第15話 第5班


「改めて、第5班の担当になりましたイーナです! リア、ソール、それにルウよろしくね!」


 休憩も終了し、班ごとのミーティング。リアとソール、そして竜人族の少女ルウは指導教官となるイーナの元に集まっていた。リラックスした様子のリアとソールとは打って変わって、もじもじと緊張した様子のルウ。そんな3人に笑顔を向けてイーナが語りかける。


「じゃあ、せっかくだから、お互い自己紹介でもしとこうか! じゃあ、男の子のリアから行こう!」


 急に振られたリア。自己紹介と言われても、別にイーナとソールについては今までも良く知っていたし、今更改めて自己紹介をする事に少し恥ずかしさを覚える。


「えっ……っと。リアと言います。 よろしくお願いします」


「私はソール。リアとは幼なじみになります! ルウちゃん、女の子同士、よろしくね!」


 リアに続いて元気よく自己紹介をしたソール。まだ緊張に包まれていたルウを気遣う様に声をかけたソール。流石、ソールはこういうときに頼りになる。そして、ルウも照れたように自らの名を告げる。


「ルウです。私、あんまり人間に会ったことがなくて…… でも、ここに来て、皆と一緒に勉強出来るのを楽しみにしてました。これから皆さんよろしくお願いします!」


「うんうん、さっきも言ったけど、これから実習とか、私と一緒に任務に当たるときとかは、基本的にこの班のメンバーで動くことになるんだ。命を預け合うような仲間になる。是非仲良くしてね!」


 そう、この学園はいわゆるただの学校ではない。一流の討魔師を育てるための学校であり、担当の教師と共に、実際に堕魔を相手にする任務にあたることも多いらしい。やはり実践でしか鍛えられないものがあるということだが、実際に堕魔を相手にすると言うことでもちろん危険を伴うこともあるだろう。


 書面では読んでいたが、実際にそう言われると、なんだか少し不安もある。そう思っていた矢先、イーナが笑顔を浮かべながらリア達に言葉をかけてきた。


「まあ、そんな怖がらなくても、最初からいきなりやばい案件にはあたらないよ。それに、私も付いてるしね!」


 私が付いている。実戦で堕魔と戦うということに不安を持っていたリアやソールにとっては、何よりも頼りになる言葉であった。これまでもリアやソールと一緒に過ごしてきたイーナではあったが、背中に大きく「伍」と書かれた零番隊のローブに身を包んだイーナを見ていると、頼りになるというか、一緒にいればどんな堕魔が来ても負ける気がしないというか、そういう気持ちにさせてくれるような存在だったのだ。


「あと重要なこと! 私と約束して欲しいんだけど、この学園の敷地の外では、私の指示無しに魔法を使わないこと! まあ…… 基本的には、任務とか、そういうの以外では外に出ることは少ないとは思うんだけど…… ちょっと、そこらへんは大人の事情でね……」


「はい!」


 元気よく声を上げたリアに微笑みかけるイーナ。イーナに迷惑をかけるわけにはいかない。リアも、ソールも、そしてルウも、イーナの言葉に同意する。


「それで、イーナさん…… じゃなくてイーナ先生! これから僕達の活動について、教えて下さい!」


「了解! まず皆の目標は、一ヶ月後の班ごとの対抗戦だね! それぞれの班が、勝ち抜きトーナメント方式でぶつかる…… 模擬戦だけど、個人の魔法の力だったり、班としての結束だったり…… そういうものを試すイベントがあるんだ!」


「模擬戦ですか……?」


 不安そうに声を上げたソール。対抗戦と言うことは、ミドウの班の連中、実際に既に討魔師としても活躍していたアルフレッドや、それに他の優秀な生徒達と戦うことになるのだ。


「うん、ちなみに優勝した班にはミドウさんから豪華景品があるみたいだからね! あとは、やっぱりそこで、活躍すれば…… 王様やもちろんミドウさんとかも見ているわけだし、零番隊に入る道も近づくと思うよ!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、リアもソールもそしてルウも目を輝かせるように、イーナの話へと食いついた。


「零番隊…… 僕達が?」


「そうだよ! なにせ、沢山いる討魔師達の中でも、みんなが一番零番隊に近い存在だからね! 頑張らないとね!」


 リアもソールもまだ実感は湧いていなかったが、この学園は、王の名のもと、零番隊の面々で将来の討魔師を養成する学園なのだ。つまり、確実にリア達生徒の中から、いずれ零番隊に座る者達が出てくるということになる。


「じゃあさ、じゃあさ! その対抗戦とやらで活躍して…… これから一杯活躍して、いつか、この第5班の皆で、零番隊になろうよ!」


 零番隊に一番近い存在という言葉についついテンションが上がったリアは、勢いのままそう口にした。一瞬戸惑ったような様子のソールとルウだったが、すぐに笑顔へと代わり、リアの言葉に頷く。


「そうだねリア! 今度の目標は、一緒に零番隊になる! それにルウちゃんも一緒に!」


「私も…… 零番隊になりたい! リア君やソールちゃんと一緒に!」


 力強く夢を語った第5班のメンバー。そんなリア達に担当教官のイーナが言葉をかける。


「うんうん、良い心がけだよ、皆! じゃあ早速だけど…… 第5班、最初の実習と行こうか!」 


「実習? 何をするんですか?」


 イーナの言葉に、疑問を投げかけたソール。一体何をするのかと、わくわくしながら待ち構えていた3人に、イーナは最初の実習の内容を口にした。


「第5班最初の実習! それは……! 私と君達3人、1対3の模擬戦だよ!」

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