第1話ー② フシ村の終焉

「全てを救う力か。ネクス。お前は精霊に選ばれたようだな」

団長は僕の剣を空に掲げ男達を注目させる。


「俺たちに不死鳥様がついてくれた。この剣はその証だ。」


「あの剣、すざましい力だ。」


「ああ、まだ希望はあるよな。よし、俺たちもやってやろう!」


みるみるうちに士気が向上していく。


「団長、僕が前に出ます。皆さんは僕の方に敵が行くようにして下さい。」


「分かった。その剣の力、存分にふるってこい。」


作戦は決まった。後はこの剣の力次第だ。


不死鳥もこちらの話を理解していたのか、上空に飛び上がると、祭壇の裏側の敵に向けて攻撃を仕掛けた。

祭壇裏は崖になっているため人を置くことは不可能。

本来がら空きになってしまうエリアで支援してくれるのはとてもありがたいことだ。

と感謝に使える猶予は無い。

悪魔の軍勢はすぐそこまで迫っていた。


「ここが正念場です!迎え撃ちましょう」

腕を振り上げ、みんなを鼓舞した。

「うおおおお」


そして、時は来た。


「行くぞ!この村は必ず守ってみせる!」


向かってくる悪魔に向け剣を振るう。

ボウンッ!

剣から放たれた炎の波が敵軍をバターのように溶かしていく。

(この力なら…いける)


ボウン!ボウン!ボボボボボウン!


一振り、また一振り。

炎の波は衰えることなく、何度も敵群をなぎ払った。

しかし、敵の勢いは衰えない。

とにかく剣を振り回し敵を焼きつくした。


ブチュ…


何かを踏んだような気がする。

足元を見ると、そこにあるものに対し言葉を失った。

「だ、団長…」

そこにはかろうじて原型を留めた自警団長の亡骸があった。

無数についた傷が恐怖を物語っている。


ズドン、ズドン


この恐怖さえ吹き飛ばすような轟音が神殿の方角から聞こえてきた。

音に続いて大地が揺れた。

はっと気がついた。

僕は敵を止める事が出来なかったのだ。

仲間は死に、神殿も破壊されている。


(どうしてこんな…ことに)


剣を落とし、膝をつく


ザシュ!


僕の体が千切れる気がした。

痛みは一瞬で、あらゆる物が薄くなっていった。

これが死というものだろうか。

でも、ここで終わる訳にはいかない。まだ生きてる人がいるかもしれないからだ。それがたった1人だとしてもだ。

僕は視界が黒くなるまで必死に願い続けた。

〜〜〜

ふと意識が戻る。僕は炎の渦の中にいた。


「ここはどこだ?…ぐっ」

体を見ると鎧に大きな爪痕が刻まれており、炎がまとわりついていた。


「も、燃えてる!」

僕は炎を振り払おうとした。

しかし、炎はさらに勢いを増していく。

そして、全身が炎で包まれた。

燃え尽きる…と思ったが不思議と熱く無い。


体が軽くなり、痛みも止まった。

この炎が傷を癒してくれたようだ。


僕の傷が癒えると、炎は腰に移動し、不死鳥を象った刻印に変化した。

刻印は光を放っていて服の上からも見るとこができた。

刻印に手を掲げると剣のつかが現れた。それを引き抜くように引っ張ると…

不死鳥の剣が現れたのだ。

今のはこの剣が起こしたのだろう。


見渡すと、元いた場所に立っていた。

突如現れた炎にびびったのか、敵は一歩後退していた。


「この力があれば、彼らに勝てる」

やるべきことは決まった。


僕は剣を引き抜き、敵軍の中に躍り出た。

「うぉぉぉぉ!」

ボボーボウン!ボウン!


敵に肉薄しつつ炎の波を打ち込む。

波は途切れることなく何度も敵を焼き払った。

何度も死んだが、そのたびに復活した。

打ち込んで、復活、打ち込んで、復活…

やがて静寂が訪れた。

ふと周りを見渡すと血と鉄で染まった大地に僕だけが立っていた。


「終わった…」

転がった無数の亡骸、破壊され尽くした神殿

僕は立ちすくみ、この惨状に心を痛めた。


(そういえば、みんなは?)

避難してた神殿はほぼ壊れているが、地下室は無事かもしれない。

一握の希望を胸に僕は神殿に向け駆け出した。

〜〜〜

予想通り、地下室は崩壊していなかった。

だが、腐敗したにおいが充満し、生命の気配は無い。

死体の傷によると、悪魔にやられたようだ。


(フェリア!フェリアはどこだ!)

部屋の奥まで進む。

一番奥の方に栗色の長い髪が地面に横たわっていた。


「フェリア!」

僕は駆け寄り、彼女の体を起こす。

その体は冷たく、妙に軽かった。

彼女の体に松明の明かりを照らす。


彼女の下半身は原型をとどめないくらいに潰れていた。

僕は言葉を失った。


(落ち着け、まだ希望はある)

不死鳥の剣を彼女に向け、祈りをこめる。


(フェリアを助けて…)

すると、剣から出た炎が彼女を包み込んだ。

炎は彼女の傷を治し、元の姿に戻した。


「フェリア!目を開けてくれ!」

再び彼女に呼びかけた。

しかし、その体はぴくりともしない。

僕は悟った。

彼女はもう戻ってこないということを…

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