書斎(1)

GM : では、次の部屋は書斎です。


 オーク材のどっしりとした書斎机と革張りの椅子、本棚があります。


ダリア : やはりここも本格的な書斎ですねぇ

GM : おそらく、大魔法使いの書斎でしょう。

マール : 「うっわ、よくできてんね」

GM : 皆さまが思い思いに書斎を眺めていると、アシュレイがぽつんとつぶやきます。「……ごめんなさい」

エリカ : 「……にゃ?」

ゴーシュ : 「ん?」

マール : 「なにが、さ?」

ダリア : 「どうしましたにゃ?」

GM/アシュレイ : 「たった今思い出したの。このドールハウスを作った大魔法使いとは……。この、ボクのことだったニャ!」

マール : 「前の、あーたかな」

ダリア : 「ああ、なるほど、だからあんなに手慣れてたんですにゃ!」

GM/アシュレイ : 「そうニャ、前世のボクニャ!」

ゴーシュ : 「なるほど?」

マール : 「あらかじめわかってないと、あんなに罠にほいほいつっこんでいったりはしないっしょ」

エリカ : 「……にゃ……」

マール : 「で、だ。ここまできたからには、思い出したこと、他にもないとおかしいっしょ?」

GM : 「そ、それがですニャ……」

ダリア : 「……でしたら、このドールハウス、売らない方がいいのでは……にゃ」

GM : 「ここでボクは、片思いの女の子と一緒に暮らしてたニャ……」 アシュレイはほっぺたを赤くしてモジモジ。

マール : 「売るかどうかはさておき、まずはここについて知ってることを……、ほうほう」(ニヤニヤ)

エリカ : 「……にゃ」

ゴーシュ : 「ほう」

ダリア : 「あらあらまぁまぁ」

GM/アシュレイ : 「女の子ってのはもちろん、あの肖像画の貴婦人ニャ。実際とっても美人だったニャ」

マール : 「夫婦だったのでもなく、恋人でもなく、片思いか。それでも一緒に暮らしてたのね」

GM/アシュレイ : 「でもボクは身分違いにも程があったから、畏れ多くて手も握れなかったニャ」

マール : 「……身分か。ヒトのサガだねえ」

GM/アシュレイ : 「でも、ボクはここで生きて、そして死んだのニャ」

マール : 「そこまでちゃんと思い出せたわけか。じゃ、あーたを殺したのは、誰さ?」

GM/アシュレイ : 「え? 殺されてないニャ。ボクは寿命が尽きるまでずっと、ここを守っていたニャ」

エリカ : 「……にゃ」

GM/アシュレイ : 「ニャー、でも、王女様は……」ここまで話して、アシュレイははっと気づきます。

ダリア : 「守っていた……やんごとなき身分の人と……。このドールハウスは、ただのドールハウスでなく、何かを保存しているものなのでしょうかにゃ」

エリカ : 「……王女様……にゃ」

GM/アシュレイ : 「待って、王女様は? 王女様はどこに行ったニャ?」

ゴーシュ : 「しらねーのか」

GM/アシュレイ : 「思い出せない。最後のピースのはずなのに……ニャ」

ゴーシュ : 「多分隣の部屋じゃないかな」

GM : まあまあ、書斎も探索していってください。

ゴーシュ : それはもちろん。

GM : ちなみに探索判定の達成値によって、出てくる情報が違ってきますので、頑張ってください。

ゴーシュ : (ころころ)9。よろしくないな。

エリカ : (ころころ) 10。

ダリア : 探索を平目でやってみましょう。(ころころ) 8。

マール : (ころころ) 4。うーん、いまいち。

GM : では、ゴーシュは書斎机の中から、大魔法使いの日記を、ダリア先生は魔法の発動体の指輪をそれぞれ見つけました。

ゴーシュ : 「なんか重要そうなもんを見つけたので読んでみて」

GM/アシュレイ : 「あ! それ、ボクの日記と指輪ニャ!」

ダリア : 「あら、これは……アシュレイちゃんの指輪ですにゃ?」

GM/アシュレイ : 「えーん、指輪だけでも返してニャ~」

ダリア : 「もちろんですよ、はいどうぞですにゃ」と渡します。

GM : では、アシュレイは、ジャキーン! と、指輪を装備しました。すると、ドールハウスにいる時限定で、アシュレイはコンジャラー1レベルの魔法を行使できるようになりました。

