第6話

「エースが2枚、これで俺の勝ちだな」

「いや待て・・・・・・。ここは出そう、2とジョーカーだ!」

「おい、ふざけんな藤倉!俺残り3だけだってのに~」

「やっと福島が都落ちしたか」


作戦会議から三日程経ったある日の放課後。

遼は四人組で大富豪をして過ごしていた。

メンバーは前の席のやつ、後ろの席のやつ、左の席のやつと遼の四人である。


新クラスらしく、周りの席のやつと話すようになり、昼休みや10分休みに一緒に過ごすようになっていた。そんな4人で昼休みにやっていた大富豪が盛り上がり、こうして放課後に延長線をしていた。


「ねえー、藤くーん」


遠くから大きな声で呼ぶ声がする。


「おう、どうした結衣?」

「ごめんなさい、私今日あなたとは帰れない」

「分かった、じゃあな」

「もー、今度はボケに付き合ってね」


そう言いながら手をヒラヒラ振って、廊下の結衣は姿を消した。周りに数人の女子が居たので、結衣も今日は新しく出来た友人と過ごすんだろう。


「藤倉、須藤さんと仲良さげだよな。どういう関係なんだあ?」


前の席のやつ、福島がそうきいてくる。


「友人だよ。小学、中学と一緒だったんだ」

「とか言って、付き合ったりしてるんじゃないんですか?」


後ろの席のやつ、真壁が追撃をしてくる。


「まあ、そうかもしれないな」


そのための昨日の作戦会議である。遼は否定せずサラリとそう言う。


「高校最初から彼女と一緒何て羨ましいな~。でもいいのか?それなのに最近俺らとつるんでるだろう?」

「それはもちろん、俺が大富豪最強な事を証明しなければいけないからな」


左の席のやつ、最上とそんな会話を交わすとこの話題は終わった。

作戦の効果か、こいつらが良い奴だからかは分からないが、めんどくさい冷やかしも無く快適な放課後だった。


結局18.00まで大富豪を続け、日直の教員に追い出される形で帰路についた。

ちなみに結果は一位真壁、二位最上、三位遼、四位福島だった。おかしいな、高校時代は大富豪最強と呼ばれていたのに。




「おかえり~」


家のドアを開けると中からそんな声が聞こえる。


「おう、ただいま」


良かった。結衣が遠慮して合鍵を使わなければ、折角割り勘して買ったゲームを結衣だけが遊びづらいことになってしまう。それは申し訳ない。


「どんくらい進んだ?」

「6-4のスターコインが見つからないんだよねぇ」

「あー、やっぱりそこか」


スターコインというのはゲームを一通りクリアした人向けのやり込み要素だ。遼も6-4のスターコインが見つからずに困っていた。


「そうだ、今日この前の作戦使ったんだけど」

「お、どうだった?」

「効果てきめんだった」

「おー、それはすごいね。私は今日はきかれなかったけど、皆ききたそうにしてたし、明日ぐらいには使うことになりそう」

「効果抜群だからな。楽しみにしとけ」

「うん、そうする」

「じゃあ俺はシャワー浴びて来るから気にせずゲームしててくれ」

「分かった~」

「覗くなよ」

「努力はする」

「徹底してくれ」


遼はそう言うと洗面所のドアを開けて中に入っていく。

シャワーの音がすると、結衣は音のする方を一瞥した後、再びゲームを再開する。


「こんなの、今まで無かったイベントだよぉ」


シャワーの音にかき消されたそのつぶやきも、つぶやく結衣の耳が少し赤いことも、風呂場の遼が知る由もなかった。

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