第22話 脱出

 キラが叫ぶ!

 

「どうすればいいのよ!?」


「こ、これを・・・」


 我問が左腕に負った傷を押さえながら、もう一つのショルダーバッグを開け、百四年式カービンのアッセンブリーを取出し、ロングバレルとフレーム、ショルダーストック、ドラムマガジンを組み立ててキラに渡す。

 

「キラさん、こ・・・、これを使って下さい。 この百四年式カービンには、3点射撃バーストモードが付いてます・・・。リアクティブアーマーが有効なのは最初の一発目だけ・・・、同じ所に続けて当たる弾丸には弱いので、そこを狙えば・・・」


「3点射撃バーストモード・・・? あ、このレバーね!」


 キラは百四年式のグリップに付いた ” 三 ” の文字のレバーを操作する。

 

「前傾姿勢でしっかりと構えて下さい! コンペンセイター(反動制御装置)は付いていますが、それでもマズル・ジャンプを押さえないと、3発とも同じ所には当たらない!」

  

「あのねぇ、我問? そーゆーのを " 釈迦に説法 " って言うのよ! これでぇっ・・・、どうよっ!!」


 キラが百四年式カービンのトリガーを引くと、


「ドドドンッ、」


 と、3発の銃弾が続けざまに発射される。


 キラの放った最初の弾丸はグランドマトンの胸部に当たるが、レーザー着弾センサーが作動して着弾寸前に装甲が火を噴き、弾丸ごと吹き飛ばす。


 だが、すぐに二発目の弾丸が、ほぼ同じ場所に着弾し、装甲に大きな穴を開けると共に、最後の三発目の弾丸が無防備になった装甲を貫通し、グランドマトンの機関中枢を破壊した。

 

「スゴォッ! 本当に倒しちゃった!!」


「キラ、この先にトンネルがあるぞ! 入り口でロボットを足止め出来ないか?」

 

 ジェイドの情報を即座に理解したキラは、


「了解! さあさあ、どんどんかかっておいでっ!!」


 高速道路のトンネルの入り口に差し掛かると、隊列を組んだグランドマトンに次々に3バーストをお見舞いするキラ。

 

 トンネルの入り口に倒れ込んだ数体のグランドマトンが、後続の追っ手を塞ぐ形で遮る。


「ナイス!! 良くやった、キラ!!」


「まあ、こんなモンかな?」


「コイツはオマケだ!」


 ジェイドがリムジンのコンソールボタンを押すと、発煙弾が次々と転がり出て、リムジンの車影をカモフラージュする。

 

「さらにだ、念には念をと・・・」

 

 ジェイドがリムジンのコンソールを操作すると、リムジンの後部が変形してステーションワゴンになり、ボディカラーも変わって、ナンバープレートも別の物になる。


「これでNシステムと監視衛星にも追跡されない。どうだ? 元我が軍の特殊諜報車両は?」

 

「アンタも意外と役に立つわね」

 

「意外だけ余計だ!!」

 

そこに、ある事に気が付いた我問さんが、 

 

「奈々さん、スマホの電源を切って下さい。ヤツらはそれであなたの居場所を・・・」


「えっ? あ、はい、分かりました」


 スマホの電源を切る私。ひとまず追っ手を振り払った事を確認し、車内に戻って我問の傷を手当するキラが、G.S.W.(Gun Shot Wound = 銃創による負傷)状態を判断している。


「幸い弾丸は貫通しているし、動脈も無事の様ね。 取り敢えず出血は止まっているけど、傷口を消毒して縫合しないと。ジェイド、この近くに病院は?」

 

 それを聞いた我問さんは、

 

「病院は・・・ダメです。この首都圏中の建物のカメラモニターはヤツラの組織にハッキングされているので、顔認識システムで居所がばれてしまう。ジェイドさん、常磐道から外環を抜けて、埼玉にある私の秘密研究室へ向かって下さい」


「了解!!」

 

 私は、車窓から後を振り返りながら・・・、


「坂井君・・・、ター坊、ボスカー達。 お願い、無事でいて・・・」

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