修学旅行ソウルメイツ

生田 内視郎

修学旅行ソウルメイツ

「それじゃ、もう電気消すわよ」

「えー!?冗談でしょ、夜はこれからじゃん」

「そーだよー、まだポーカーも枕投げもスマブラもやってないよ」

「アナタ修学旅行にスイッチ持って来たの!?

そんな重い物持って来るなんて何考えてんのよ…」

「何って…」

「カナは遊ぶことしか考えてないもんねぇ」

「何よぅ、みんなやるでしょスマブラ、それともスプラの方が良かった?」

「やってスマホのソシャゲでしょうよ、ゲーム機本体持ってくる猛者はアンタくらいだわ」

「確かにw」

「これ一生私の笑いのネタにするわw」

「何よっ!いいよみんなはやんなくて!大広間のデカいテレビで一人で遊んでくるから」

「イヤイヤ」

「イヤイヤ」

「普通に見つかるわ、やっても男呼んで遊ぶくらいじゃない?」

「え!?男子呼ぶの!?呼んじゃう!?召喚しちゃう!?ご降臨させちゃう!?」

「いやーもう無理でしょ」

「ハイハイ、そんな時間もう無いわよ。明日も早いんだからとっとと寝る!」

「あ゛ーー!!電気消さないでーー!!」

「おやすみ」

「すみ〜」

「…」

「ねーホントに寝るの?」

「寝るよ、明日も早いんだから」

「こんなに早く寝れないよ〜」

「確かに」

「となるとやっぱり…」

「…ねぇ?」

「もちのろん」

「くふふっ」

「─怪談デスヨネ〜」

「うわぁっ!」

「急にライト付けんのやめな!目に悪い!!

あと顔も気持ち悪いっ!」

「えぇ、怖いって言ってよ…、流石に気持ち悪いは傷付くよ」

「ああ、ごめん。ってか普通そこは恋バナでしょ、仮にもアタシら女子高生よ」

「え?何かあんの?さては明日抜け駆けする気かっ!?」

「何ィ!許さん!父さんそんなふしだらな子に育てた覚えは無いぞっ!」

「育てられた覚えもねぇよ、何も無いわよ悪かったわね。てか、ウチの男子共の中に候補なんざ居ないでしょ」

「アイツら皆してすーぐ女子置いてどっか行っちゃうしね」

「分かる〜!!バスん時でしょ、アレは無いよね〜」

「あれ?でもいいんちょ確か飯田君と付き合って無かったっけ?」

「え!?嘘っ!いつの間に…まぁ堅物同士お似合いだけど…」

「……たわよ」

「え?」

「とっくに別れたわよ!!悪かったわねっ!!」

「ええっ!?いつ!?いつ別れたの!?」

「正にさっき話してたバスの時よ!君は束縛が激しすぎるって、自由に生きたい、俺はも゛う゛君にじばら゛れ゛だぐな゛い゛っで〜〜!!」

「おお、ヨシヨシ可哀想に」

「アンタ顔笑ってるわよ」

「本当だ、心の醜さが顔に出てる」

「う、うっさいわね!ホントに可哀想だとは思ってるわよ!」

「はぁーあ、折角の修学旅行なのに碌なことないなー、誰かナンパとかしてくんないかしら」

「いやー無理っしょ」

「ちょっと、それどういう意味よ!?」

「喧嘩しない喧嘩しない、どうだい、ここは一つ、怖い話でもして皆の結束を一つにまとめようじゃ無いか」

「強引に方向修正しに来たわね」

「どっでおきのネタなんだよ〜、頼むから話じで供養させどくでよ〜」

「分かった、分かったから引っ付かないで暑苦しい」

「ふっふっふ、用意はいいかなお嬢ちゃん方、

チビっちゃうのが怖い子は今のうちにおトイレ行っとくのをお薦めするよ」

「あ、アタシ行ってこよー」

「逃げたな」

「なるべくっ!なるべく早く帰って来てねっ!?」

「いいからはよ話せ」

「あべしっ!」

「イタタ、ったくせっかちな子だよ、慌てる乞食は貰いが少ないって諺知らんのかね」

「いいから」

「はいはい、ええ、ゴホンッ。これはウチのクラスに実際にあった話なんだけどね」

「ウチのクラス?何か有名な話あったっけ?」

「アレじゃない?私達の代に入学する筈だったのに、入学式で車に轢かれて死んじゃったって子」

「ええー、ゴホンゴホン!ゴホンゴホンッ!!

