(内緒にしていて頂戴な)

閉じた部屋に夜は更ける。夜は大人の時間でしょう、とワイスは言う。早く来て、と手を取って、汗が滲めばお開きだ。ワイスの寝室で二人は踊った。

寝巻超しの身体は熱く濡れる。ワイスは寝台のへりを譲り、お話を求めた。彼はワイスのいる向かいの椅子へ、隣に来ないのかと訊ねた。赤面が返る。

わたし達にはまだ早いわ。言うと、向かいの椅子から立ち、挨拶もなくワイスは彼を部屋に帰した。扉が閉ざされ、その日の会話はそれきりになった。


日が昇り、陽光の中でワイスは台へ立つ。僅かだけ低い位置にある目を彼はじっと見た。昨日の続きの今日だった。円環ではない、本物の螺旋は回る。

隣に座るのも、用事もないのに手を繋ぐことだって特別なことだわ。でも許してあげる、あなたのことって好きだもの。ワイスはゆっくり言い含める。

そうか、と声がかかり、そうよ、と声は返る。手を握っても。よくってよ。手の甲に口づけが落とされる。冷たいような上目にワイスはどぎまぎした。


食事を済ませ、上着を着付け、手を繋いで廊下を歩く。玄関の台に背伸びをし、ワイスは彼へ口づけた。帰ったら続きをしましょうね、と耳打ちする。

ワイスは再び帰りを待った。口元を押さえ、幼い聖女は快い記憶を反芻する。夢見た暮らしは近付いた。繰り返しは変化を内包し、蜜月の行進は続く。

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