第37話【メイシス王女の新工房】

「みんな、今日はお疲れさん!ララも良くサポートしてくれたな。凄く助かったぞ」


「あっ、あのくらい私にかかれば簡単なものよ!だって私はあああ……」


「あ?」


「あんたの婚約者なんだからね!!」


 ララが顔を真っ赤にしてデレていた。


「あははははは。うん。そう正面から言われると意外と照れるもんだよね」


 僕も少し照れた顔で笑い返していた時、工房の隣から大きな音が響いてきた。


ズシン!ガラガラガッシャン!


「なんだなんだ!?何の音だ!?」


 突然の音に僕達は工房の外に飛び出した。そこで見たものは瓦礫の山とそれらを運び出す人夫達の姿だった。


「一体何が!?ミルフィ何か聞いてるかい?」


「いいえ。私には何も連絡は来ていませんわ。

 隣は確か空き家だったはずですからどなたかが買われて建て替えでもするのでしょうか?」


「なるほどそうかも知れないな。まあそのうち分かるだろ」


 一体どんな人が買ったか興味があるがすぐに分かる訳でもないので工房に戻り久しぶりの休みをゆったりと過ごした。


 翌日からタクミはララに新しい魔道具の制作を急かされて試行錯誤をしていた。前に作った成長魔道具は効果が1日限定だったので簡単に作れたが今回のは少なくとも数十年は持たないといけないのでそれなりの素材と準備が必要になってくる。


『しまったなー。ララの要望を聞いていたら20歳くらいの姿にして欲しいと言われたけれど、これはかなり面倒な案件だったな。

 うん。ここは失敗したと言い張ってララもメイシスと同じくらいの年齢で抑えてもらうかな……』


「とりあえず作ってみるか。

 シール、これとこれとあの素材を出してくれ。

 ララちょっと協力してくれ」


 僕は魔力を圧縮しながら青色の宝石に少しずつ込めていった。魔力が増えるに従って青色の宝石はだんだん紫色に変化していった。


「よし、このくらいで一旦安定させよう。一気にやりすぎると宝石が壊れてしまうからな」


 宝石を魔力液に浸けて定着させる間にアクセサリーの台座部分の制作に入る事にしてララに希望を聞いてみた。


「ララ、アクセサリーの種類は何がいい?と言っても『指輪』か『腕輪』か『首輪』くらいしか無いんだけどな」


「ちょっと!『首輪』って何よ!?」


「ああ、間違えた『ネックレス』だな。で、どれがいい?」


「さらっと流したわね。まあいいわ。やっぱり『指輪』に決まってるじゃないの。

 一番邪魔になりにくくて一般的だし、自分で見ても嬉しいじゃないの」


『そんなものかな。いまいち女心は分からない事が多いな。

 まあ、希望があればそうした方が楽でいいけどな』


「分かったよ。じゃあララには指輪を作る事にするよ。

 前のオリハルコンの指輪と同じ指にはめるのか?」


「あっ そうだ!もう指輪はあるから同じ指にはめるか反対の手にはめるかになるのか。

 前の指輪は虹色で綺麗だけど宝石はついて無くて、今度のは宝石がついてるから同じ指は邪魔になるかも知れないわね。

 うーん、そうね。やっぱりネックレスにして貰おうかな」


「了解だ。じゃあ鎖部分はプラチナにしとくよ。

 流石にオリハルコンは難しいから勘弁な。

 じゃあこの宝石は一日魔力液に浸しておくから先に鎖部分を作っておくか」


「ふふっ。楽しみにしておくね」


 そう言ってララは自分の部屋に入っていった。


「さあ、僕達も今日は休もうか」


 僕は皆に体力回復の魔力飴を渡して自分の部屋に向かった。


   *   *   *


 次の日の朝の事。


「タクミマスター!外!外を見て下さい!」


「ミルフィどうした!?外がなんだって?」


 ミルフィの慌てた声に驚きながらも工房から外に出てみると。


「なっ何だこれは!?」


 僕は驚愕して思わず叫んでしまった。

 それもそのはず、そこにあったのは僕の工房そっくりで壁と屋根の色が違うだけの建物が建っていたからだった。

 そして看板には【メイシス錬金工房】と書かれていた。


『しかし、たった一日で建てるとか絶対頭おかしいだろ……マジで国王権限恐るべしだな』


 出来たばかりの工房を皆で眺めながらボヤくタクミであった。

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