最後のスイッチ!

 あと25秒。俺はスタチューモードのGツインズの胸を揉みはじめた。

 これは、俺にしかできないことなんだから。

 真壁に言われて目が覚めた。俺は、もむしかないんだ!


「よしっ!」と、俺は必死になってGツインズの胸をもんだ。


「もめ。もむんだ、秋山!」

「諦めるな。諦めたらそこで寮旗争奪戦は終了だ!」

 ありがたいことに、真壁とすばるの声援が聞こえる。


 だけど、どうしても調子が狂う。だって、石像はあまりにも硬いから。

 なまじ一瞬でもGツインズの胸のやわらかさを知ってしまった俺。

 石像の胸の硬さに違和感を覚えてしまう。だから、上手くもめない。


 自信がなくなってしまう。俺は上手にできるのだろうか。

 Gツインズをエクストリームヴィーナスモードに移行させられるんだろうか。

 もうかれこれ10秒近くもんでいるのに、何の変化もない。


 それにしても俺って、こんなに胸をもむのが下手クソだったのか。

 振り返れば、カノジョいない歴イコール年齢の俺……。

 まともに胸をもんだことなんて、今までに1度もない。


 こんなことなら姉と妹が胸をもみ合ってるとき、参戦していればよかった。

 2人はいつも喧嘩の果てに胸のもみ合いをしていた。


 終いには必ず母さんが出てきて、2人を蹂躙していた。そして、言ってた。

 「ただもむだけじゃダメ。もっとスケベ感を丸出しにしないと!」と。

 それには姉も妹も尻尾を巻いて逃げ出していたな。母さん、さすがだ。


 そうだ! 俺にはスケベ感が足りないんだ。もっとスケベにならないと。

 母さんが言っていた。「スケベは手つきだけじゃないわ」と。そして……。

 「触覚だけでなく『もみもみ、ぐへへっ』と言って聴覚にも訴えるのよ」と。


 これだ! 俺がするべきなのは『もみもみ、ぐへへっ』だ!

 そうやって欲望のままにつぶやいて、2人を蹂躙するんだ!

 あと15秒となって、俺は堂々とつぶやいた。


「もみもみ、ぐへへっ。もみもみ、ぐへへっ……」

 兎に角、俺はつぶやき続けた。そして、もみ続けた。

 全ては、寮旗争奪戦に勝利するために。


「ダ……ダメだ。秋山、頭がおかしくなって。こうなったら……」

「ひかるっちが行くなら、私も行く!」

「しかたありません……」 「……ありません……」 「……せん」


 5人はもう、俺に期待していない。痛めた足を引き摺り匍匐前進しはじめる。

 それも止むなし。ここまでエロくスケベに振る舞う俺なんか、見捨てて当然。

 だけど、俺には迷いがない。恥ずかしいだなんて、思わない。


 それどころか、俺の中でGカップへの想いが加速する!

 あと12秒を切っても、ひたすらにGカップをもんだ。


「もみもみ、ぐへへっ。もみもみ、ぐへへっ……」

 つぶやく度に、俺の神経は研ぎ澄まされていく。

 とことんエロく、極限までスケベであり、それでいて無心に。


「もみもみ、ぐへへっ。もみもみ、ぐへへっ……」

 そっと目を閉じる。Gツインズのおっぱいの感触をイメージする。

 不可抗力とはいえ、はじめて味わったあの感触、忘れてはいない!


 なんて大きいんだ! なんてやわらかいんだ! ちょっと汗ばんでる!

 そう思ったあの経験は幻ではない。現実だ! 現実のおっぱいの感触だ!

 触れたことのない者が想像するよりも、現実は3割エロい!


 俺の両手から溢れ落ちる、ぱっと見で大きいと分かるおっぱい。

 俺を無下に弾き返さんとする、やわらかくも弾力あるおっぱい。

 俺にそのぬくもりを伝える、ちょっと汗ばんだ感じのおっぱい。


 その全てが、忠実に、俺の脳内で甦る。究極にして至高のおっぱいだ。

 何人の侵入も許さず、何人も恐れず、何人をも平伏させるおっぱい。

 俺は、それらを堂々と蹂躙せしめた!


 残り、11秒。俺の手はたしかに感じた。

 なんて大きいんだ! なんてやわらかいんだ! ちょっと汗ばんでる!

 さっき感じたそのままの感触を、石像と化したはずの2人から感じた。


 そのとき、俺には聴こえた。


「純様、参りますわよ。その両手でしっかりもんでいてくださいね」

 はい? 石像がしゃべった? 違う、千秋だ! 涼やかな声。

 安心しろ。言われずとも手を離したりはしない。むしろ力を込める!


「お待たせいたしました。着きましたわ、純様!」

 今度は千春。自信に満ち溢れた声。着いたって、何を言ってるんだ? 

 遅れて突風が、ものすごい勢いで通り過ぎる。車窓でもこれほどじゃない。


 俺は、そっと目を開ける。目の前に、最後のスイッチがある。

 ど、どういうことだ? 一体、何があったんだ? あと10秒!

 一部始終を目撃していた真壁とすばるが証言。


「な、なんと凄まじい速さなんだ……」

「2秒だなんて、とんでもない。一瞬じゃないか……」

 は? 意味がわからない。分からないけど、スイッチを押せるのは事実。


「さぁ、純様。今直ぐにスイッチを押してください」

「あと10秒を切っています。早く!」

 そうだ。俺は、終わらせなければならない。


 長くて辛い戦いに終止符を打つかのように、寮旗争奪戦を終える。

 それができるのが俺だけなのは間違いない!

 俺には今、やるべきことがある! だから、心の底から叫んだ!


「イヤだーっ。スイッチなんか押したくなーいっ!」

________________________

 純くん、何を言い出したんでしょう!


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 これからも応援よろしくお願いいたします。

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