夢 と 現実(夢)

不思議な夢を見た。


白一色の部屋に、私一人が立っている。


それを、俯瞰ふかんで見ている私。


私の他に誰もいない。


物も何一つ置いていない。


何をするでもなく、ぼーっとしている私。


突然、キョロキョロと辺りを見回し始めた。


(何か、探してる?)


すると後方から誰かが走り寄って来た。


それに気が付き、私が振り向く。


(誰だろう?)


なぜか顔は見えない。


さっきまで何もなかったハズなのに、強烈なライトに照らされて逆光でなにも見えないのだ。


しかし、夢の中の私はそれが誰かが分かるのか、両手を上げて腕を思いっきり振ってピョンピョンと跳び跳ねている。


背格好からして男の人だろうか?


相手は私の前までたどり着くと、私を抱き締めた。


私も、なんの迷いもなく相手の背中に腕を回す。


『———!』


夢の中の私が何かを言った。


名前の様だったけど、聞き取れない。


(誰?誰の名前を言ったの!?)


誰か分からない。


しかし、抱き締められている私は、凄く幸せそうな顔をしている。


なんだろう。


夢の中の私の感情が流れて来るのか、俯瞰ふかんで見ている私まで温かく幸せな気持ちになって来た。


(和矢?和矢なの!?)


そう叫んでみても、夢の中の私には声が届かないのかなんの反応もない。


その内二人は手を繋いで向こうへ歩き出した。


(待って!誰なの!?)


どんどん行ってしまう。


――ヒュンッ!


(わっ!)


不意に、私の横を白い何かが通り抜けた。


(え?)


猫だった。


新雪の様な、真っ白い猫。


その猫はなんの迷いもなく、私たちの方へ走って行く。


二人に追い着くと、私の足にすり寄った。


私は猫を抱き上げ、また歩き出す。


猫は私の腕に抱かれて幸せそうだ。


(待って!)


やっぱり二人に私の声は届かない。


しかし猫には届いたのか、耳をピクピクとさせて私の方を振り向いた。



『ニャー』




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