第7話 ステータスオープンだー

 昨日、ガーラル院長に相談した内容を話すと、2人は真剣に聞いてくれた。


「ということを言ってもらったんだ。ごめん、臆病で……」


「なんだよ、全然臆病じゃねーよ!

 頑張っている所、真剣な所見てるし。そうだよな? ポー!」


「そうですよ。

 君が1人で背負いこまなくても僕たちは仲間なんですから」


 話して良かった。信じて話したから、今の僕を認めてくれたのかな。


「おっし、それじゃあ、ゴブリン置いといて、ホーンラビット狩り感張るぜ!」


「ガンガン行きましょう。目標100匹です!」


「あははははは」



 でも張り切りすぎるのも良くない。

 慣れているはずのベルトランがホーンラビットの体当たりをモロに受けた。


 横腹だったしうずくまって、かなり苦労しそうだ。


「大丈夫? 今日はもう、帰って休もうか?」


「平気だよ。こんなの大した事ないし、グッ……、それに……ポー頼むよ」


 駆け寄ってきたポーがおもむろに手をかざすと、なにやらブツブツと言い出した。


【 ヒール 】


 手のひらから優しい光が出てきたと思ったら、ベルトランが元気よく立ち上がった。


「え? 何? ヒールって回復魔法だよね!

 え? 魔法? ブワンって光って! うわぁぁ、カッコいいーーーー!」


 僕のハイテンションに2人ビックリしている。

 いやいや、驚いたのこっちだよ。


 魔法だよ! ヒールだよ! ポー凄いじゃん!

 なんでも、ポーの持っているスキルの1つらしい。いいなー! 僕も欲しいな~。


「何言ってるんだ、誰でも1つや2つあるだろ。

 ほら、エイブラハムだって飼育のスキルがあるし、ユウマだってスキル使ったことあるだろ?」


「えー、そんなの知らないから分からないよ」


「分からないって、ステータスオープンすれば、すぐ見れるじゃん」


「 ? ? ? 見るってどういう事? ? ? 」


「…………」


「もう、ユウマはオレがいないとダメだな。

 仕方がない教えてやるよ」


 うわー、同い年なのに兄貴風吹かしているよ。


「まずステータスオープンって心の中で唱えるんだ。

 そうすると目の前に、自分の名前や能力・スキルが見えてくるはずさ、やってみな」


 戸惑いながらも、ステータスオープンと唱えてみる、すると……。


 ユウマ·ハットリ

 ヒューム:男

 Lv:1

 ジョブ:中忍

 HP:16/16

 MP:20/20

 スキル:初級忍術 中級忍術 分身の術 限界突破 薬製作 サルマワシ


 おおお、目の前に広がるステータス画面に感動だ。

 あるはずのない物がそこにくっきりと見える。素晴らしいー!


「うわー! スキルがいっぱいだー!」


 しかもその内容に驚いちゃった。中忍って忍者だよ。やったーマジ嬉しい! 


 小学校の頃、《僕は服部半蔵の子孫なんだ》とか言って、

(飛び)加藤くんとずーっとニンニン言っていたお陰かな?

 うん、絶対そうだ。そうに決まっている。


 女子に白い目で見られても2人で頑張ってやっていた。


 あれがあったから憧れの忍者になれたんだ。


 ありがとう、小学生の僕! ありがとうニンニン! 信じてよかったー!


 忍術もいろいろあるし分身の術なんてもう涙が出そう。


 《さて本物は、誰かわかるかな?》

 いひひっ、言ってみたーい。


 限界突破もすごそうだしさぁ。


 あと薬製作やサルマワシは、もしかしてこれってさぁ、

 戦国時代の変装した仮の姿で暗躍する所から来ているものなのかな?


 薬師や曲芸師と言ったところかな?

 いい! 面白いし多彩な感じがするよ。


「なあユウマ、スキルがいっぱいって、ちょっと俺も見るぞ、いいか?」

 うん、いいよ。


「なんだこれ! ポーお前も見てみろよ」


「え? じゃあユウマ君見てもいい?」

 ちょっと不安だけど、どうぞ。


「こ、これはすごい。スキルが6つも……しかもジョブの中忍って、もしかして!」


「そうだよ多分、中ってことはまず下があっての事だろ、つまりまさかのセカンドジョブ!」


「ファーストジョブ持ちでさえ少ないのに、セカンドだなんてうらやましいですね」


 聞けば、ジョブは先天的に持っている人は少なく、修練を積み得ていくものらしい。


 それによってスキルが発生したり、

 逆にスキルを磨くことでジョブを得ることもあるそうだ。


 つまりこのアドバンテージはかなり高いってことだ。


 ちなみに、ステータスは誰のでも見れるらしい。

 ただし相手の許可を得なければ詳しいことは見れなく、普通は名前とレベルだけだ。

 2人のステータスも見せてもらった。


 ベルトラン

 獅子人族:男

 Lv:1

 ジョブ:ー

 HP:21/21

 MP:8/8

 スキル:盾術


 ポー

 ヒューム:男

 Lv:1

 ジョブ:ー

 HP:15/15

 MP:13/17

 スキル:交渉術 回復魔法


 2人もそれぞれに合ったステータスとスキル。


「ユウマ、火遁の術ってどれ位の威力か分かる?」


 知らない世界にやってきて自分のことでも分からない事だらけ。

 不安もあるけど少しワクワクしてきた。


「ねぇ、分からないし明日からスキルの実験に付き合ってくれる?」


 2人が笑顔で応えてくれる。

 このワクワクは僕だけの物じゃないみたいだ。




 次の日になりホーンラビットのノルマ2匹を素早く終わらせ、早速忍術スキルの検証を始める。その内容は、


 ⒈ 忍術それぞれの威力

 ⒉ 有効範囲及び射程距離

 ⒊ 発動までの速度

 ⒋ MP消費量

 こんなものかな。


 まず何から始めるかといえば、もちろん火遁の術しかないでしょう!


