第24話 バイオモデム


 

「水爆並みって!? もしそれが地上で使われたら?」

 

「その心配は今の所ありません。ゲッヘラーの基地は関東にもあります。ですがその全てが最高レベルの耐震構造になっているのです」

 

「それって、どういう事?」


「ゲッヘラーは、その超破壊力を持った小型爆弾を日本海溝深くの断層で起爆させて、関東ローム層に直下型の大地震を誘発し、首都圏に自然大災害が起こった様に見せかけて、その混乱に乗じて政治の主導権を握ろうと目論む、『グランドスラム』計画を進めているんです。一般庶民から見れば、関東直下型大震災が起こった後に、あたかもゲッヘラーが日本への災害救助や復興計画を準備していたかの様に、マスコミやネットを通じて思わせるやり方の方が、日本の政権や世論を操り易い」


「なんて奴! 絶対に阻止しなきゃ!」


「ああ、そうだな、キラ。今ならまだ間に合うかも知れん」


「私はゲッヘラーのそんな非道なやり方に絶望し、博士のお孫さんである奈々さんにすべてを託す事にしたんです」


「えっ!? 私に? でも、私に何が出来ると言うの?」


「奈々さん、あなたももうお気付きの筈でしょう? あなたはDNA改造で最強の身体を手に入れ、しかも人間らしい優しさも遇わせ持っている。ゲッヘラー達の野望を砕けるのは、人類の希望である奈々さんだけなんですよ!」


「でも、私、時々自分が自分でなくなる様な気がして・・・。 怖い!」


「奈々さんの心理データは、常に僕がこの特製タブレットでモニターしています。

何かあったらサポートします、約束します! 


 ジェイドさん、キラさん。敵は手強い相手です。地下に試作のメカが隠してありますので、それでゲッヘラーの本部に乗り込みましょう!」


「へぇ~。武器を沢山持ってるオトコって、ス・テ・キ!!」

 

 キラを横目使いで見るジェイド。


「何よ! 妬かない、妬かない!」


「誰がっ!!」


「今度は連中を出し抜くチャンスよ。ブッ潰してやろうじゃん、そんな計画! 腕が鳴るわぁ~っ! 奈々、アンタも手伝って、ホラ!!」


 キラは私に、我問の研究室の武器庫に陳列してあった試作アサルトライフルを放り投げるが、それの使い方も分からずにキョトンとしていると、我問さんが、

 

「奈々さんには、別の役目を引き受けてもらいたい。さあ、庭のシェルターへ行きましょう」


 4人が正面玄関のドアを開けると、我問研究所の上空に偵察ドローンがホバリングしているのに気が付く。


「しまった! 何故ここが!?」


 偵察ドローンとネットリンクした本部のゲッヘラーの声。


「我問よ。バイオモデムを起動させたのが誤りだったな。GPS情報を発信する事を忘れていたのか?」

 

「 ゲッヘラー!  クッ、私とした事が・・・」

 

「博士のバイオモデムと奈々さえ渡せば見逃してやる。今すぐ奈々を連れてこい!」

 

 その様子を見ていたキラが、


「待って。あれはただの小型無人偵察機だから、大した武器弾薬も積んでいない筈。信号が傍受されてから、まだそんなに経っていないし、武装した応援部隊の到着には時間がかかる筈よ。みんな! 地下施設に行きましょう!! 我問、皆を誘導して!」


「よしっ! 善は急げだ!!」

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