魔術師が多すぎる

 ☆STEP 1


 今回も変り種。魔術師が科学者以上に社会の根幹を支えるパラレルワールドが舞台。今で言う「特殊設定ミステリ」の元祖的な作品。謎解き推理小説に魔法を持ち込むという大胆な試みがすばらしい作品です。作者はランドル・ギャレット。

 では、英訳作業に入りましょう。

 今までにないパターンです。いや、「九マイルは遠すぎる」がありました。

最大のポイントは「~すぎる」でしょう。程度が著しいという強調をどう扱うか。ただの「多い」はおそらく【many】でしょうから、なにかくっつけるとかがあるはず。

「魔術師」はきっと【magician】でしょう。でも、マジシャンだと「魔術師」「魔法使い」ではなく「奇術師」「手品師」のような気もします。スーパーナチュラルな「魔術師」を意味する英単語がありそうです。もにょもにょと呪文めかしてマジックだのイリュージョンだのとつぶやいてみましたが、結局、なにも出てきませんでした。


 ☆STEP 2


 妙案が浮かぶ魔法がないことがわかったところで……


 “Too Many Magicians”


 で、どうでしょう?




 ☆STEP 3


 正解は……


 “Too Many Magicians”


でした。


!!!!!!!!!!!!!!


 ちょっと気持ち悪い。結構、難問だと思ったのにスペルも間違えていない。『女には向かない職業』と違って、書店のカバーがかかったままなので、表紙デザインから無意識のうちに原題が脳に刷り込まれていることもない。

 でも、なにより、読み物として面白くない。ボツだな、ボツ。

 以前も書いたかもしれませんが、わざと間違えようとはしていませんが、間違えた答えのほうが企画としては面白いはず。

 ただ、この作品はとてもオススメなので、昨今、特殊設定ミステリがぐっと認知されてきたこともあり、原稿のお蔵入りは取りやめます。

 ちなみに手元の辞書で「魔法使い」をひくと他に【sorcerer】【witch】【wizard】なんて出てきました。【witch】は女性の、【wizard】は男性の魔法使いのようです。

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