 火力・響きの良さ、あと言っている姿がカッコよくない?

 《カトンのジュツ》 クーッ、いい、いいよ!


 先ずは、10㍍先に胴回り程の丸太を立た。

 人生で初の忍術を試します……あ~緊張する~。では……!


【火遁の術·火炎弾!】


 印を結び唱えると、

 すぐさま目の前にボーリングの玉くらいの火の玉が現れ、

 丸太をめがけて飛んでいった。かなり早い。


 炎が丸太を包むと、半ば黒く焦がした。

 着火はしなかったけど、短時間であの燃焼力は凄まじい。ニヤついちゃうね。


「すげぇユウマ! 何がいいってカッコイイのが良い」


「終わった後のあの右手がいいですね」


 やりすぎたかな。

 右手いらないのに……でも知らない顔をしておこう。

 他の検証もあるから仕方ない、仕方ない。


 距離は15㍍が限界で、それ以上だと方向が定まらない。

 しかし消費MPはなんとゼロ!

 少なすぎ、威力の割には少なすぎ。


 なぜだろう、もしかしたら忍術は魔法でもスキルでもないのかな?

 う~ん、分からない事を考えてもしょうがないし、次の中級火遁の術に行こう。


 中級火遁の術とされる『火炎熱波』は範囲攻撃のようだ。

 2人には離れてもらって、いざ。


【火遁の術・火炎熱波】


 今度は胸先より1㍍先で炎が出た。まるで火炎放射器のような出方。


 横に振れば横へ、上を向けば上へと広い範囲で燃やし続ける。


 時間は5秒ほどで止まったけど、時間的には十分だよ。で距離は火炎弾より少し短い。


 しかし効果は絶大だ。

 放射は終わっているのにまだ燃え続けている。

 ほら、横の木にも移ったよ。


「なーユウマ、そろそろ火を消していいぞ」


 あ、そっか。心の中で念じてみる。



 ………………消えない…………。



「ねぇ、ポーどうやって消したらいいか知ってる?」


「「えーーーーーー!」」


「やばい、やばい! 水、水、水! 早く汲んこなきゃ」


「ウソーーーーーー!」


 やばい火の勢いが凄いよ……もうあんなに。


 ……どうしよう、あぁ~風下には街がー!

 このままだと…………アァァァ~。




【 水遁の術・水華弾すいかだん 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 はぁっはぁ……水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 水華弾 ハァー…………水華弾 水華だーん ヒィ~~ッ 】


 な、なんとか鎮火できて……良かった。

 ……はぁ~、水の出るスキルがなかったら詰んでいたよ。


 それと、初級水遁の術 水華弾すいかだん消費MP量ゼロで助かった。


 わかった事がある。


 小さい頃火遊びをしちゃダメって、こういう事になるからだったんだ……。


 このあと3人で相談した結果、火遁の術は半ば封印となった。

 使いどころが難しい。

 火事もあるが、狭い所で使ったら酸欠で自分たちが死んじゃう。


 疲れて終わりにしたいけど、中級水遁の術だけはやっておこうか。


 中級水遁の術・薬水やくすいは攻撃手段ではなく文字通り薬になる水だ。


 ステータスでスキルの説明を読んでみると、

 単体でも多少の疲労回復の効果はあるが、基本薬製作に使うものらしい。


 試しに飲んでみたら、少しだけ元気になった気がする。


 消費MPは、火遁·水遁ともに同じく中級はMP4だ。


「なあ、ユウマ。この忍者ってジョブ凄くねぇか?

 魔法の威力も桁違いだぜ」


「うん、僕の住んでいた国でもね、ヒーロー的存在なんだよ。

 主君の為に技を磨き、黒装束で気配を消して忍び寄る、情報収集のエキスパートなんだ」


「へぇー、気配を消してってなんかかっこいいな」


「姿を見られず誰にも気付かれず1人闇夜をつき進む」


 あれ……?


「お城に忍び込んだりして1人で何日もその場に潜伏するんだ。

 闇に隠れて誰とも喋らず、有力な情報をつかむまではね」


 これって……。


「ははは、それをマジでやったらすげー寂しいなぁ」


 本当だ……嫌な事を思い出した、誰とも喋らず友達もできない学校生活。


 途轍もなく寂しくて、悲しくて、このまま人生が終わるんじゃないかと、思い悩み泣いたこともあったんだ。


 二度とあんな風なのはゴメンなのに、なんか忍者の特性とカブッている。


「ぐばっ! 芯にクリティカルヒット」


「急にどうしたユウマ?」


 影のような生活だなんて絶対やだよ。


「そのジョブが嫌なのか?」


 忍者は嬉しい。でも〝忍ぶ〞のは嫌だ。


「どういうことだよ」


「僕はね、絶対に忍ばない!」


「お、おう。ユ、ユウマは目立つし、忍べないんじゃないかな?」


 優しい友達の言葉に感謝だよ。僕を落ち着かせるために気を遣ってくれている。


 とにかくこれからは忍びであっても忍ばない。そんな忍者を目指します。




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