第一話

                第一話  現代社会に生まれ変わって

 拙者は戦国時代からおよそ四百年後の世界に生まれ変わった、拙者の名前はこの世界でも真田源次郎と名付けられていた、だが。

 何故か拙者の名前は諱である信繁ではなく幸村となっていた、源次郎という名前も殆ど使われない。何でも世が変わって諱が名になったらしい。しかも本姓も使われなくなっている。時代が変わると名前も変わるのかと拙者はしみじみと思った。

 世を見ると日の本は全く違っていた、もうそれは違う国とかそういうものではなく全くの別世界だ、鉄の車が走り飛行機なるものが空を飛びテレビや携帯やパソコンやスマートフォンというものが世に溢れている。

 野球もあればサッカーもテニスもラグビーもバスケもある、もっと言えば剣術は剣道になっており柔術は柔道となっている。他にもボクシングやレスリングというものまである。おまけに服も食いものも全く違う。

 下着まで違っていることには驚いた、拙者は褌がトランクスやボクサーというものに変わっていることにも仰天した、世の中下着まで変わるのかしかも女まで下着があるという。ブラやショーツの話を聞いた時は実に面食らった。

 テレビやパソコンではアイドルや女優やらで大層美しい女がこれでもかと出て来る、男もだ。だがこの時代でも衆道があることにはこれは変わらぬかと思った。

 天下の政は幕府なぞとうの昔に終わっていて議会や政党や内閣で動いていた、しかも外国との付き合いも頻繁だ。この違いにも拙者は戦国の世と違っているとつくづく思った。

 産まれてから小学校に入るまで何かと驚いてばかりだった、だが拙者はその中で不動尊に言われた通りに野球をすることは心に決めていた。それで父上と母上言葉ではお父さんお母さんとお呼びしているお二人にいつもせがんでだった。

 キャッチボールを教えてもらいバットの振り方や走塁も教えてもらった、ここで拙者は自分が両利きであることを知った。

「幸村は両利きだな」

「そうね、右でも左でも投げられるわ」 

 こうお二人で拙者のそのことに気付いてお話をされた。

「お箸も鉛筆もだし」

「ものを持つことについてもな」

「だったらね」

「両利きで育ててみるか」

 こうして拙者は両利きとしての教育を受けた、だが野球の時は父上はそれがしに左用のグラブを買ってくれて言われた。

「左を制する者は世界を制すだ」

「だからでござるか」

「そうだ、だからだ」

 それでとだ、こう言われてだった。

 拙者は左ピッチャーとして育てられた、バッターとしても左だ。そして小学校入学と共に野球をはじめた。

 リトルリーグに入ると拙者は野球に励んだ、父上と母上は拙者を学校だけでなく学習塾にも通わせてくれた。そうしてだった。

 拙者は学業にも野球にも励んだ、拙者はどうも戦国の世から学問も武芸も好きだったがこの時代でもそうであった。

 学業も優秀と言ってよかったが野球でもだった。

 拙者は見る見るうちに頭角を現し所属しているリトルリーグのチームはおろか長野県でも有名になり。

 四年生でエースで四番になった、拙者は投げ打った、そうしてチームを長野県の大会で優勝に導き全国大会でも優勝まで引っ張った。それは六年生まで三年間のことだった。

 中学校は地元の中学だった、父上も母上も所謂お受験というものに興味はなく拙者をのびのびと育てたいとお考えだった。その為拙者は中学は地元の中学にそのまま入り野球部に入った。野球部では一年生からエースで四番だった。

 そして三年間思う存分投げて打った、その三年間は充実したものだった。高校の三年間も同じだった。

 高校一年からエースそれも四番だった、地元の進学校偏差値が丁度そこだったので入った公立のその学校の野球部は弱小だった、だが拙者は野球が出来ればそれでよく入部してすぐ練習中の動きと体力が抜群にいいと話題になり試しに練習試合に出してもらってそこでホームランと攻守を見せることになった。

 このことから拙者はとんとん拍子で一年生ながら背番号一を貰い四番になった、先輩の方々も同級生の諸君も拙者を邪険にすることはなかった。拙者は現代世界でも拙者でありこの人格と態度がよかったとのことだ。

 それで拙者は長野県の大会で活躍し甲子園まで行った、甲子園で投打で引っ張り見事優勝まで導くことが出来た。

 二年生になってもそれは同じで春も優勝し夏春連覇を達成した、二年の夏は残念ながらある人物に決勝でまさかの一撃を受けて敗れたが。

 三年の春と夏、主将に任命されていたが今度も連覇した、こうして拙者は高校三年間で四度の優勝を達成し高校野球を終えた。

 ドラフトでは拙者は注目の的だった、およそ八球団が拙者を一位で指名してくれた。だが拙者を指名したチームはとんでもないチームだった。



第一話  完



                   2021・4・9

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