第15話 はじめての夜

※R15な描写があります。ご注意。


 デートを終えて我が家に帰ってきた僕たち。

 しっかり着替えを持ってきていた恵ちゃん。

 二人とも、シャワーを浴びて、今はリビング。

 なのだけど、とても緊張する。


「今日は、楽しかったよね」


 とりあえず、無難に切り出してみる。


「はい。久しぶりにたっぷり歩きました」


 一見、リラックスしてるように見える。

 しかし、少し呼吸が荒い。


「えーと……疲れてると思うけど、大丈夫?」


 もちろん、山間とはいえ舗装された道。

 へとへとという事はないのだけど。


「大丈夫ですよ。夕食も食べて回復しましたし!」

「あ、ああ。そうだね」


 どうやら、元気満タンらしい。

 しかし、ここからどうやって切り出せば……。

 

「……その、部屋、行こうか」


 我ながらムード作りがうまくない、と嘆きたくなる。

 

「は、はい。よろしく、お願い、します」


 なのに、恵ちゃんはといえば、嬉しそうだ。

 うう、本当にいい子だ。


 というわけで、寝室に移動。

 もう、腹をくくろう。不安なのは彼女だって同じ。


「ねえ、恵ちゃん。僕は、まだまだ今の恵ちゃんを知らないと思う」

「……そんなことはないと思いますけど」

「でも、僕が君の事を好きなことは本当だし。もらって、いいかな?」

「はい。どうぞ、もらってください」


 抱き寄せて、まずは唇を奪う。

 これからすることを考えて、深い口づけを。


「……はあ。これから、本当に、するんですよね」

「止めておく?」


 このごに及んで、チキンな言い回しだ。


「いえ。今日は覚悟決めて来ましたから」

「ごめん。腰が引けた言い回しだったね」


 今度は、手を頬に当てて、再度口づけ。

 ピチャピチャ、と水音が漏れる。

 

「なんか、身体が熱くなってきました」

「うん。僕もなんか、そんな感じ」


 こういうのが、ムードという奴だろうか。

 胸、触っていい?とか一瞬聞きそうになったけど。

 恵ちゃんに怒られるのは確定だな。


 おそるおそる、手を首から下に。

 左胸に手をあてて、そっと掴んでみる。


「ど、どうですか?胸の感触」


 上目遣いで感想を求められるけど、困る。


「う、うん。なんか、気持ちいい感じ」


 本当はそれどころじゃないのだけど。

 次は……えーと、ゆっくりと。


「はぁ。なんか、少し、気持ちいいです」

「良かった。気持ちいいところ、教えてね」


 経験豊富な男性なら、フィーリングで行けるんだろう。

 ただ、僕としては、聞くしか無い。ムードがなくても。


「……えーと、もうちょっと、真ん中辺り。お願いします」

「う、うん。真ん中ね。こんな感じ?」


 少し範囲を狭めて、胸の真ん中辺りを揉みしだいてみる。

 女の子の胸の感触ってこんななのか。

 感動というより、意外というかなんというか。


「は、はい。気持ちいい、です」


 ほう、と息を吐く彼女が艶めかしい。

 次は、両手で同じように揉みしだいていると。


「なんか、裕二君。上手です」


 なんだか、不満げな恵ちゃんである。


「え、ええ?いや、おっかなびっくりだよ」

「やっぱり、経験あるんじゃないですか?」

「いやいや。こう、本とかで色々勉強しただけだって」


 あと、真面目方面の動画でも勉強した。

 特に、揉む時は強くし過ぎないのが重要だとか。

 わかってない内は、相手に聞きながらすすめるとか。


「それだけで、こんな上手なの。理系って感じ、ですね」


 これは、褒められているのだろうか。

 色々微妙な気分だ。


「じゃあ、その。理系らしく、聞いちゃうけど。次、進んで大丈夫?」

「……あ、うん。たぶん、大丈夫だと思います」


 もう、顔がゆでダコみたいになっている。

 もらわれる気満々だった彼女だけど、やっぱり恥ずかしいらしい。


「たぶん?」

「だって、初めてで、わからないですよ」

「あ、そ、そうだね」


 パジャマをずらして、間に手を入れる。

 いよいよ、卑猥なことをしているという実感が出てきた。


「う」

「ど、どしたの?」


 なんか、まずいところを触っただろうか。


「い、いえ。もう、本当にするんだなって。それだけ、です」

「あ、ああ。そうだよね」


 なんともはや。嬉しいより、緊張が先に立つ。

 というわけで、一時間くらいしっかり準備して。


 ようやく、お互い裸の状態で、向き合う。


「そ、それじゃあ。お願いします」

「あ、ああ。僕の方こそ」


 何故に、行為の直前にお互いお辞儀をしているのか。

 でも、こんなのも僕たちらしいか。


 というわけで、行為に及んだ僕たち。


◇◇◇◇


 行為を終えた後の僕たち。


「なんだか、今頃になって、股の辺りがしみて来ました」

「最中は平気だったってこと?」

「どうなんでしょう。痛覚が麻痺してたのかもしれません」


 そういえば、注射の時、意識を外に向けていると、痛くないというのがある。

 似たようなものなんだろうか。


「そっか。割と、平気そうっていうか。全然我慢してる様子がなかったけど」

「はい。全然痛くはなかったです。妙な感触でしたけど」


 妙な感触。男の僕にはわからないけど、色々あるんだろう。


「でも、その。ようやく、初めてが出来て。嬉しかったです」


 ベッドで横向きに向かい合った彼女のふにゃっとした笑顔。

 とても綺麗で、可愛いなと思う。


「色々またせちゃってごめんね。僕もその、嬉しかったから」

「裕二君、すっごく緊張してましたよね」


 クスクスと笑い出す。


「そりゃ、緊張するよ。童貞だったし」

「なんだか安心しました。途中まで手慣れてましたし」

「勉強の成果は、途中まで、ということで、ここは一つ」

「別に気にしてませんよ。緊張しながら、優しくしてくれたの、わかりますもん」

「今度から、もうちょっと、うまく出来るようにするから」

「裕二君、いきなり上手になってそうだから、あんまり勉強しないで欲しいです」

「ええ?だって、恵ちゃんも、そっちの方がいいでしょ?」

「私としては、一緒にステップアップしたいんです!」

「りょ、了解。でも、身体が疲れた……」


 性行為というのは、スポーツのようなものだと聞いたことがある。

 それを本当に実感していた。ジョギング三十分くらいの運動量はあるんじゃ?


「わたしも、ちょっと、疲れました」


 と小さく可愛らしいあくび。


「じゃあ、そろそろ、寝よっか」

「はい。あ、服、着ないままでいいですよね?」

「うん。もちろん」

 

 と言った途端、ぎゅうっと身体をくっつけられた。


「僕がドキドキして寝られないかもだけど」

「私もですよ。その時は、寝不足でもいいです」


 そんな風に抱き合っていると、少しずつ眠気が強くなって。

 気がついたら、意識がまどろんで行くのに気がつく。


「……明日からも、楽しく、お付き合い、しましょうね」

「うん。のんびりと、ね」

「はい。これからは、のんびりと、行きましょうか」


 と言っている内に、恵ちゃんの安らかな寝息。


「やっと、僕も寝付けそうだ」


 お互い起きていると、眠気が全然来なかった。

 でも、これからも仲良くやってけるかな。

 

 なんて楽観的に思いながら、眠気に身を任せたのだった。


☆☆☆☆あとがき☆☆☆☆

というわけで、この章はこれで終了です。

次の章では、やっぱり京都の話をしながら。

少しずつ二人の過去にも触れていきます。


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