美少女な男?反則です!(宮小路院千春視点)

 私は千春。宮小路院家の双子の妹の方。

 ちょっとした有名人でございますの。誰もがうらやむ美貌の持ち主ですから!

 男も女も、私の美貌にひれ伏さない者など皆無ですわ。おーっほっほっほっ!


 うっ、うんっ! でもそれは、実姉の千秋を除いてのこと。忌々しい千秋。

 目の上のタンコブの千秋。いつかは出し抜こうと、機会を待っていました。

 そして訪れたのが、片高への入学の機会でした。


 片高で首席プリンシパルになれば、何でも願いが叶うという。

 千秋を跪かせることなど、容易いこととなりますわ。

 楽しみですわ! わくわくしますわ! おーっほっほっほっ!


 うっ、うんっ! 私は、分家の娘をメイドに仕立て、片高を受験しました。

 結果は当然、合格。不合格の『不』の字も出ませんでしたわ。

 容易いことですわ。楽勝ですわ! おーっほっほっほっ!


 うっ、うんっ! おそらくはメイド達も合格することでしょう!

 合格したら即、入寮。私は拉致られました。部屋ごとですわよ、部屋ごと!

 でも、移動は快適でしたわ。だから私はつい居眠りをしてしまいましたの。


 そして目覚めたとき、物音を聞いて部屋の外に出ましたの。

 正面には美少女がいました。驚きでした。

 ちょっとガサツなところがあるけど、端麗な顔立ちです。


 なるほど、片高のレベルの高さがうかがい知れます。

 どうやら、うかうかしてはいられないようです。


 そう思っていましたら、美少女が「宮小路院千春!」と、声をあげました。

 初対面の私を呼び捨てにするだなんて、許せません!

 カレシでもないのにそのようなことは、させません!


 でも、どうやらこの目の前の美少女、私にビビってるようです。

 だから私は揶揄い半分に、言ってやったのですわ!


「チッチッチッ! いきなり人を呼び捨てにするなんて、いけない子ね」

「ご、ごめんなさい。う、噂通りルームメイトにそっくりで、つ、つい……」


 思った通り、ビビってますの。

 ですが、この私を呼び捨てにしたこと、許しません!

 きっちりと後悔させて差し上げますわ!


 気になることを言ってましたわ。私がルームメイトにそっくりですって?

 おかしなはなしです。ルームメイトが私にそっくりなのですよ。

 けど、気になります……。


 私にそっくりな存在なんて、いるのでしょうか?

 いいえ、いませんわ。絶対にいませんわ。姉の千秋をのぞけば……。

 だとしたらこの子、千秋と同伴受験したということでしょうか。


 千秋も入学するということでしょうか。何ということでしょう!

 許せません。この美少女、放ってはおけません。侮れません!

 だから私、この美少女をガン見してやったのです。


 私がガン見すれば普通、緊張して凍りついてしまうものです。

 けどこの美少女、一向に凍りついたりはしませんの。

 それどころか、私の胸元をガン見し返してきます。


 これではらちがあきません。


「ルームメイト? では、あなたは千秋と同伴受験しましたの?」

「は、はい。あっ、秋山純です。よろしくお願いします」

 意外にも殊勝なところもあるようです。揺さぶります。


「どうしてこの私が、よろしくお願いされなければならないの?」

「そ、それは言葉のあやで……はははっ……美少女の前だから……」

 美少女に美少女と言われましたの。私が言わせましたの。いい気味です!


「……男として普通に緊張してしまって!」

 は? 今、なんて言ったのでしょう!


「お、おと、男としてって……で、でで、では、あ、あな、貴方は……」

 まずいですわ。私、男の前だと、つい、挙動不審になりますの……。

 それから、つい、妄想してしまいますの……。


「はい。そして、千春さんとも仲良くなりたいです」

「ななな、仲良くなって、なな、なんとするのですかぁーっ……」


 そのあとのことは、ほとんど覚えていませんの。挙動不審になりましたの。

 何やら妄言を吐いてしまいました。美少女な男に触れてしまいました。


 私、美少女は嫌いです。男は大好きです。

 目の前の美少女な男はどうかというと、大好きです。


 男に触れると、身体中が熱くなります。脱ぎたくなってしまいます。

 『いいからだ』を晒したくなってしまいます。




「……で、では。ま、まずはIDの交換をしましょう……」

「わ、分かったよ。IDの交換だけはしておこう」

 と、気付いたときにははなしがまとまっていました。


 美少女な男は私に服を着るように言います。

 ですが熱いので、それはイヤでございます。

 それに、折角の私の『いいからだ』です。もっと楽しんで頂かないと!


 私は「ID交換が先」と言って譲りませんでした。

 そのあともなんやかんやで服を着る気はありません。

 結局は美少女な男も応じてくれました。


 その直後。


「あら、意外です!」と、メイド長の声がします。


「千秋様も合格なさったのですね」

 許せません! 私と千秋を勘違いしているようです。

 けど、無理はありません。今の私は、挙動不審ですもの……。

________________________

 あっ、メイド長のようです。


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

 これからも応援よろしくお願いいたします。

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