第3章 『いざ! 班対抗戦』

第28話 いざ! 班対抗戦

 養成学園の入学から早くも一ヶ月が過ぎ、大分学園生活にも慣れてきたリア達。そして、彼らを待ち構えていたイベント、それが班対抗模擬戦である。


 それぞれの班の先生達、そして、王や大臣達、シャウン王国の上役達も観戦に来るこの模擬戦。ここで注目を集めれば、より零番隊への道というのも近くなると言うことで、学生の皆も気合いが入っていた。もちろん、リア達第5班のメンバーだって例外ではない。そして、集まった学生達を前に、担任のイーナが説明をはじめる。


「今日の実習は、前々から言っていた通り模擬戦です。事前に伝えてはいたと思うけど、改めてルール説明をします」


 模擬戦が開催されるのは闘技場。すでに客席には、王や大臣達、それにお付きの兵士達が席について模擬戦が始まるのを心待ちにしているようだった。それにしても…… こんな闘技場まであるなんて…… 一体他に何に使うというのだろうか……?


 そんな事を考えていたリアをよそに、説明を続けていくイーナ。


「まず、皆さんには班ごとに分かれてもらい、勝ち上がり方式で試合を行ってもらいます。試合は、全員が戦闘不能になるか、ギブアップするまで。優秀な医療班も控えているので、全力で戦って下さいね。あとは、やばそうなときには、私や他の先生達が止めに入ります。大丈夫だとは思うけど、王様をはじめとして観戦される方々も沢山いるので、皆さんフェアプレーで頑張って下さい!」


 周りを見渡せば、生徒達は皆どことなく緊張した様子で、イーナの説明を聞いていた。そう今回の実習は、実戦形式。油断をすれば大けがを負うことだって十分に考えられる。


「では、最初にくじで対戦相手を決めます。それぞれチームの代表者は前へ!」


 第5班の代表は僕。ソールとルウに送り出された僕は、気合いを入れて壇上へと足を進めた。そして、同じく代表に選ばれた第6班の代表、カシンが、僕へと話しかけてきた。


「リア! お互い頑張ろうな!」


「こっちだって、負けないよカシン!」


 カシンは良い友達ではあるが、今回の実習に限って言えば、ライバルである事は言うまでもない。もし、第6班とあたることがあっても、僕は全力でカシンにぶつかる。そう決意を込めながら、リアはカシンに言葉を返した。


「じゃあ、1班から! アルフレッド! くじを引いてね!」


 皆の注目が集まる第1班の場所決め。アルフレッドが引いた番号は3番。他のブロックよりも1試合多い場所である。


 そして、1班から順番に、次々とそれぞれの班の代表者達が、対戦相手を決める為にくじを引いていった。次はリアの番。今まで1班から4班までは全てバラバラの場所へと入ったため、対戦相手が決まっている班はまだいない。


――せめて、最初は1班以外で……


 最初からアルフレッド達1班とあたるのは避けたい。そう思いながらくじを引いたリア。結果は……


「第5班は1番! 対戦相手は、第4班だね!」


 1番…… 要はこの模擬戦の一番最初の試合と言うことである。対戦相手は、肆の座であるヨツハ先生が率いる第4班。同級生とは言っても、リアもまだ第4班のメンバーについてはあまり詳しくはわかっていない。名前を何とか覚えてきたとか、そう言うレベルであった。


 ひとまず、初戦から第1班とあたることを避けられたリアは少しほっとしながら代表者達が待っている場所へと戻る。戻ってそうそう、リアに話しかけてきたのは、爽やかなイケメン。第4班の代表者であるグランである。


「リア、俺達が初戦だな。お手柔らかによろしく頼む」


 手をさしのべてきたグラン。流石は爽やかで女子からの人気も高いグラン、見た目もイケメンなら、仕草までイケメンときた。だったらこっちだって……


「うん、グラン君。僕達も負けないよ。良い試合にしようね!」


 出来るだけ爽やかに、試合が始まる前から負けるわけにはいかない。グランがさしのべた手に、リアも手を伸ばす。


「じゃあ第6班! 代表は、カシンだね」


 そして、そうこうしている間に、第6班のくじ引き。カシンがどこになるのか、リアも注目していた。そして、カシンが引き当てた枠は……


「4番! 2試合目は、第1班と第6班で決まりました!」


「マジかよーーー!!」


 カシンの大きな声が檀上で響き渡る。皆が苦笑いを浮かべ、檀上のカシンを見る。おそらく皆思っていたことは同じだろう。最初にあたるのは、第1班以外がいい。そう思っていることは間違いない。


「ちょっと…… あのバカ何してんのよ…… いきなり第1班となんて……」


 カシンのくじ引きを見守っていたファロンが小さく呟く。隣で一緒にくじ引きを見守っていたのは、ソールが励ますようにファロンへと声をかける。


「まあ、でもさ! 注目はされるから! それに私達だって一個勝ったら、第1班とあたることになるかも知れないし……」


「そうかも知れないけどさ……! ってソール! あんたそれじゃ第1班が勝ち上がる前提じゃん! あんたまで……」


 しまったというような表情を一瞬浮かべたソール。取り繕うようにソールが言葉を続ける。


「ちっ…… 違うよ! でも、そうなると…… どっちを応援したら良いか悩んじゃうよね……」


「ファロンさん、私達負けませんからね」


 そして、ファロンと一緒にくじ引きの行く末を見守っていたのは、ソールだけではなかった。ソールやファロンは竜人族のスウとルウともいつも一緒にいたのだ。気合いを入れる用に、ファロンに向かってそう告げたのは、スウ。彼女もアルフレッドと同じ、第1班のメンバーの1人である。


「決まってしまったからには仕方ない。スウ、あたしも全力で行くからね! 恨みっこは無しだ!」


「はい! 私だって負けませんから!」


 気合いを入れる様にそう言葉を返したスウ。そして、ソールはもう1人の仲良しの少女、同じ班のルウが少し微妙な表情を浮かべていることに気が付いた。ルウのそばまで寄って、耳元でルウへと問いかけたソール。


「どうしたのルウ?」


「……いえ、ただ、最初からスウお姉様と戦えるファロンさんが少し羨ましく思っただけです」


 すっかり盛り上がった様子のスウとファロンを尻目に、2人に聞こえないように小さく言葉を漏らしたルウ。そんなルウにソールは笑顔を浮かべながら言葉を返した。


「そっか、ルウは…… お姉さんと戦いたかったんだね!」


「……いえ、ソールさん、今のは忘れて下さい! 目の前の試合に全力で…… 向き合わないと駄目ですよね!」


「そうだよ! それに勝てば、次は1班とあたることになるかも知れないしさ! ファロンを応援するかスウを応援するか…… 悩むところだけど…… どちらにしても、まずは、私達が勝たないとね!」


「はい! ソールさん! 頑張りましょうね!」


 改めて気合いを入れ直すようにそう口にしたルウ。そして、遂に全ての班の対戦相手も決まり、模擬戦の開幕の時を迎えたのである。

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