第41話 国連総会

 ニューヨークの国連本部で緊急会議が開かれている。 


 私はそこでホログラムを使用しながら、各国の代表にH60の新エネルギー源としての将来性や、兵器として使用された場合の危険性を説明している。


「この様に、H60の技術は、我が国一国だけで独占するには、あまりにも傲慢過ぎる行為です。そこで、国連参加各国が運営と適正に使用されているかを管理する特別機関、(UNAME =国際代替エネルギー源管理局)の設立を提案します」


「カク教授、貴方は以前からこの少女の組織と交流があったと仰っていましたが、これを事実として受け止めても宜しいのでしょうか? 正直、私には、そしてこの会議に出席されている殆どの代表の方々も戸惑いを隠せないでいると思います」


「はい、総長。私達マサチューセッツ工科大のSETIチームも、H60と遺伝子操作の技術、そして地球外知的生命体とのコンタクトを確認しています。人類の平和的存続の為にも、特別な国際的権限を持った機関の設立を早急に推進する事に賛成です」


 そこに、ドイツ首相のジンネマンが発言を要求する。


「ちょっと待って下さい。H60の技術は我が国のテロ組織、ネオナチスが完成させた物だ。我が国で起こった犯罪行為を裁く責任は、我が国にある。如何に不法とはい言え、この技術には我が国の技術や多大なる資産がつぎ込まれている以上、我が国にもこの問題に深く介入する権利がある事を主張します」


「ジンネマン首相、これは国家間の利権を越えた地球規模の問題です。現に我々の創造者を名乗る異星人が、人類の滅亡を試みたと言う証言は、重く受け止めなければなりません。こう言った事態が起こった時の為に、国連の存在があるとお考えにはなれませんか?」


「それは・・・如何に国連と言えども、我が国家の主権に対する越権行為だ! 強い抗議を表明します!」


「貴国の抗議は議事録に記録します。事は性急を要する。 UNAME機関の設立の賛否について、ここで議決を取ります。ご参加の各国代表の皆さん、お手元のボタンで意志の表示をお願いします。」


 議会の電光掲示板に投票の結果が写し出される。


「投票数は規定数に達しました。賛成多数により、これよりH60関連技術の開発続行と既存技術の行使は、UNAMEが正式に発足するまで、全てを凍結します」


 足音を荒立てて議会を去るジンネマン首相。


「アランサス総長、ここにおられる奈々さんは、自らの命を投じて迄、地球を守ろうとしたお方です。私はSETI代表として、奈々さんのUNAME機関の最重要メンバーに推薦します」


「そうですね。それに奈々さんと一緒に闘った仲間の方々も。そしてカク教授、貴方もエネルギー生命体の存在を早くから予言なさっていた。その先見の明を是非とも私達の将来に役立てて下さいませんか?」


「勿論、MITとSETIの総力を結集して、御協力致します」


「アランサス総長、そしてカク教授。私は異星人キュリアンから、こう言われました。[この地球『ガイア』と言う名の生命体の主なる運営を、もう少しの間だけ君達に託す。お互いを思い、助け合う精神を大切にしたまえ]と。この星に住む全ての生命の為に、この私の力を役立てたい。それが私の願いの全てです」



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