第1話 始まり




「....」

 目が覚めると光が飛び込んできた。

 木々に生い茂る葉の隙間から差し込むそれは何とも言えない不思議な心地良さを感じさせる。

「起きないと....」

ゆっくりと体を起こし手元に剣があることを確認する。今は何時だろうか。

「寝たのは昼過ぎだからそんなに時間は経ってないはず...」

剣を杖のようにして立ち上がる。

「早く帰らないと怒られるな...」

剣を背負い、狩った猪を片手に俺は家路に着く。






「ただいま」

「おかえり。遅かったじゃない」

「途中で寝ちゃってさ。でもちゃんと晩御飯の食材はとって来たから」

「おお!猪じゃねーか!さっすがは俺の弟だな!」

淡いオレンジ色の髪の毛が無造作に下ろされていて、光に溢れた青い目、首元に光る緑色のブローチが良く似合う、さながら「チャラい」を体現させたようなその青年は俺の兄、グリアだ。

「今日はラッキーだったよ。すぐ見つけられたからね」

しばらくして調理された猪と母さんが作ってくれた様々な料理が並ぶ。

「今日は豪華だね」

「あったりまえだろ!明後日はお前の試験なんだからな」

「試験」それは王国に仕える聖騎士になるためのものだ。兄はその騎士団長を務めている、意外とエリートなのである。

「明日には王都に出発するんでしょう?しっかり食べて元気に出発するのよ」

「うん。ありがとう母さん」




「じゃあ、俺は先に王都で待ってるからな。早く聖騎士になって俺に顔見せてくれよ」

「ああ、任せてよ。なんのために今日まで繰り返し鍛錬したとおもってるの?」

「それもそうだな。俺がしっかり鍛えたんだ、首席で合格してこいよ?」

「首席はどうか分からないけど、最善を尽くすよ。」

「なぬぅ!?」

家族でこんな他愛ない会話をしたあと、兄は一足先に王都に発った。







そして訪れた俺の出発の日。王都までは馬車で半日ほど。事前に手配してあった馬車に乗り込み、母に別れを告げる。

「じゃあね母さん。立派な聖騎士になってくるよ」

「ええ。なんてったって私の息子ですもの。きっとグリアみたいな聖騎士になれるわ!楽しみにしてるわね」

「ありがとう。行ってきます」


馬車がゆっくりと動き出す。ここから僕の物語が始まる。



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤雷の騎士 ウーロン茶 @uuron

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