第15話 過去の記憶と現実 VI

僕のカラダの細胞があるべき正常なカラダの状態に戻すべく懸命に働き続け

僕の執刀医である医師からもお墨付きをもらい

僕は病院を退院する運びとなった

その執刀医である医師は患者さんからの評判がいいらしく

何度か、僕の病室にも顔を出してくれていた

何回か会話を重ねていく中で

あの日、僕に起こった現象を医師に話したところ

医師はバカにすることもなく、親身になって聞いてくれていた

一通り話を聞いた後、同期で親交のある精神科医を紹介してくれる事となった

退院の時、紹介状とその精神科までの地図を渡して

「何度か連絡を取り合って君の事は伝えてあるから、安心してな」

そう言って僕の頭をクシャクシャっと撫でてくれた

その医師の笑顔と、ナースの方々の笑顔を後にして

母親と共に、僕は病院を後にした

その後、何度か精神科に通院しカウンセリングや投薬治療をしたが

僕自身、良くなっているのか悪くなっているのか分からなかった

そもそもあの現象が病気と呼べるのか否かも僕自身分からない

僕は、頭がおかしくなった病人なのだろうか・・・それすらも分からなかった

精神科の医師は僕の話を丁寧に聞いてくれて

僕に起こるさまざまな現象や不具合に対応する薬を処方してくれた

でも、僕の中で根本的な部分は何も変わっていないことを感じていた

表面的な事は薬で対処できたとしても、根っこの深いところは何も変わらない

これが医療の限界なのだろうか・・・そう気づき始めていた気がする

そんなあやふやな状況の中、何時しか精神科には通院しなくなっていた

精神科の医師が悪かったわけじゃない

医師のおかげで救われた部分もある

だが、根本が何も変わらないのに時間と医療費がムダだと思ってしまったのだ

僕の脳を、僕の精神を、丸ごと全とっかえしないと僕の苦しみは解消できない

それは、僕が僕であることから死ぬまで逃れられない・・・そう悟った瞬間でもあった


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