君の見る景色

プリントを後ろに回して!!

君の景色

隣の席の男の子が私は苦手だった。


明るくて、優しい、誰にでも分け隔てなく接していて眩しい。


私は彼に少し嫉妬していのかもしれない。


そしてその光は私にも向けられる。


だけど私の瞳にはその光は映らない。


顔も表情も分からない。彼のそのまばゆい声だけが私を揺れ動かす。


彼は私の障害など毛ほども気にせずズカズカと私のことを知りたがる。


まるで私の目が見えているかのように。


毎日毎日話しかける。


こんな私のどこを知りたいのか。


しりたい、、、しりたい、、、


私も君のことが知りたい。君の見る景気が見たい。


どんな映画を見るのか、どんな漫画をみるのか、、


そして君の景色に映る私が見たい。


何も映らないはずの私の瞳に彼の光が差し込む。







私の耳を甲高いサイレンの音が刺す。


クラスメイト達がざわめいている。


何かわからないが異常な不安を感じ、私は必死に彼の声を探す。


彼の暖かい光を私は求める。


しかし見つからない。いくら耳を済ませどあの光が私に届かない。あんなに近くで輝いていたのに今はもう木漏れ日すら感じない。


するとクラスの誰かが言った。


「階段から落ちた」


私は席を立ち彼の元に行こうと動き出す。


しかしクラスメイト達がそれを止める。


人だかりの中君が動くと危険だと。


私の瞳から光が奪われた。私はまた失明をした。


何も出来ない私は暗闇の中ただ遠のいていくサイレンだけを聞いていた。





嗅ぎなれたその病院の匂いに包まれて私はエレベーターに乗る。


301号室。彼のいる部屋だ。


しばらくぶりの彼に緊張しながら私は声を掛ける。


彼はあの眩しい声で私を歓迎してくれた。


しかしその声の方向は正確に私を捉えていない。


私は彼に言った。


「今度は私があなたの光、希望になるから。絶望だけはしないで欲しい」


すると彼はいつにも増した輝いた声でこう言った。


「絶望?むしろ希望だよ。やっと君の見る景色が見えた。」


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君の見る景色 プリントを後ろに回して!! @sannnnyyy

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