第12話 戯れ合い

 まあ、本筋と直接はカンケー無いけど、あの日本庭園では、キラとジェイドの『運命の果たし合い』が始まったみたい。


 キラと正面から向かい合うジェイド。


「お前、いつ制御装置の事を!?」


「何故、このわたしが、わざわざここに掴まったと思う?」


「そう言う事だったのかっ!?」


「アナタもヤキが回った物ね、ジェイド?」


「ク・・・キラ、いつからそんなに生意気になった?」


「アナタのお陰よ」


「何!?」


「いくら鍛え上げたって、アナタは所詮生身の身体。 私達改造種は超えられないわよ」


「フン、それならそれを・・・、 証明して見せるんだなっ!!」


 キラとジェイドの激しいナイフ・ファイトが始まる。ジェイドのM9バヨネットとキラのマークⅡが火花を散らす。ジェイドの迷彩服を切り裂くキラ。キラの革ツナギを切り裂くジェイド。だが、次第にジェイドのナイフに追いつめられて行くキラ。


「いいザマだな、キラ。 肌が丸見えだぞ?」


「アタシを脱がせたかったら、ちゃんと口説きなさいよねッ!!」


 ジェイドの喉元を狙って反撃するキラと、ナイフを持った反対の左手でその攻撃を払いのけ、応戦するジェイド。


「その気があったらなっ!!」


「何よ、強がって! ミエミエなんだからっ!!」


「何がだっ!?」


「本当は私に・・・、この私に惚れてるクセにっ!」


 ジェイドは、まるで本音を見透かされた様な表情をして、一瞬たじろぐ。


「・・ば、馬鹿を言えっ!!」


「隙ありっ!!」


「うぬっ! まだまだっ!!」

 

 このヘンなコミニュケーションは、私の理解を超えた世界ではあるんだけどさ・・・。いわゆる「格闘家」って種族は、男女の区別無く、『自分が世界のナンバー・ワン』ってプライドを欲しがる傾向を持っているのは確かみたいね。


 私は走る。

 

 松羽目が仕掛けたと言うミサイルの制御装置を追って、地下施設の廊を・・・。すぐ目の前を走る松羽目は、さらに地下に通じるシェルターの圧力隔壁を閉じようとしている。


「待ちなさい!」


 だが、不意に廊下の死角から、紫色のタクティカル・ベストとスーツで武装した二人の近衛兵が現れ、私の腕を両側から掴む。


「離してよっ!!」

 

 圧力隔壁を閉じるボタンを押しながら、松羽目がほくそ笑む。


「フフフフっ」


 私が身動きが出来ない様を、冷酷な目で見つめる松羽目。その冷酷さにシンクロする様に、ワタシが覚醒し、目の色がオレンジ色に変わった!


「でいっ!!」


 ワタシは、両腕を掴まれたまま逆上がりする様に下半身を上に蹴り上げると、

もの凄いスピードで両足を180度急回転させて二人の近衛兵の首をへし折る。そして、まさに閉じようとしている圧力隔壁に、寸差で転がり込む。


 だが、そこにはさらに近衛兵が待ち構えていた。新型のAR-57アサルトカービンを構え、レーザービームを照射して攻撃して来る近衛兵。ワタシはレーザービームの動きを読みながら、超音速のFN5×7mm小口径高速弾の被弾を避け、一番近くに居た近衛兵の懐に潜り込むと、みぞおちに強烈なエルボーアタックを浴びせる。


 だが、分厚い防弾ベストを着た近衛兵はびくともしない。ワタシの首根っこを鷲掴みにして、まるで赤子を扱うかの様に壁に叩き付ける近衛兵。ワタシは反射的に身体を反転させて壁を蹴り、ふたたび近衛兵に向かってジャンプすると、近衛兵のレッグ・ホルスターからH&K MK23 SOCOMを奪い取り、床で前転しながら仰向けのまま近衛兵の両足首を撃ち抜く。バランスを失って倒れる近衛兵。

 

 ワタシは、その近衛兵の額をヘルメットごと撃ち抜こうとする。だが、その有様を傍観していた本当の私は、もう一人のワタシの残虐ぶりに耐えかねて叫ぶ!


 「ダメ! 殺してはダメっ!!」


 ワタシが一瞬ひるんだ隙に、近衛兵は、腰のハーネスから戦闘用ナイフを抜き、ワタシに襲いかかろうとする。


 「ドンッ!」


 冷たい目の色で、近衛兵の眉間にとどめを刺すワタシ。


 冷徹なワタシの表情と、私の感情がクロスオーバーする。


 「いやぁっ!!」

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