第15話モモ子のやきもち

15モモ子のやきもち


ほんの少しであるが私は動物に好かれると思っている。


「この子は他の人には慣れないのよ。人嫌いで」という犬や猫に限って


飼い主がちょっと席を外した時に私の膝の上に乘ってきたりする。


また、たまに会う散歩中の犬が飼い主に見せたことのない姿態で私に甘えてきたりした。


私の中の統計では七割の確率であった。


いま、このニャンコが私になつくようになったのも


その確率のうちだと思っている。


大人になった猫が懐いて犬の散歩について歩くようになるなんて


不思議であると近所の人は言う。


私もそう思う。


猫って気まぐれな生き物であるから赤ん坊のころから可愛がっても


なかなか飼い主の思う通りに動いてくれないのをよく知っている。


猫にしつけは無理なのである。


散歩コースが短くなった事でモモ子が不貞腐れ始めた。


特に今まで散歩中に足を止めた通行人が注目するのはモモ子だった。


可愛いとか、大きいとかきれいねとか・・


ところが今は付いて歩くニャンコの方が目立ってしまって


モモ子の事を撫でてくれる人が少なくなった。


ゴールデンという犬種は人が好きである。


歩いている人は皆、自分に関心があって近寄ってくるものだと思っている。


何の関心も示さない人は別として寄ってきた人が猫の方に興味を示して


自分を撫でてくれないという事に我慢がならないのかとも思う。


結果としたモモ子がニャンコに意地悪をするようになった。


今まで黙認していたがニャンコが家に入るのを嫌うようになったのである。


ニャンコがいるところに寄って行っては鼻先でこづき出した。


そこのけ、なんでここにいるんだとでも言いたげな行動だった。


それで昼の交通量の多い時は危険回避の為にニャンコは犬小屋に入れて


モモ子だけ散歩に出かける事にした。


必然的に散歩のコースは元通りになり、ついでに時間のある時は


遠くまで出歩いてモモ子の機嫌を取ることにした。


そのかいあってモモ子の機嫌は直ったようであった。


また、ニャンコの存在を黙認してくれるようになった。


でも、モモ子の腹の虫は時折出てくるようでその後も時々は


ニャンコを邪魔者扱いして鼻先で小突いて追いかけまわしている。


当のニャンコはといえばいじめられても遊んでいるとしか思っていないようである。


かえって楽しんでいる様子も見受けられる。


ニャンコにとってはせっかく見つけた安住の地をちょっとやそっとの


意地悪位で明け渡せないとでも思っているかのようだ。






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