰もが経験したことがあるであろうこの気持ち、突然昔のゲームをしたくなる現象に遼は陥っていた。
「ということで、久しぶりにスマブラやんね?」
「突然だね。まあいいけど」
「よっしゃー!」
ブラジャー事件から一日経った今日、ダイニングテーブルには昨日のことはなかったことにした遼と結衣の二人が、向かい合って座っている。今日も結衣が晩飯を作っていた。
昨日の晩飯に感動した遼が、結衣にお願いをした結果である。
結衣も悪い気はしないようで、任せとけと言ってノリノリで作ってくれた。
「でもスマブラするとなったら画面一つじゃキツイよね」
「そうだなぁ」
マリオをする分には一つのモニターで二人で出来た。
ただ、スマブラをするとなったらそれぞれが一つずつモニターを使う必要がある。
「私も家には自分のがあるから通話かな」
「折角隣の部屋に住んでるんだけどな。しょうがないか」
「それか私のモニターも遼の家に持ってくる?」
「天才か?」
晩御飯を食べ終わると、遼と結衣は結衣の家からモニターを運び出し、遼の家のリビングに設置した。
遼のモニターと横並びになる形である。
「これならソファーに横並びで座って出来るな」
「完璧だね。あ、でも」
「ん、どうした?」
「普通に一人でゲームやる時も藤くんの家にいかないと」
「あーそっか、一人でやる時も俺が居たら落ち着かないよな」
結衣には誰にも見られず一人でゲームをする時間が欲しいのかもしれない。
遼はあまり感じないが、一人でゲームする時も誰かの視線があるとなると、落ち着く時間が無いという考え方も分かる。
「いや、それは別にいいんだけど」
「ん?」
「藤くんの家なわけで、邪魔じゃないかなって」
「いや、それは全然いいぞ。モニター持ってくることになったのも、俺がスマブラしたくなったのが元だしな」
「そう?頻繁に入り浸る事になると思うけど・・・・・・」
「合鍵も渡してるわけだしな。毎日合宿みたいで楽しそうだ」
「良かった。でもちょっと悪いからたまに晩御飯作ってあげるね」
「それは嬉しいな」
「藤くんとゲームするの楽しいし、藤くんの家なら掃除もしなくて良いもんね。私も嬉しい」
「おい、後半」
「あはは」
この日以来、結衣が遼の家にいる時間が格段に長くなっていくことになる。
「藤倉くんはあまり彼女と一緒に居ないですよね」
「そうか?」
「確かに登下校は一緒だったりするのは見るけど、休み時間はいつも俺らと一緒にいるし、放課後も俺らといること多いよな」
「カップルなんだからもっとイチャつけば良いのにな~」
「まあカップルじゃないからな」
「「「え?」」」
3人の声が綺麗に重なった。
一々否定するのがめんどくさいからカップルのフリをしているだけで別にバレてはいけないわけではない。むしろバレた方がいい。
福島、真壁、最上の3人はこれからも良くつるむことになるだろうから、こいつらとぐらいめんどくさいやり取りをしてもいいと遼は判断した。
「ごめんなさい、無神経でした」
「すまん、別れてたとは知らず・・・・・・」
「ごめんな~」
「いやいや、そうじゃなくて・・・・・・」
「カップルじゃない=別れた」と勘違いしている3人に遼は事情を説明した。
「なんだ、そういう事でしたか」
「付き合ってないにしては仲が良すぎる気もするけどな」
「だよな~」
「まあ幼馴染だしな」
「幼馴染にしても仲が良いだろ」
「ですよね。私も幼い頃に女友達は居ましたが連絡はもう取り合ってません」
「結衣とは気が合うからな。幼馴染ってより親友の性別が偶然女って方が感覚は近いかもしれない」
「なるほど・・・・・・」
「そんだけ言える程仲の良い奴がいるって言うのは単純に羨ましいな」
「だな!」
「どうもどうも。・・・・・・じゃ、俺は帰るね」
「おう、またな」
「さようなら」
「じゃあな!」
三人と別れの挨拶を交わした遼は、自分の席に座っている結衣のところへ向かう。
「おい結衣、帰るぞ」
「だる~い、藤くん起こして~」
そう言って結衣は座ったまま両手を遼の方へ伸ばす。ちょうど、抱っこをねだる子供のような姿勢だ。
遼はそんな結衣の両手をしっかりと掴むと引っ張り起こした。そしてそのまま行くぞと言って先に歩いていく。結衣はその後ろを待ってとか言いながら小走りで追いかけて行った。
やっぱりどう見てもカップルがイチャついてるようにしか見えないよなと思った三人だった。
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