タイムトラベラー

 博士はタイムマシンを発明した。特に理由も無く、好奇心と興味本意で作った物だったので大々的には公表しなかった。そろそろ邪魔にもなるから捨てようと思っていた矢先、研究所の戸が開いた。

「おう。暇だから来たわ」

馴れ馴れしく話しかけるこの男が、博士は大嫌いだった。この男とは元々腐れ縁のような物だったし、最近は博士に金をたかってくるので博士も迷惑をしていたのだ。そこで博士は、男をどうにかする良い方法を思いつき、タイムマシンを話の引き合いに出した。

「ところで。私は最近タイムマシンを作ったのだが、乗ってみるかい?」

限られた人々しか乗れないタイムマシンに乗れるという上手い話に、男はすぐのってきた。

「え、良いの?でも危なくね?」

「安心しろ。私が指示をだしてやる」

「金とか請求しない?」

「それどころか、もし世紀の大発見のような発見をすれば、一瞬で大金持ちになれるぞ」

男は金の欲に説得され、タイムマシンに乗ることとした。特に専門的な技術は必要としないため、男も難なくタイムスリップすることが出来た。


男とタイムマシンの姿は消え、博士は男視点のモニターを用意する。

「おい、ここはどこだ」

雑音混じりに男の声が聞こえる。博士がモニターを見ると恐ろしい恐竜や、異様なまでに大きい草木が生えていた。

「そこは白亜紀だ。1歩間違えると死ぬぞ。よく聞け」

男が次第に荒い息になっている事に気付いた。博士は気にせず指示を出す。

「そこのヤシの木みたいな木があるだろう?その葉を1枚ちぎるんだ。しゃがみながらだぞ。後はずっとバレないようにその草木の中で隠れてくれ」

そう言うと、指示通りに動く様子がモニターで映った。しかし博士はその場ですぐに通信を切り、男のいた座標を確認する。予定通りそこは博士の私有地の山だった。丁度断層になっている。博士は、そこに向かい、一番下の層を堀り続けた。するとそこからは人間の骨がごろりと出てくる。博士はそれを持ち、こう呟いた。

「こんな昔からヒトの祖先はいただなんて。まさに『世紀の大発見』だな」

博士は論文を書きに研究所に戻って行った。


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