第36話【メイシス王女の成人披露会 その二】

 メイシス王女の錬金術パフォーマンスも大成功に終わり、いよいよタクミの叙爵発表の番になった。


「次に国王陛下より数々の功績をあげた者への報奨の授受を行いたいと思います。

 錬金術魔法士タクミ様お入りください!」


 進行役ゴルドの呼び出しにより僕は広間の大扉から入場し国王陛下の前まで歩を進め、教えられた通りの手順で国王陛下に挨拶をした。


「ご指名により参上致しました。タクミと申します。職業は錬金術魔法士を担っております」


「うむ。よく来てくれた。

 彼は平民でありながら我が国に数々の有益な発明品をレシピとして提供し、国民の生活レベルの向上に多大な貢献をした。

 さらにメイシスの師匠として家庭教師を担いメイシスの錬金術技術の向上に多大なる影響を与えた。

 それらの功績を称えて、そなたを『名誉伯爵』に叙爵するものとする!」


 国王陛下の言葉に周りの貴族達がざわつき始めた。

 予想通りの展開に国王陛下が追い討ちをかけた。


「さらに、錬魔士殿はその力を遺憾なく発揮してメイシス王女を守ることを約束した。

 その証しがこのふたりだ。ショコラ、カレンこちらに来るが良い」


 陛下の言葉にふたりのメイドが前に出てきて自己紹介をした。


「ショコラで御座います。メイシス王女殿下の身の回りのお世話を担当させて頂きます」


「カレンです。メイシス王女殿下の護衛を担当させて頂きます。よろしくお願いします」


「このふたりは錬魔士殿が召喚した精霊達だ。

 皆も聞いた事があるだろうが精霊達の基本的能力は人とは比べ物にならないくらい素晴らしいものである。

 これからメイシスは彼女らを側近に王宮の錬金術レベルの底上げを担うために修行期間に入る予定だ。

 その期間もタクミ錬魔士殿を師匠としてメイシスを支えて貰いたいのじゃ。

 しかし王女の師が平民では示しがつかないので領地を持たない一代限りの名誉伯爵とすることにした!この決定は覆すことはない。皆も良いな?」


「「「「「はっ!仰せのままに!」」」」」


 国王陛下は満足そうに頷くと僕に貴族の証しである短剣を下賜した。僕は練習をしてきた手順で受け答えをしていった。


「名誉伯爵の地位。ありがたく受けさせて頂きます。

 また、メイシス王女殿下の錬金術の師として今まで以上に国家貢献に努めたいと思います」


 その後国家陛下はメイシスを前に押し出して挨拶をするように促した。


「皆さん、私はこの国が大好きです。

 そしてそれに負けないくらい錬金術が大好きで錬金術の発展に貢献したいと考えています。

 今回の部位欠損蘇生薬もひとつの幸せの形だと思っています。

 治らなかった怪我が治る幸せ。

 それにより諦めていた夢を再び追いかける事が出来る幸せ。

 そして怪我を恐れずに挑戦出来る幸せ。

 錬金術の可能性はまだまだこんな物ではありません。

 タクミ様と婚姻を結んだ後は私だけでなく子孫まで王宮錬金術士の発展に尽くす覚悟に御座います!」


「メ、メイシス。婚姻の話は今回は無しじゃと言ったろうが……」


「あっ!そうでしたね。申し訳ありません少々熱くなってしまい失念しておりました」


 当然周りの貴族達がまたざわつき始め一人の貴族が国王陛下に質問した。


「国王陛下。今のメイシス王女殿下の婚姻発言は本当なのでしょうか?」


 国王陛下は渋い顔をしながらも仕方ないと貴族達に説明した。


「まだメイシスは成人を迎えたばかりでこれから錬金術士として一人前になる修行を積む予定じゃ。

 恐らく少なくとも3年はかかるじゃろう。

 錬金術に惚れ込んでいるメイシスじゃから相手も相応に錬金術レベルの高い者を選ぶ事は必然じゃ。

 しかし、一人前になる前の婚姻は認めないのでそれまでは婚約者としてメイシスを守りつつ師として成長させる事を約束させたんじゃよ」


 国王陛下の説明に納得する貴族もいれば自分の息子にと狙っていた上級貴族当主達は不満の声をあげていた。


「不満がおありならお話を伺いますよ?」


 ざわついた場を静めるために僕は仕方なく最終手段をとる事にした。

 裏方に控えさせていた精霊の皆を傍に控えさせて不満を唱える貴族に無言の威圧をかけていった。

 精霊達の力を知っている貴族達はしぶしぶ不満を取り下げていった。

 どちらにしても国王陛下の前で不満を撒き散らす行為がいかに自殺行為か分からない貴族は長生き出来ないだろう。


「特になければ僕は下がらせて頂きますね」


 僕は国王陛下と周りの貴族達に礼をすると控え室に向かった。

 後ろではメイシス王女殿下の周りに貴族当主の人だかりが出来ていた。

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