何でも代行ロボット

 人間そっくりなロボットを作った。人間と同じ物を食べて栄養を取り、人間のように思考し判断することが出来る。外見だけじゃとてもロボットだと思わないだろう。まさに私の叡智の結晶と言える発明品だ。


 しかし、私がこんな発明品を作る度によく目にするのは、「実用性がない」や「ロボットが人類を支配する」などと言う愚か者達だ。もしこの世を支配出来るロボットを作れていたら、とっくの前に私がこの世を支配しているだろうし、この世はそんなに歪んで出来ていない。もっとも、それが出来たとしても私のような開発者には太刀打ち出来ない。


 それはさておき、私はこのロボットを使い「何でも代行ロボット」として売り込む事とした。姿形を似せれば、どんな事でも代行出来る。忙しい現代人にぴったりな話だ。一体だけのロボットなので、使用者は一人だけだが、それでも充分だ。今はある一人暮らしの男性が使用している。彼は会社員で、最初の使用法は「会社の仕事」だった。そこから彼はずっと仕事をこのロボットに任せきりにしているらしい。しかも彼は『家事』を『仕事』と称し、家事までロボットに任せている。ロボットは忙しなく動いているが、その為毎月継続的にお金が入ってくるのだ。この時点でかなり実用的と言えるだろう。そういえば、もう男にロボットを渡し一年が経つ。そろそろ頃合いだろう。私は思い立った。


 私は男の家を訪ねる。家のなかは、まるで男が二人居るようで、私は言い様のない不気味さを味わった。男はロボットが何でもやってくれるのだから、大分満たされているように感じた。私に感謝している様から見て間違いないだろう。そこで私は一つお願いをする。

「明日の夜。私の研究所に来てくれないかね。少し話したい事があるのだ、大した事ではない。…ああ、大丈夫。私の作ったロボットだ。余程の事が無い限り壊れない」


 そして、後日。男は素直に私の研究所を訪ねに来た。そして研究所の一室に連れ込み、酒を交わして夜を過ごした。話は大分盛り上がり、男は話し疲れたのか眠ってしまった。それを見計らい、私は麻酔注射を男に打った。


 私の発明品は毎度素晴らしい物ばかりだ。十二回分の使用料を払わせた後、臓器を売ってさらに大儲け出来る。肝臓が少し悪くなるが、何て実用的なのだろう。さて、一体いつ、誰が男が居ない事と、そして男が本当の男じゃない事に気付けるだろうか。今私は、二体目のロボット製作に手を着けている。

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