第5話 変わったなぞなぞ


 私は音にびっくりしたけれど、入り口を見たらおじいちゃんが見えたので安心あんしんした、きっとわすれ物なのだろうと、私は中からカギをけた。


「ああ、すっかり忘れてた、お昼に数学すうがくの先生のところに行ったら、お前が留守番るすばん大変たいへんだろうからって、良いプレゼントがあった」


「え? 魔法使い《まほうつかい》の先生から? 」


「そう、物じゃなくて、なぞなぞだけど」


「なぞなぞ?? 」


むずかしいぞ、かなり・・・やってみるか? 」


「もちろん!! 」

私はわくわくした。


「じゃあ、いくぞ、

指輪ゆびわとコーヒーカップは同じもの

どうしてだ? 」


「は????? 」


「ハハハ、そんなかおをすると思った! でも先生がおっしゃるには

たとえ正解せいかいでなくても、答えを考えることも子供にはとっても大事だいじだってさ。

じゃあ、おじいちゃんが帰ってくるまでにかるかな? 無理むりかな? 行ってくる」


私はあたまの中が、陶器とうきのコーヒーカップのように真っ白になった。



「え・・・魔法使いの先生が出すんだから、きっとうそとかじゃないよね」


 私はその先生のことをこう呼んでいる。大学で数学すうがくを教えているえらい先生で、私がとっても小さなころからお店のお客さんだった。

今までそんなにお話をしたことはなかったけれど、私が算数が苦手にがてだとおじいちゃんが話したらしくて、三年生の時、ちょっとだけ教えてもらった。ほんの少しの時間だったのに、私は算数が好きになれた。だから

「先生は魔法使いみたい」と言ったら、とっても喜んでくれた。


その時に教えてもらったことは今でもよくおぼえている。


「とう子ちゃん、四則計算しそくけいさんざんが先だとならうけれど、早く正確せいかくにやるのならば、ざんが先だよ」


「どうしてですか? 」


かずが少なくなるだろう? 数が多くなればなるほど、人はどうしても計算間違けいさんまちがいをしてしまうからね」


「そうか! 」


そのやり方で、計算してみると確かに間違いが少なくなった。

おじいちゃんのお店にはいろいろなお客さん来ていたけれど、

私が一番「感謝かんしゃしている人」だ。


「うーん・・・指輪とコーヒーカップ・・・」


指輪は無いから、私はコーヒーカップをじっと見つめることしかできなかった。


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