6.レイン*オータム
暗い空からポツポツと雨が降り注ぐ。
校舎から校門へ向かう生徒の姿は多種多様で、傘をさし歩いていく人もいれば、上着を頭に被せて走っていく人もいる。
そして俺の隣にいる二人の男子生徒は、後者だ。
「わりぃ、
「うむ。達者でな同志
「いやお前も行くんだろ、
学生鞄を抱えて雨の中を走り出す
俺が白けた目で
「ではまた会おう、戦友
「んなこと言ってたら
「それもそうだな。ではまた」
バシャバシャと雨の濡れた地面を駆けていく音は、すぐに遠くへと消え去り。
俺も持ってきていた折り畳み傘をさして、一人何も言わず歩き始める。
「――あれ、
「
校門を出た辺りで、後ろから聞き慣れた少女の声が聞こえた。
振り返ると、意外そうな顔をした
俺とは違いしっかりとした紺色の傘を、両手で支えてさしている。
「そうですね。前はミッカ先輩、今は
「いつも一緒って訳じゃねえよ。それを言うなら、
「私も違います。本当は毎日お店に行きたいですけど」
会話が続くたびに、お互いの歩幅が変わっていく。
俺は遅く、
道路側に寄った俺の横に並んだ
「受験がありますから。勉強を疎かにしたら、私はもうあの店に顔は出せません」
「アイツは気にしないと思うけどな」
「そう見えるようにするのが、上手い人なんですよね。先輩は」
「……かもな」
無理をしていないか。
辛い時は何時でも言えよ。
どんなにアイツを思った言葉を投げかけても、返ってくるのは決まって困った様子の苦笑いだけ。
昔はそんな事は無かったはずなのに、気が付いたらそういう仕草がアイツの癖になっていた。
「それを言ったら、
「はあ? 何を言ってんだ
「だって
「んなことねえよ。気のせいだ、気のせい」
ふふっと軽く笑う
好みも趣味も、考え方すら違う俺たちを一括りにされるのは癪なのだが、俺の弁明を待たずに
「同じです。同じなんですよ、私にとっては。二人がいてくれたから、私は今の私でいられるんです」
交差点に差し掛かり、信号が赤になっていた為、横断歩道の一歩手前で俺たちは立ち止まる。
傘に当たり跳ねていく雨の音に、通り過ぎていく車たち。
二つの騒音は今にも
「何が何でも一番になるって。他は何もいらないって思ってた私を、こんなにも甘くしてくれたのは、二人じゃないですか」
「俺は何もしてねえよ。ミッカも、ただ見ていて放っておけなくなっただけだ」
「それで良いです。いえ、そんな二人だから私はこう言えるんです」
傘と傘の合間から、陰のある眼差しに光を灯す
「好きです。ミッカ先輩も、
信号が赤から青に変わっても、俺は
「だから私は頑張ります。一番好きな二人に恥ずかしい所は見せられないから! 二兎でも三兎でも追いに追って、全部手に入れるのが今の私です!」
「おい、結局一番に拘るのは変わってねえのかよ!」
「勿論です。なので
反対側に辿り着いた
「――私が今の
そんな
いいや、違う。
思い浮かべてしまったものに蓋をして、込み上げてくる叫びを俺は必死に押さえ込んでいた。
言いたい、言ってしまいたい。
だけどそうしてしまったら最後、その甘さから抜けられなくなる気がして。
「……さっさと帰れ、
「そう、ですか」
小さく頷く声。
傘に阻まれて見えづらくなった
「まだ私は、お二人の一番には成れていないんですね」
それだけ言い残して彼女の背中は、傘に隠れたまま遠ざかっていく。
俺は
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