このかなしみを

 このかなしみをどう表現しようか

 床にうずくまっていても どうしようもないのだ

 どうしようもないかなしみが やってきたのだ


 あるとき突然 死はやってくる

 少しずつ近づいてくるのだけれど

 おとずれはいつも急だ


 いつか来る未来におびえて

 息をひそめて でも

 声をかけたら つかまれる


 クッションに顔をうずめていても

 なにも変わらないのだ

 変わらぬ事実が 心を苦しめ続ける


 もうほっちゃんはいないのだ

 さあ迎えに来ましたよと 天使が

 つれ去ってしまった


 あんまりだ! ほっちゃんにお別れを言ってない

 悦びをありがとうと 言い出す前にいってしまった

 なんてあわただしいのだ 神様って


 それとも 家族はもう覚悟していたのだろうか

 手は施しました あとは本人の生きる力しだい

 そう医師につたえられたのだろうか


 あきらめる

 私はほっちゃんの命をあきらめる

 そうする以外にないから


 窓際に立つと 私の猫がいかにもさりげなくたたずんでいる

 なにもかもを知っているような 知らないような顔で

 そして私の顔をなめるのだ


 このかなしみを ほっちゃんのせいにはすまい

 このかなしみを 誰かに押しつけることはすまい

 このかなしみを 抱き続けてはなすまい


 そしていつか 同じ人に出逢ったら

 そのとき考えよう

 さようなら ほっちゃん


 笑顔をくれて ありがとうね

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Kwaiiほっちゃん 水木レナ @rena-rena

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