マール : コンジャラーなのか。

エリカ : コンジャラーなんだ。

ダリア : 少しだけ力を取り戻したのですね。

GM : 正確に言うと彼女の前世はコンジャラーとソーサラーの両方を扱うウィザードでした。それを踏まえた上で、今世のアシュレイはコンジャラーに適正があるのでしょう。

ゴーシュ : 「じゃあ次は日記だな」

GM : では、前世のアシュレイの日記ですが、魔動機文明語の読文を習得しているダリア先生なら読み解けますね。

マール : ラブレターかな(ニヤニヤ)

GM : 日記からは、前世のアシュレイが300年前の蛮族との戦で滅びた国から、1人の王女の亡命を手引したことが読み解けます。

ダリア : ……なるほど、このドールハウスは、シェルターであり、滅びた国の追憶でもあるのですね……。

GM : 日記の最後には「彼女を屋根裏に安置した」「眠りが穏やかあることを祈る」とあります。

ダリア : では、皆さんに読み解いた内容を伝えます。これは、伝えないとですね。

エリカ : 「……」

マール : 300年か。言い方から、亡くなったようだな。

ゴーシュ : 「屋根裏か……」

ダリア : これ、最終的に両片想い状態だったとしたら……。

GM : その真実はまだ闇の中ですね。それでは、達成値で10を出したエリカ。

エリカ : はい。

GM : 棚の本はほとんど傷んでいますが、1冊だけ綺麗な状態のものがあります。魔動機文明語で書かれた手書きのレシピノートで、アシュレイの母、マリーへのお土産に渡せば喜ばれるでしょう。宿のレシピが増えるかもしれません。

エリカ : 「……これは……マリーさんに渡す……ニャ」

ダリア : これ、前世のアシュレイちゃんが王女様のために書いてたのだとしたら……。

GM : いえ、ノートは複数の女性の筆跡で書かれており、亡命した王女のメイド数名の手によるものだとわかります。

ダリア : それはそれで、純粋に文化的価値が高すぎるのですが!? 「こ、これは……、失われた魔動機文明当時のレシピ……。文化的価値がどれほどあるか、見当もつきませんにゃ!?」

