シナリオブレイク

 しろかべ教会きょうかい

 ほしのまたたく夜空よぞら背景はいけいにその結婚式けっこんしきはとりおこなわれた。

「きれいだよ、ソフィア」

「……ええ、ありがとう」

 神父しんぷ言葉ことばをよそに花婿はなむこ花嫁はなよめはそんな会話かいわわしていた。

「あ、そうだ。このしきわったらきみきなうみこう。そこでわたしたいものがあるんだ」

「ええ、たのしみにしてる」

「……ソフィア、ねつでもある?」

「え? いいえ、ないけど」

「そう?」

 そこでヴェレーノが「ちかいます」とった。つぎはソフィアのばんである。

なんじ、ソフィア」

「はい」


「……二丁拳銃にちょうけんじゅうぶっぱなしてステンドグラスにあなける神父しんぷはおきらいですか?」


「え?」

 ふと気付きづけばそんなふざけたことをぬかしながら、二丁拳銃にちょうけんじゅう両手りょうてち、ニヤニヤしている神父しんぷまえにいた。

 あきらかにこいつだけ様子ようすちがう。ヴェレーノがさきいた。

衛兵えいへい!!」

 かれさけぶやいなや、神父しんぷ両手りょうてまえして教会きょうかいのありとあらゆるステンドグラスをぶっこわはじめた。

 それを合図あいず教会きょうかいとびらがドンドンはじめる。直後ちょくごとびらをぶちやぶってなだれんできたのは大砲たいほうすドンク、ディーディーと野生動物達やせいどうぶつたちれ。

「おらおら、くろコゲになるまえにどくッスよー!」

火薬かやくましまし」


 突然とつぜん展開てんかいにすぐにそのはパニックのうずまれた。


「ドンク!? ディーディー!?」

あとおれだよ、ソフ」

 そうかたにあごをせながらったのは神父しんぷ――のふりをしたレイ。

「え!? ちょ、本物ほんもの神父しんぷはどうしたのよ!」

衣装いしょうをご提供ていきょうくださいましたので、おれいにふんじばっておきました!」

「それ、犯罪はんざいよぉー!」

 ソフィアがそうさけぶのと同時どうじにレイはまえからんできたをナイフですべはらとし、彼女かのじょうでき、教会内きょうかいないはじめた。

 肝心かんじん衛兵えいへいはといえば野生動物達やせいどうぶつたちにまたされて苦戦くせんいられている。そこからなんとかのがれた衛兵えいへいもいたが、レイと子分こぶん二人ふたりまえではたなかった。

 そうこうしているうちに正面扉しょうめんとびらうえのテラスのガラスがバンバンおとはじめる。まただれかがとびらやぶろうとしているのだ。

「な、なに? なんなのよ一体いったい!」

「おたのしみが、あるんだよ」

「おたのしみって……説明せつめいになってな」

「ほうら。そろそろるぞ!」

 その瞬間しゅんかん、ガラスをぶちやぶってんできたのはジャックとリオだった。


「ソフィー!」

「……! ジャン!!」


 ここで女王じょおう気付きづく。

全兵士ぜんへいしはやくここへ!! はやく!! ぞくめ、こりずにひめをさらうだ! いそぎなさい!」

「おお、女王じょおうよ……どうしよう……可愛かわいいソフィアが」

「あなたもすこしは指揮しきをなさい! 王様おうさまでしょうが!!」

「ヒェッ! はい!」

まったく……おれいなんてするんじゃなかった!」

 こうしているうちにも衛兵達えいへいたちはどんどんあつまり、野生動物やせいどうぶつれのいきおいだけではせなくなってきた。

「どうしよう、おいさん! あのなかくのは危険きけんだよ!」

「かまうな、このままる! あのシャンデリアにロープをっかけるんだ、はやく!」

「わ、かった!」

 ロープがくくりつけられたてつぼうがパチンコから発射はっしゃされ、見事みごとシャンデリアのくさり部分ぶぶんく。

「レイ! よろしくたのむ!」

相変あいかわらず人使ひとづかいのあらやつだ! アイツは!」

「きゃっ! ちょ! レイレイ!」

 ジャックがさけんだのを合図あいずにレイが花嫁はなよめきかかえた。

 いよいよ時間じかんだ。

 ヴェレーノがそれをさとってけんをついにく。

ひめわたすものか!」

 それにレイが気付きづ身構みがまえるが、ジャックが出発しゅっぱつはじめ、しかもソフィアをきかかえているいま相対あいたいすることができない。

 やいばがレイのくびめがけてすっんできた。


 ――その瞬間しゅんかんだった。王子おうじにとって想定外そうていがいきゃくたのは。


 大量たいりょうげナイフが次々つぎつぎ衛兵達えいへいたちおそいかかり、地面じめんかべかれらを次々つぎつぎはりつけていく。最後さいごのナイフは王子おうじのマントにさり、それをげたおとこまどから教会きょうかいんできた。

