第17話〜新しい風

セミやら虫が鳴いている。辺りはもう真っ暗で明かりはほぼなかったがあるとするなら公園の近所の家からの明かりぐらいだ。そういえば、今は何時ぐらいだろう。


「もっと喋っていたかったなぁ」


素直に思った。自分とは考えの違う人は普通、馬は合わない。馬が合わなかったら関わらなくなるのが俺の中では常識だ。なのに炎華ほのかは違った。


なんていうんだろう?この感覚は初めてだし言い表すのは難しい。たとえ自分と考えは違ったり感覚がズレていても、それをスグに受け入れられるのは自分でも珍しかった。


たぶん、炎華ほのかは俺の夢や考えを受け入れているから俺も受け入れているのではないかと思う。

こう考えこんでも結論は出ない、いつもそういう感じで終わっている。まぁもう遅いし帰ろうかな。


「かーえりまーしょ、かえーりーまっしょ」


即興で考えた歌を歌いながら帰った。まぁ、家の中に入るとそりゃこっぴどく怒られた。もう反抗期が終わっていて本当に良かったな、お袋よ。


「もおおおおう!いずちゃんったらどこほっつき回してたのよっ!心配したのよ?ご飯も冷めちゃってるし不審者に付け回されてたらどうするのよ!」

「はいはい、分かりやしたよ」

「もおぉ、この子ったら」


俺は聞き流して、食卓につく。飯にはラップが掛けており時計を見ると今は8時50分ぐらいだ。結構遅い時間だが、腹は正直で早くご飯を寄越よこせと言っている。


「お父さんも何か言ってちょうだいよ!」

「…お前、どこに行っとった」


俺は惣菜そうざいを飲み込むまでずっと黙って食べていた。親父は新聞を読みながら言った。その声色は普段と全く変わっていなかったのでちょっと怖かった、新聞紙で表情も見えなかったし。


「公園で寝落ちしてた」

「…そうか」


相変わらず親父の対応は冷めており、あんまり興味がないようだ…あれ、なんか新聞紙を持つ手が震えてるような…?


「もおぉ、お父さんったら私より心配してたじゃないの。そういうところが結婚する決め手となったんだけどね♡」

「うるさい、ワシは長男がどっかほっつき歩いてんのが嫌なだけじゃ」

「いずちゃんの前で照れ隠ししなくてもいいのよ、お父さん♡」


あーまたイチャイチャが始まってるよ。ご飯が美味しくなくなるのでさっさと食べる事にした。早食いは得意だ。


「ご馳走様ちそうさま、じゃあなぁ」

「あらぁ、こんなに早く食べれるのはお父さんの遺伝子の影響かしらね?」

「お前じゃろ」


食器を台所に置いて、さっさと2階の自分の部屋へと行った。

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