続きよろしいかしらっ!?」

「悪かったよ話の腰折って、進めて進めて」

「その子は、最初自分が死んだことが分からず、死んだ後もしばらくクラスの中にいて一緒に授業受けてたんだって。」

「え?そうなの?何も感じなかったけど」

「ああでも、時たま奇妙なラップ音みたいなの聞こえてたことあるよ。あと勝手に椅子が動いてたりとか」

「そう!!それは皆、実は彼女の仕業!!死んで皆に見てもらえなかった彼女は、どうにか自分に気づいて欲しくて色々なメッセージを送っていたの」

「随分遠回りなメッセージだな、直接言えよ」

「幽霊なんだから無理でしょっ!!」

「冗談だって、怒んなよ」

「もうっ!ゲフンッ!えー、それでもクラスの皆に気づいてもらえなかった彼女は、どうにか自分の存在を伝えたくて、ある恐ろしい計画を立てることにしたの」

「ああ、それでバス事故起こして、全員殺して自分と同じ幽霊になって存在を認知してもらおうとした訳ね」

「てか、その幽霊ってアンタでしょ」

「ギックゥッ!!!な、何故バレたっ!?」

「バレるも何も最初から皆分かってたっつーの、たく、とんだとばっちりだわ」

「…ごめん、なさい、皆怒ってるよね…?」

「怒ってるけど…、はぁー、ま、起こっちゃったことはもうしょうがないしね」

「そうそう、こうして死んでも修学旅行は楽しめてるし、まぁ結果オーライよ」

「男子達は異世界転生するとか言って皆とっとと成仏してったけどね、たく、男ってホントしょーもない」

「ね、高校生にもなって厨二病かっつーの」

「み、みんな…」

「ま、死んだことでこうやってアナタとも知り合えて友達になれたし、あとどこまで続くか分からない幽霊ライフ、精々思いっきり楽しみましょ」

「よーし!いっちょ円陣組むか」

「いいね、掛け声は?」

「ワタシタチィー、ソウルメイツ!ってのは?」

「魂だけにってか!?いいねぇウケる!」

「よし、それじゃ行くよ皆。ワタシタチィー!」

「ねぇ皆聞いてっ!さっき仲居さんが話してたんだけど、今からこの部屋に旅館お抱えの坊さんが除霊しに来るって!!」

「「「「な、何だってーー!!!」」」」

「どうしようどうしよう」

「どうしようって、早く逃げなきゃ」

「待って!それで私先に顔見に行ったんだけど、

その人めっっっっっっっちゃくちゃイケメンだったの!」

「えっ!?」

「それマジ!?」

「マジマジっ!例えるならキムタクと生田斗真と松坂桃李とブラピを足して四で割って2乗して坊主にした顔だった」

「逆にわかりづらっ」

「兎に角一回見たほうがいいって!顔見ただけで昇天しちゃうから!」

「えっ、昇天しちゃうの?迷う〜」

「隣の部屋の女子大生、そこそこ顔良かったわよね?憑依してこっ」

「ああっ、ズルい!私もっ」

「ちょっと!抜け駆け無しよっ!あ、いいんちょ

先行くなっ」

「あなた達は年増の仲居さんで充分よっ!

待ってて私の王子さま…じゃなかったお坊さま〜」




「…死んでも女の友情って儚いのね、勉強になるわ〜」



 



○○年△△月××日、この日に起きた高速道路バス滑落事故は、乗っていた修学旅行生全員の儚い命を失った凄惨な事故として語り継がれることとなった。

一方で、同日彼らの宿泊する筈だった旅館で一人の住職が謎の死を遂げたことはあまり知られていない。

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