第40話 来日

 そのH60生産計画を視察しに、『ユーネム』準備委員会から、かつてゲッヘラーの基地だった葛西臨海公園のコントロール・センター、(今では” Japanese Alternative Energy Development Center ” 通称『バッキー・センター』って呼ばれている)へ、国連の代表達が来日したって訳。

 

 バッキー・センターで、準備委員会の代表と挨拶を交わす私達。すると、その視察団の中の一人の大柄な白人男性が突然大きな声を上げ、

 

「お前は! ジェイド! ジェイドじゃ無いか!? 俺はてっきりお前が死んだ物だと・・・」

 

 どうやらジェイドさんの昔なじみの人みたい。 

 

「お、お前は・・・、アッシュか? オレはご覧の通り五体満足さ! お前こそ、あの内乱をシブとく生き延びやがって! 何だよ、その高そうなスーツ姿は、Aah?」

 

 ジェイドさんとアッシュ高等弁務官は、久し振りの再会を歓喜する様に、お互いの肩を叩き合いながら握手する。

 

「ジェイド、お前ってヤツは! お前、我が軍の記録では、「作戦参加中にK.I.A.(戦闘中死亡)扱いになってるんだぞ!?」

  

「まぁ、カタい話しは抜きにしようぜ、アッシュ。 それにお前だって、ただジャングル・ブーツから足を洗って、国連バッジとアルマーニのスーツかよ!? 随分な出世振りだな?」

 

「実は、H60の組織にお前らしき人物がいるってんで、昔なじみのこの俺が呼び出しを喰らったって訳さ。 まぁ、ここは「持ちつ、持たれつ」で行こうぜ、兄弟!」

 

「相変わらずのお調子者だな、アッシュ? だが、オレはもう、お偉方の命令に振り回されるのにはこりごりした『素浪人 - RONIN -』 の身だ。お前が御仕えしているメアリー・アーリントン大統領やラングレー(C.I.A. = アメリカ中央情報局)どもの命令で、オレ達にオカシナ事を企みに来たんだったら、そのテには乗らないからな」

 

「はぁ、相変わらずだな、そのアルマジロみたいな用心振りは?」

 

 視察団として一緒に来日した国連のアランサス総長が、その二人の会話を聞いて

 

「ウィリアム・ジェイドさんだったわね? 今の貴方の口ぶりだと、まだ奈々さんを始めとするあなた方は、国連を信頼していないみたいに聞こえるけど?」

 

 ジェイドさんを遮る様に、私はアランサス議長に伝える。

 

「その通りです、アランサス総長。私達は、世界中のどの団体にも所属していない、新エネルギーH60のサンプル実験開発集団です。この場であなた方「ユーネム」と話し合いをしているのは、このH60エネルギーを世界中に、分け隔てなく広める為を思っての事なのです。ですが、私達の独自の情報収集源によると、国連の意思決定を出来る上位の人物は、某国の財閥と深い癒着関係にあるらしいと考えています」


「それは否定出来ない事実ですね」


 「もちろん、それがごく一部の存在であったとしても、今の私達には、残念ながら『ユーネム』を含む国際連合を全面的に信頼出来る機関では無いと判断しました。これは、私の亡き祖父である『越路篤人』が所有しているH60やバイオモデムの開発と、その発明権を受け継いだ、越路博士の息子の忠人や孫の私が有する権利でもあり、主張でもあります」

 

 アランサス代表は、少しの間周囲の要人と小声で会話を交わした後、

 

「奈々さん達、貴方がたの主張は考慮します。この案件は、今後の話し合いによって結論を出しましょう」

 

「ありがとうございます、アランサス総長」

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