第3話 負け犬の遠吠えだ

 俺が女とチームを組んだという事実は瞬く間に広まった。男と比べ体力が劣る女と組んだという事実はなかなか衝撃的なものだった。しかし、俺をなんだと思っているのか、脳筋でスリル好きな戦闘狂の俺はスリル追求のため女と組んだといううまい具合にまとまってしまった。むしろこの噂が苦しめたのは、俺ではなく、俺と組んだマリーナだった。マリーナは女の中でも男の中でも人気があり、敵がいた。だから、俺と組んだことがスパイスとなり陰口がどこでも立ち込むようになった。むしろ陰口ではない。時々一人でいるマリーナがとても小さく、か弱く、可憐に見える。今にもなくなってしまいそうで、消えてしまいそうで不思議だった。そんなマリーナを現実に引き戻す為に俺はマリーナの手を引き、話しかける。

「おい、今日の仲間探しどこ回って見るんだ?俺、面白そうなやつがいいからさ、そこんところ任せた。」

 マリーナは俺を見た。そして笑い返した。

「あたしに任せていいの?メチャクチャにしちゃうよ?」

 いつもの始めて会った頃と同じマリーナが戻って来て安心した。俺は笑いながら返した。

「だからだよ。」

 そのあとはいつも通り雑談だのしながら訓練した。いつも通り楽しかった。こいつとチーム組んでよかった。そう思うことに抵抗がなくなってきたのが今の俺の現状だった。


 作戦会議兼ね昼ごはん中。購買で買ったメロンパンを頬張りながらクラスに配られる生徒表を見る。生徒表には性別、誕生日、特技、顔写真が載っている。これを見てメンバーを決めている。作戦を立てたりもするがメンバーが二人だけなど話にならない。この人あの人と言いながら飯を食った。

 後ろの方で声がした気がした。しかし、誰もいなかった。不審に思うもどうしようもなく、俺は忘れることにした。

「お前のページはどこだ。」

「あたし?あぁ〜、ここ。」

 そう言ってページを開いた。そこにはマリーナの写真が貼ってあった。


『名前 : マリーナ・アンリ・ミテッドリーマン

 性別 : 女  誕生日 : 2月24日     

 特技 : 医学関係が専門。回復、心理的なもので混乱させることを得意としている。

                      』


 なるほど…。よくわからないが戦闘型ではないと言うことだろう。メロンパンを口に突っ込む。

「どう?満足した?」

「あぁ、ありがと。」

 そこから昼食の続きを満喫した。



 教室に戻ると授業の準備をした。終わると机に座り外を眺めた。

「お!おいおいおいおい!!」

 後ろから声がした。そっちを睨むように見ると金髪で黒目なチャラそうな高身長男がいた。声も大きい。そっちを見ると男は近づいてきて机をばん!と叩いた。そして言った。

「お前ってMAのこと好きなの?」

 ……は?

 いきなり訳わからないことを言うチャラ男。

「MAって誰?」

 そう言うとチャラ男は大袈裟に驚いた。

「えーー?!知らないの?」

 もう訳がわからない。どうして今こんなふうに俺がおかしいみたいになってるの?MAなんて知らねぇわ。

「マリーナ・アンリ・ミテッドリーマンだよ?」

 マリーナ?あぁ、マリーナのMとアンリのAか。       なんだよ、そういうことか。

「マリーナがなんだよ。」

「だから好きなの?って。」

 何があったら俺はマリーナを好きになるんだよ。

「好きじゃねーよ。」

「えー!!?マジィ?」

 なんだこのチャラ男。女みたいな反応しやがって。いきなりにも程がある。

「なんでそんなの気にするんだよ。」

 チャラ男はこっちを見下ろすようにしてみながら穏やかに笑った。

「なんでって…」

「あー!!!トミー!」

 そんな爆声はマリーナの声。そしてトミーと言う名前。トミーはこのチャラ男のことだろうか。

 チャラ男はマリーナを見て焦った。

「ちょっとMA!ここではトミーじゃなくてファントム・ミラーだよ!!」

 この二人は知り合いか?そうだろうな。

「厨二病じゃない!でもちゃんとファン“トム”って名前残してるの意外!」

「残したわけじゃないから!」

「あっ…ごめんブラルド。こいつはトム…じゃなかった、ファントム・ミラー。私の幼馴染み!」

 ファントムは気取って礼をして声を低くした。

「どうかお見知りおきを」

 なんかうざい。俺は顔をそらし、「そうかよ。」

と返した。俺が自己紹介しない為マリーナがした。でも、反応を見るに俺のことは知っているようだった。マリーナを見ずに俺ばかりを気にしてるファントムを睨むとファントムは笑った。変な奴だ。

「俺もチーム入れてよ。」

「「は?」」

 本当いきなりで何言いたいのか理解が追いつかない。マリーナも焦った。ファントムは首をかしげて上目遣いで俺を見た。

「だめ?」

「………きっしょ。」

「ひどっ!!」

 思わず吐いてしまった本音にファントムは悲しんだ。マリーナは笑っていた。

「てか、コールネーム作んないの?」

 ほんとに話が変わりやすい奴だ。戸惑いが隠せない。

「まだ考えてなかった。」

 とマリーナは言った。マリーナは慣れてるのかあまり戸惑っていなかった。こいつと話すと調子が狂う。でも、やはりもうチームメイト選びはヒートアップしている。俺等も急いだ方がいいのかもしれない。まぁマリーナに任せておこう。

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