 くろマントに仮面かめん。いつだかたことのあるような格好かっこうだ。

 そのおとこはマントが固定こていされてうごきづらい王子おうじにナイフだけでいどみかかり、最後さいごにはそのけんをなぎはらう。

「おまえ何者なにものだ!」

「……アンタの花嫁はなよめにちょっとしたごおんいただいたものだ」

なに?」

「だからわたし彼女かのじょたすけるとちかった」

 瞬間しゅんかん、ナイフをのどもとけ、フィニッシュをめた。

 そうして仮面かめんうえにずらし、左腕ひだりうでせつけながらかれ王子おうじった。


呪縛じゅばくかれた。もうお前達まえたちにはしたがわない」

「フィリップ……!」


「ソフィー!」

「ジャン!!」

 テラスをり、えがきながらレイのもとへといきおいよくやってきたジャックにソフィアが大声おおごえこたえた。

「ほぅら、れ! おまえ花嫁はなよめだ!!」

 その瞬間しゅんかんレイがげたソフィアがジャックのうでなかにちょうどよくおさまる。そのまま二人ふたりゆかち、ジャックにきかかえられたままティアラごとそと暗闇くらやみへとえていった。

衛兵えいへい、クライシスへい! はやく!! っていかれる!!」

 女王じょおう絶叫ぜっきょうとも続々ぞくぞくあらわれた増援ぞうえんてレイとフィリップが視線しせんわし、うなずきう。

 フィリップはふところからさらにおおくのナイフをし、レイはおおきな彫刻ちょうこくなかかくしておいたガトリングガンをかまえた。

「ははーっ! ガトリングおじさん参上さんじょうー!」

「ちょ、おい、いつのにそんなデカい荷物にもつんだんだ! かこまれたらどうする!」

らないの? おいさん最強さいきょうなんだぜ?」

「……たすけないぞ」

いよ、二人ふたり十分じゅうぶんだ」

 いつの仲良なかよくなったのか、ケンカしながらそのままとも臨戦りんせん態勢たいせいはいり、ならんで兵士へいしなかんでいった。


 やがてぐち周辺しゅうへんでルイが「ジャックとソフィアが無事ぶじふねなかはいった」ことをつたえる信号しんごうをぐるぐるまわし、教会内きょうかいない仲間なかまつたえる。

 それをかれらは突然とつぜん退却たいきゃくはじめた。

え! いなさい!!」

 フィリップとレイのせいでほとんどがうしなってしまった兵士達へいしたち残党達ざんとうたち必死ひっしいかける。

 そこに退却たいきゃくする仲間なかまわるようにてきたのがさきほどのでっかい大砲たいほうである。兵士達へいしたち一気いっきにひるんだ。

 特製とくせい砲弾ほうだんめ、ドンク、ディーディー、ルイの三人さんにんはニヤニヤわらいだす。

最後さいごのおみやげッス!」

「はい、みなさんご一緒いっしょに。せーの」


「「「火薬かやくましましー!!」」」


 ズドーン!!

 物凄ものすご爆発音ばくはつおんひびかせ、おもたい砲弾ほうだんが――すことはなく、教会内きょうかいない花火はなびがバンとはないた。

 やがてひらひらとなにかのかみはなびらのように大量たいりょうってる。

 それをひろい、内容ないようたヴェレーノがゲ! とかお一気いっきあおざめさせた。


「……どういうことですか? ヴェレーノ」

「あ、いや、これは……」


 っていたのはクライシス王国おうこくてていたソフィア誘拐ゆうかい計画けいかくすべてがかれた機密書類きみつしょるいであった。


 気付きづけば結婚式けっこんしきらした海賊かいぞくどもは一人ひとりのこらずえていた。

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