第5話サンドバック

「お父様、ジムにサンドバックが欲しいんですが」


もちろん、オッサンが喋っている。


「そうか、サンドバックが欲しいか。すぐ設置させよう」


ありがとう、お父様、大好き!と歯が浮くようなセリフを言ってのける。


「よしゃ、ええ感じでシナリオが進んでるで」


サンドバッグなんてどうするの?


「君が殴るんやないか」


馬鹿野郎!何考えてるんだ!


「まぁ設置されるまでは何時も通りのメニューな」


父親の書斎。


「京子がサンドバッグが欲しいと言っているが」


侍従長の板倉が言う。


「ここ最近はジムに朝晩通ってトレーニングをしているようです」


父親は考えたが、


「まあ良いだろう。設置の手筈てはずを頼む」


娘の極端な変化には戸惑ったが、健康に生活するならそれも良かろう。


「設置を京子に伝えてくれ」


京子はジムに居た。トレッドミルの負荷が上がった。平坦だったが坂道になった。あれだけ歩いたのに途端にきつくなる。


「京子ちゃん、頑張りどきやで」


歩く時間も5分刻みで長くなっていく。しんどい。


「じきになれるで。侍従長の板倉さん来るわ」


しばらくすると板倉が現れ、私とサンドバッグの位置を話し合った。ちょうど良いスペースが有ったのでそこに設置する事にしてもらった。


「京子ちゃん、いよいよ本番やで」


何がよ。


「京子ちゃんの実力が発揮されるんや。楽しみやで」


そう言って、そや!と思い出したようにオッサンが言った。


「京子ちゃん、ボクシンググローブ買いに行こ」


オッサンはノリノリだ。そう言えばしばらく外に出てなかったな。


「たまには外の空気も吸いに行こ」


早速明日出掛ける事になった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る