第2話【錬金素材収集準備とレシピ情報】

 依頼があった次の日、素材の確保をする為に出かける準備をしていた僕にミルフィが確認してきた。


「マスター様、今回の依頼は『極楽ザメの牙包丁』と言う事でしたので、必要な素材レシピを確認しますと

◇極楽ザメの牙・30cm以上。

◇ミスリル鉱石・500g

◇堅質樹の枝・1枝

◇精霊石・白

 の4点になりますの」


 ミルフィが素材のリストを僕に提示してきたので僕は工房の在庫を確認してみた。


「この中で今現在、ミスリル鉱石は工房に在庫があるのと精霊石は錬金する時に作るから今はいいとして……。

 今回は“極楽ザメの牙”と“堅質樹の枝”の採取に行くことになるな」


 僕はそう言うと工房からミスリルソードと世界樹の杖、それと肩がけのショルダーバッグを取り出して召還専用の部屋に置いて魔方陣を展開させた。


「我が友愛なる精霊達よ、契約の言霊に魔力を用いて真の姿を具現化し、主の元に召還せり」


 僕の力ある言霊に魔方陣から赤色、緑色、青色の3色の光柱が現れて人型を形成すると光柱は消え去りそこには3人の人物が立っていた。


「やっと出番か。待ちくたびれたぜマスターさんよ」


「お呼びでしょうか。マスター様」


「今回はもう少し遊んで欲しいのだ。マスター」


 燃えるような赤髪で筋肉質の25歳くらいの長身男性がミスリルソードの精霊『ミスド』。


 若葉のような鮮やかな黄緑髪で落ち着いた18歳くらいのスレンダー女性が世界樹の杖の精霊『セジュ』。


 12~13歳くらいの童顔で快晴の空のようなマリンブルー髪のショルダーバッグの精霊『シール』。


「ああ。皆良く来てくれた。今回も素材収集に力を貸してくれ」


 僕はそう言うと3人を応接室に迎えながらミルフィに紅茶を頼んだ。


 錬金素材は自分で調達する事が素材の質も分かるし、臨機応変に別の素材も回収できる可能性もある為、出来るだけ行くことにしているが僕には戦闘力が皆無だ。


 かと言って冒険者の護衛を雇うとすれば貴重な素材収集だと、どうしても信用のあるらの高い冒険者にならざるをえない。

 常に彼らを雇用していたら出費がかさんでしまう事になる。


 そこで創造神ガルサスが言ってた『精霊の力を借りる』と言う選択になったのである。


 召還してみて直ぐに分かったのが、やはり精霊達の力は相当に強力であること。


 それは迂闊うかつに一般人に持たせて良いレベルではなく、戦闘系の精霊達が本気で戦ったら1対1なら冒険者のAランクどころかSランクでも勝負にならないのではないか?ぐらいのレベル差である。


 しかもそういった精霊達は気分屋で気の強い者が多く、とても普通の者が制御出来るものでは無かった。


 僕は召還マスターでガルサスの加護があるから召喚した精霊達からの信頼があるから制御出来てるが、それでも今回みたいな時以外は精霊界にて待機してもらっている。


 いや、こいつら召還中は凄く食うんだ……。

 食うと言っても通常の飯ではない。

 人型をとっている精霊達は人と同じに食事をすることは出来るが、人間の食べ物には魔力が殆ほとんど無いため、十分な魔力補給にはならないらしい。


 精霊達が大量に食うのは純粋な魔力だ。

 僕の魔力量は創造神ガルサスによってかなり多めに優遇されているが、それでも足りない時には錬金魔法によって物質から魔力を集める事が出来るスキルがあるので消費はそんなに気にしていない。

 だが、精霊達は活動に必要な魔力の供給の仕方がそれぞれ異なるからその準備が大変だ。


 今現在、貴族家に支えている精霊達は僕がこの世界に来てから作った濃縮魔力飴を定期的に支給されているが、彼らの能力は支援系なので魔法の消費が比較的少ないスキルばかりなので飴玉程度で対応出来ている。


 ところがミスドやセジュは戦闘系の精霊だから燃費が悪く魔力消費が相当激しい。

 普通の支援系精霊からみると軽く5倍は消費する。

 まあ、出力が半端ないから仕方ないのだが……。

 シールは補助部類なのでそこまでではないが、それでもシールの特殊能力【異空間収納アイテムボックス】はかなり魔力を使用するらしく普通の精霊達の2倍は消費するそうだ。


 ミスドは剣の達人で筋肉ラブな精霊で、食事は僕が錬金魔法を使う際に作る密度の濃い魔力球にアルコールを足して液体化した濃縮ポーション『極魔力酒』を好んで要求してくる。


 セジュは魔法全般のオールラウンダーだが特に風魔法と治癒魔法に長けている。

 こちらもポーション系なんだが高濃度の魔力球を果実とブレンドしてあたかもワインのように変換した物を好んで要求している。


 シールはアイテムボックス能力の持ち主で雑多の持ち物を異空間収納してくれる非常にありがたい能力なのだが、少々幼い為にイタズラやワガママを言う事があるのが玉にきずだ。こちらは補助系の為に飴玉で対応しているが時々美味しそうな食べ物がいいと言って僕に無茶振りをしてくる。

 なので時々現代日本式のクッキーやケーキとかを作ってやってる。

 僕は元の世界では料理は殆んど出来なかったのだが、この世界ではレシピさえ作ってしまえば錬金術で作る事が出来る。


 僕にとっては非常に助かる世界だ。


「さて、後は素材の情報だな。

 ミルフィ詳細を頼む」


「了解ですの」


 ミルフィはそう言うと説明を始めた。


「極楽ザメはここから2日の距離にある天象てんしょういただきにある霧の森に生息する体長5メートルクラスのサメですの。


 ただ、サメと言っても霧の中を泳ぐ空中サメですので注意が必要ですの。


 倒し方はバインド系ので動きを止めて物理攻撃で決めるのが正攻法ですが、風魔法で霧を散らして地上に落としてから止めを刺すのも有効かと思いますの」


「次に堅質樹の枝ですが、天象の頂から東へ約1日の所にある魔草原の中央にある巨木が堅質樹ですの。

 ただ、この巨木の周りは魔素が濃いので魔物が集まりやすい性質を持っているので注意が必要ですの。

 あと、枝は切っても大丈夫な部分と駄目な部分があるのでよく確認して下さいなの。

 今回の素材収集の冒険者ランクはAランクに相当しますので油断なきご指示をお願いしますの」


「了解だよ。ありがとうミルフィ」


 僕はそう言うとシールに必要な物品を渡してアイテムボックスに収納してもらった。


「じゃあ皆素材収集に行こうか!」


「おう!」


「わかりました」


「了解なのだ」


「戸締まりはしっかり出来てますの」


 僕は皆の返事を頼もしく聞きながら工房を出発した。

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