第10話 セブンス・ガール

「てェッ!!」


 ワタシは、祖父の背に刺さったタントーナイフを瞬時に抜き、一番近くにいた男の頸動脈を切り裂くと、その男のレッグ・ホルスターからH&K USP .40S&W を抜き、周囲の男達に発砲する。


「ドンッ! ドンッ。 ドン、ドンドン!!」


 防弾ベストを着た敵はH&K USPの.40S&W弾丸を物ともせず、H&K MP5Jの9mmパラベラム弾で反撃して来る。


「ババン! バババン! バババン!!」


 ワタシは、死亡して防弾ベストを着た男の防弾ヘルメットを盾にしながら左腕で抱え込み、自分の頭部を保護しながら、右手と右目だけでH&K USPを構えて照準し、


「ドドン! ドドン! ドン! ドン!」


と、 ダブルタップで男達の頭部を狙い、全員をなぎ倒す。


 するとフスマの向こうからまた数人の兵隊達が現れ、ワタシに向かって、H&K MP7A1で発砲して来る。


「ダララララッ! ダララッ! ダララッ!」


 H&K MP7A1の対ボディアーマー仕様4.6mm X 30弾丸はワタシが盾にしていた死体のクラス3防弾チョッキをも貫通するけど、ワタシは瞬時に床に身を伏せ、USPのスペアマガジンを死体から奪うとマガジンチェンジして左右に横転しながら、敵の防弾服の弱点に狙いをつけて反撃する。


「チャキッ! ドドンッ! ドンッ! ドンッ! ドドンッ!」


 ワタシの照準は確実に敵の急所に命中し、敵は全滅する。


 それを見透かしたかの様に、大袈裟に拍手する松羽目。

 

「見事だよ、奈々。 それでこそ我らがナンバー・セブンだ」


 その言葉を聞いて、ふと我に返る私。

 

「ナンバー・セブン??」


 コスプレだか大真面目なのかは知らないけど、身なりからして明らかに『イッチャッてるおっさん』、松羽目が、自慢げに自らのプロジェクトの解説を始める。


「そうだったな、博士はお前の記憶を消したとか・・・。だが、忘れたとは言わせないぞ。お前がこれまで行って来た、暗殺の数々を」


「ウッ!!」


 一瞬、私はめまいを覚え、脳裏に幼い姿のワタシが、要人を暗殺している記憶がフラッシュバックする。


「私は・・・、私は一体・・・!?」


 松羽目が言う。


「そうだよ、奈々。お前は我が組織きっての腕前なのだ。それまで実験台となった6人のデータを元に、最も優れたDNA組織を合成してインプラントしたのが、ナンバー・セブンであるお前なのだ。思い出したかね?」


「そ、そんな事って??」


「さあ、もう良いだろう。見たまえ」


 近くの大画面テレビのスイッチを入れる松羽目。そこには、大混乱の都内の様子がアナウンサーの実況と共に映し出されている。


「本日明朝に起こった地下鉄テロを発端として、都内の交通網は大混乱の様子を呈しています。混乱は交通だけでなく、電話回線やスマホ等のネット接続にも支障を来しており、機能が停止したATMやコンビニを狙って暴徒が暴れているとの情報もあるとの事から、『各務 努』東京都知事は自衛隊の出動を要請、夜間外出禁止令の発令を検討している模様です。みなさんは極力外出を控え・・・」


 松羽目が得意げに言う。


「どうだね? これこそが革命の始まりだよ。少子高齢化社会で若い労働力を失い、老人や社会的弱者への国民年金や生活保護費を食い物にされている我が国が、

未来に生き残る唯一の方法。それは絶対的な権力を持つ軍事国家の再建なのだ。

この国家とって、本当に必要な人材だけが栄え、役立たずの老人や貧乏人には自滅してもらう。そして我々の遺伝子操作を受けた優秀な種だけが、その未来を約束される。君にはその先頭にたってもらわねばね、奈々」


 ナニ言ってんの、このヒト? それって、『社会的弱者の切り捨て』って言う、最も非人道的な行為じゃん!

 

 世界史の授業で聞いた様な、ドイツのチョビひげ七参分けオヤジの演説、もはや旧石器時代みたいなセリフに呆れ返った私は、


「そんな、そんなのヒドイ! 私は嫌ッ!!」


 松羽目は笑いながら、


「カワイコぶりっこもいい加減にしたまえ。君自身見たろう? もう一人の君に存在する、あの凶暴な本性を?」

 

「それは・・・、あなたがおじいちゃんを・・・」


 う~ん、あの行動だけは、まだ自分でも理解出来ないでいると、松羽目は自前の哲学を展開し続ける。


「何が違うと言うんだ? ヒトは自らの存在を守る為になら、平気で同族を殺せる『亜種なる生物』なのだよ。それの何が悪い?」

 

 若干一理ある様に聞こえるけどさ、「それって『ヒト』としてどうなのよ?」って、私が思った瞬間!

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