【2010年 実写化映画】まとめ。2010年当時の郷倉と倉木。

(※次の回を、対談でまとめるか、お互いにエッセイを書くか相談してました)


『倉木』


 次も対談にしよう。反応が遅れてすまん。休みの日に、嫁の両親がきたりしてた。


『郷倉』


 こちらも遅れて申し訳ありません。

 奥様のご両親に、新しい家を披露したんですかね?

 それだけで短編が一本書けそうなシチュエーションな気がします。


 次の対談ですが、どう「見るべき一本を決める」かってことですよね?

 2021年から振り返って重要な作品かな?


 まず、今回こうして対談してみて、倉木さんはどうだったのか。

 ということを尋ねたいんですが、その前にですね。

 2021年から振り返る前に、僕たちから見て2010年ってどういう年だったっけ? ということを軽く触れられたらと思います。


 僕は自分の記憶が正しければ19歳で、倉木さんと同じ学校、教室に通っていて、二人で駄弁ったり、鍋したり、「スクライド」を朝まで一気見したのとか、この頃だったんじゃないか? と思うんですが。


 倉木さんは2010年だとお幾つですか?


『倉木』


 24歳です。十月で25。地味に、犬飼書いた(※本を出した)年なんやなぁ。


 スクライドも、当時でほぼ十年前の作品(2001年の作品?)。


 スクライドばりに一気観するような映画を選ばねばなるまい。


 ちなみに、倉木推し作品は、当時の自分に観といたほうがいい映画を選ぶことにする。


『郷倉』


 あ、2010年が犬飼の年になるんですね。

 僕も二週目のエッセイでは「拝啓19歳の郷倉四季へ」というタイトルで、書こうと考えていました。


『倉木』


 推し作品は対談しても変化することなくて、シーサイドモーテルかな。


 短編を集めて長編にする方法論が、わかりやすく学べる映画。だから、当時の自分には、絶対にススメたい。

 もっと言えば「はつこいクレイジー」(カクヨム掲載作品)のプロットを作る前に、もう一度「シーサイドモーテル」を観ておくべきだったと後悔しているぐらい。「大停電の夜に」だけを参考にしたのは失敗だった。


 前に話した内容と重なるけれど、シーサイドモーテルの小粋なところは、登場人物には唐突な出来事でも、視聴者は他の話が伏線になってるから、驚きと同時に伏線回収されるというつくりだと思う。

 そして、他の話を知らない登場人物だからこそのドラマってのは熱いものがある。

 さきほども話題にあがったスクライドで、カズマと君島が編集された映像のせいで悪者扱いされてるシーンがあるんやけど。あのとき、視聴者だけは、お前らは悪くないって知ってる。あの感じをつくりだす方法が、シーサイドモーテルにはあるんよね。


 なにより、シーサイドモーテルの雰囲気は、邦画というよりも洋画っぽいってのも好きな点やな。だからこそ、邦画は好きだけど、洋画はそんなに好きじゃないよ、という人にこそ観てほしい作品でもあります。だって「シーサイドモーテル」を面白いと思ったら、洋画で気に入る作品も多いはずですからね。ゴロゴロあるよ。


『郷倉』


 視聴者だけが知っている、という構造は良いですよね。

 以前、僕は倉木さんに東浩紀の「ゲーム的リアリズムの誕生」という本をオススメしていた時期があって、そこで倉木さんがおっしゃる視聴者だけが他の人物たちの伏線を知っているからこそ、他の話を知らない登場人物のドラマに感動できる構造について詳しく説明されていました。


 その際に参考として引用されているのが美少女ゲームなのですが、倉木さんの今回の意見を聞くと、その視点は映画にも反映できる考え方だと思います。

 メタ物語とも「ゲーム的リアリズムの誕生」では語られています。


 そういう意味ではタランティーノの「パルプ・フィクション」も、そういうメタ的な視点を持つことで楽しむことができる映画になっていると思いますが、今回の「シーサイドモーテル」を見て面白いと思った視聴者にあえて次に勧めるとすれば、倉木さんは何を選びますか?


 邦画とか漫画原作とかを脇に寄せて考えると、なんでしょうか?


『倉木』


 ユージュアル・サスペクツかな。


『郷倉』


 1995年の映画なんですね。

 すみません、勉強不足で申し訳ないんですが、どういう映画か教えていただいてもよろしいですか?


『倉木』


 記憶をたよりに語るので間違えてるかもしれんけど。


 とある事件が起きて、唯一無傷で生き残った男が尋問される話。尋問される男の回想話で、事件を起こした犯人グループが、どのように集まり、どうして死んでいったかを話していく。その中で、顔すらわからない伝説のマフィアの存在が示唆されたりして……とにかく、最後のどんでん返しが見事でね。


 回想という不確かなものが99%を占める中で、尋問を終えた直後の男の動向だけは1%だとしても、紛れもない真実だけが描かれている。視聴者だけが、その真実を知り、どんでん返しになるというつくりは、シーサイドモーテルに通じる。群像劇で当人たちでは知り得ない情報を視聴者だけが知れるという究極形が、ユージュアル・サスペクツかもしれない。やっぱ、映画は洋画のほうが名作多いよ。


(※数日間の沈黙)


『郷倉』


 ここ数日、まったく機能していなくて、申し訳ないです。


 ユージュアル・サスペクツめちゃくちゃ面白そうですね。

 回想、つまりは語りという不確かなもので映画が進行していく、と。


 僕は今年(2020年)に読んだ小説はほとんど阿部和重と舞城王太郎なんですが、二人とも語りの作家なんですよね。

 そして、阿部和重は映画評論を小説にした「アメリカの夜」でデビューしているので、語りとしての映画というのは一つ、今の僕にはとくに興味深いテーマとなっています。


 そういう点で考えると、僕が19歳の頃の郷倉四季に勧めるのなら、「シーサイドモーテル」かな、という気はします。

 ただ、当時の僕が2010年の漫画の実写映画から良かった作品を選べと言われれば、「ソラニン」「BECK」になると思います。


 この二作には分かり易い見せ場があって、そういう分かり易いものを作りたいと僕は思っていました。

 それこそ色んなことはあったけど、実現したライブとか、人を感動させた歌とか、そういうカタルシスの開放。


 記号的ではありますが、読者(視聴者)がもっとも望むものでもあります。


 その読者(視聴者)が望むものが何かを正確に把握することは結構重要で、その後に倉木さんが今回提示したような、シーサイドモーテルやユージュアル・サスペクツといった、視聴者を驚かせたり、視聴者だけが分かるギミックが来るのではないか、と思います。

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