GM : メモ書きには、


「魔法使いが内装を誂えてくれた。本当に彼は良くしてくれる」


ダリア : 「これは……、このドールハウスは本当に素晴らしい価値がありますにゃ! 300年前の文化を守り残した、文化的シェルターですにゃ!」と大興奮。

エリカ : 「文化的……シェルターにゃ……?」

ダリア : 「ええ、保存が難しい本などを後世に伝えるために守り通すことができる、素晴らしい施設ですよ!」


「主の王女様が病に臥せった」


ダリア : ……あっ……。


「故郷が恋しい。かえりたい」


GM : という、記述を最後に、レシピは途切れている。

ゴーシュ : 「可哀想だな」

ダリア : 「ああっ……でも、やはりというか、なんというか……そうですよね、帰れなかったのですよね……」と、読み終わって、呟きます。

GM : 食事の内容も、最初は豪華なものだったのが、段々、栄養価の高いもの、消化に良いものに変化していっているのがわかります。

エリカ : 「……」

ダリア : 「……ねえ、アシュレイちゃん。このドールハウスの商談、キャンセルはできませんかにゃ?」

GM /アシュレイ: 「ニャ、どうして? キルヒア神殿なら、きっと大事にしてくれるニャ?」

マール : じっとダリアを見る。

GM/アシュレイ : 「それに……、このドールハウス全部を買い取るお金はボクにも村にもないニャ」

マール : 「アシュレイ、それ、いくらすんの?」

GM : 「……3億ガメル、ニャ」

エリカ : 「……」

ダリア : 「3億……、それは、確かにどうしようも……」呟いて、周囲を見回します。

マール : 「雇い主はあーただよ、アシュレイ。でもね」少し止めて、きっと見据えて言う。


「これ、売っていいの? あんたと、あんたの好きだった人の想いを、大事にしてくれそうな誰かに預けちゃって、いいわけ?」


GM : 「……もちろんニャ。ボクはもうアシュレイ・ジョーンズ、マリー・ジョーンズの娘ニャ」

ゴーシュ : 「そもそも売るってことは、今このハウスはアシュレイの所有物なんだっけ?」

マール : ゴーシュ、いいドールハウスがあったから、いわくつきだけど仮に手に入れた。それを商談に使うためいま調査中。こうだと思います。

GM : 正確に言えば、このドールハウスは事前調査をアシュレイたち冒険者に外注している状態で、所有権はアシュレイにはありません。 ドールハウスの正確な所有権は冒険者ギルドが握っています。アシュレイはドールハウスを調べる権利だけを、早いもの勝ちでもぎ取ったに過ぎません。

マール : あらあ、となると、うそをつくのは危ないな。

ダリア : 「……そう、アシュレイちゃんがそう言うのなら、私から言うことはないですにゃ」

エリカ : 「……」(頷く)

ゴーシュ : 商談っていうのは調査依頼を受ける部分でハウスを売るとかそういうことではないってことですかね?

GM : イエス。

マール : 冒険者において依頼は早い者勝ち、依頼中に手に入れた「宝の所有権は冒険者にある」、そして依頼の目的の品は依頼主と冒険者ギルドに所有権がある。……この認識でOK?

GM : はい。 つまり、ギルドと神殿は、ドールハウス本体があれば良いわけです。

マール : 了解。全員へ提案、ここをもうちょっと調査して、王女様の遺体を回収してから残りを売りませんか?

エリカ : 賛成。

ダリア : 賛成です。むしろそうしたいと思ってました。……何ならシャンデリアから絨毯からベッドから運び出したい勢いですが。

マール : 全体を買う金はどうあがいてもない。それなら売れそうな物だけ掻き集めてから売ればいいでしょう。ベッドとジュークボックスと怪しいお茶くらいはもっていきたい(笑)

GM : ベッドは無理かな~(笑)

ダリア : まあ、キルヒア神殿に売るのなら、内装はそのままでもいいかな。このレシピブックとか日記とか、個人の思いがこもっているものは持ち出していきたいです。

マール : ええ、それ。

ゴーシュ : 探索は最後までやると思ってました。

マール : なら、最後の探索をしましょう。そしてめぼしいものをかっさらう。そのうえで、アシュレイに決断をさせましょう


ゴーシュ : 「屋根裏はどこから上がるんだろうな?」 まあ寝室かな。

ダリア : まずは屋根裏部屋ですね。一応書斎の天井も見ます。

マール : はい。

エリカ : そうしましょうか。

GM : 天井、ですか……。(どうしよう、この部屋を探索すれば達成値次第で隠し扉が見つけるけど、もうみんな判定ダイス振っちゃったし……)うん、よくわかんないね。怪しいと思えばすべて怪しく見える。

ゴーシュ : 寝室で行き止まりになったら戻りつつ天井を調べるしかないかな

ダリア : よし、寝室まで踏破した上で、天井を無理矢理ぶち抜くなりしましょうにゃ!

ゴーシュ : (爆笑)

GM : でも、温室の天井がガラス張りだったことから、屋根裏があるとしたら、書斎か寝室になります。

ダリア : ですよね~。外にいた時にもっとよく観察していれば良かった。

エリカ : じゃあ、寝室行きましょうか。

GM : おっけー!

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