第19話〜好きな人

筋肉ゴリラは言った。


「好きな人が出来た」


それを聞いた瞬間、俺は驚いたが真っ先に出てきた言葉はー


「そのメスゴリラはバナナは咥えてるよな?」


ガリ勉は思った…「コイツ何言ってんの」と、困惑こんわくした顔でガリ勉は俺を見てきた。そして、この場でもっともヤバい奴は筋肉ゴリラだった。


ひたいにはピキピキと血管が出ており、鼻息がとても荒い。そしてその指毛がボーボーな右手から繰り出されるアッパーは生まれてきて1番に痛かった。


「バカバカっ!そんな事言うから殴られるんだよっ!バカなの?」

「しられえお、えかしゃあなくね?きぃんにくごおらにあぐなえるとはおおってない。(知らねぇよ、てか仕方なくね?筋肉ゴリラに殴れるとは思ってなかった)」


あごが痛い。まともに喋れる気がしないほどマジで痛いからこんな感じで喋るしかない。


「これで許すが、次喋ったら殺す」

「ほぁごおとごわいわふ(あざーっす)」


そして筋肉ゴリラはスっとしたのか、話の続きへと戻った。ウットリした表情は正にゴリラだったがまた殴られたら今度こそ、取れそうなのでいうのはやめた。


「で、同じクラス?それとも下野動物園?」

「当てられるのなら教えてやるよ」

「えぇー誰だよ」


筋肉ゴリラは絶対にあてられないという謎の自信があった。その自信が鼻についたガリ勉はあてようと必死に考えている。手当り次第に、女の子の名前を挙げており彼は首を横に振るだけだった。


「瀬山!秋ちゃん!ジェシー!藤田ちゃん!和美ちゃん!山下!」

「はい全部ハズレぇ〜!カッスお前っ!」


筋肉ゴリラがガリ勉をあおった。そのあおりのせいでガリ勉の心の中は絶対にあててやるという執念しゅうねんが芽生えた。


アイツが好きなタイプといえば…清楚系お姉様だ。しかしこの学校にはそんな典型的てんけいてきなモテるタイプはいないしみたことがない。

うーん、難しいなぁ。あーでも、今ちょっと出てきたあの子の名前でも出しとこうかな?


林檎りんごちゃん?」

「……うっ…ほ……」

「えっ、まさか」


林檎りんごちゃんというのは国語の教師でまさに清楚系お姉様で、性格も優しいので男子人気トップレベルの先生だ。そしてまだ若い人で、26歳だ。

確かにここだけ聞くと筋肉ゴリラのタイプにどストレートにハマっているが…


「筋肉ゴリラくんよぉ、11歳年上プラス先生は無理じゃね?」

「同い年狙っとけば良いのにね。ちなみにガチ恋じゃないよな?」

「質問多いわ、てかオレは本気と書いてまじ卍だから」


まぁしょうもないネタは置いといて、こうも禁断の恋を包み隠さずに言えるのは凄いと思った。そんな勇気俺にはない。

あの子の事を言っても馬鹿にされるだけで、まともに取り扱って貰えないと思うし、この恋……やっぱり俺、あの子の事好きなんだ。


「筋肉ゴリラはどうするの?どうやって林檎りんご先生にアピールするわけ?」

「そこは俺の筋肉をアピって、力強さをアピって、パワーをアピってればOK」


結局、己の筋肉しかアピってねぇじゃねぇか。やっぱりコイツには禁断の恋とか無理だと思うわ。考えてた事が馬鹿らしくなってきた……

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