TURN17:持たざる者の選択

(突如Dシティに襲撃してきた悪の組織『ダークワールド』。何とか追い払って俺は家に帰ってきたけど…)

「ただいまー」

「タカシちゃん!!!」

 タカシの元へ「前世は俺のおばあちゃん」である中学生、チヨが抱きついてきた。

「本当に心配したのよ!?無事で良かった~!!」

「ばあちゃんも無事で良かったよ。この辺りにもダークワールドが?」

「ダークワールド…?ああ、あの変な兵士のことね。ええ。突然現れて色んな人にデュエルを挑んで負けた人をカードにして…わたしはデュエルに勝てたから大丈夫だったけど、お父さんとお母さんは負けてカードにされてしまったわ…」

「あ…ごめん。ばあちゃんにとってはこの世界での肉親だもんね…」

「ううん、タカシちゃんは気にしなくていいわ~。でもたった一人でも家族が残って良かったわ~独りぼっちになってしまうのは悲しいもの」

「うん…そうだね…」


 それからタカシはお布団へGO。疲れ果てていたため、ひとまずはぐっすり眠って翌朝に考えることにした。


 そして翌日…

(兵士たちはいなくなったけど…街は荒らされてひどいことになってるな…人もかなり少なくなったみたいだし)

 学校の先生や生徒もほぼ全滅らしく、授業どころではないらしい。ひとまずタカシは遊太たちに会うことにした。


「よ、タカシ」

「ふん、貴様も来たのか…」

「揃ったことだし始めましょうか。ダークワールド対策会議よ!!」

「おー!!」

「ふん…」

 タカシが遊太と出会った公園にて、突如会議が始まった。

「えーっと…対策会議って…?」

「そりゃ勿論ダークワールドをどうやって倒すのかを話し合うのよ!!」

(対策会議…こんな話、アニメであったっけ?昨日のダークワールド襲来はアニメでも見たことあるけど…いや、遊太の人生全部がアニメで描かれてるって訳ではないだろうけど)

「この街も人たちもめちゃくちゃにされて黙っているわけにはいかないでしょ!アタシたちの力でアイツらをやっつけてやりましょうよ!」

「同感だ。奴らは全員滅せなければならない」

「いや、大和…全員滅するはやりすぎじゃないか?」

「相変わらず甘いな貴様は…これだから貴様はいつもデュエルで…」

「はいはい!今は喧嘩してる場合じゃないでしょ!!」

「…えーっと、それで何か手はあるんすか?」

「ないわ!だから会議をするの!!」

「要するにノープランか…ふん、使えない女だ」

「何よ!!そういうアンタは考えがあるの」

「ああ。貴様らはダークワールドの本拠地を知っているか?」

「いや、知らないけど…大和、もしかして知ってるのか!?」

「フッ」

 すると大和はデュエルガジェットを取り出した。そのモニターに表示されているのは…

「…地図?」

「ああ。昨日、逃げ出す兵士に発信機を付けておいた」

「なるほど…これでアイツらの本拠地が分かるという訳ね」

「やるな大和!!」

「フン、これくらい当然だ」

「それで…本拠地は分かったところでどうするんすか?」

「これまで俺は攻めてきた奴らを倒すことしか出来なかったが…今度は逆だ!俺がダークワールドの本拠地へ攻め込み、殲滅する!!」

(単身で乗り込むとか脳筋かよ)

「いや…それは流石に無茶では…」

「そうだぜ大和!一人で乗り込むなんて危険だ!俺も行くぜ!!」

「そうそう…え?」

「一人で全員倒すのは無茶だと思うけど…二人でなら勝てると思うんだ!俺もお前と同じくらい強いしな!!」

「………」

「アタシも行くわ!!」

「えぇ…マジ?」

「アンタらだけで乗り込むなんて、無茶苦茶な事しでかすに決まってるじゃない。そういう時はアタシが止めてあげるわ」

「愛良…お前…」

「あ!か、勘違いしないで!べ、別にアンタのことが心配だからついていくとか!!そんなんじゃないんだから!!!」

(相変わらずテンプレ通りのツンデレだなあ)

「ってことで!嫌と言っても俺たちはついていくからな!大和!!」

「チッ…好きにしろ」

「よっしゃ!!タカシも行くだろ?」

「うん…え?俺!?」

「おい、それはいくら何でも俺は認めんぞ。こいつがダークワールドでないことは昨日の戦いで分かったが…こいつは俺たちよりも弱い。こんな雑魚を連れて行ったところで俺たちの足を引っ張るだけだ」

(ひどい言いようでへこみそう)

「俺はそうは思わないけどなあ。俺はタカシと何度もデュエルしてるが、いつも俺をギリギリまで追いつめるんだぜ!」

(毎回主人公補正で逆転されるんだけどね)

「昨日だってダークワールドの兵士を倒したんだろ?一緒に来てくれたらきっと活躍してくれるさ!な、タカシ!!」

「え…いや…俺は…」

「生半可な覚悟しか無い者に来る資格はない!!」

「ああ…うん…俺はやめておきます…」

「そっか…タカシが嫌なら仕方ないな」

「アタシたち3人で行きましょう。で、いつ出発するの?」

「明日だ」

「明日!?随分急ね…」

「時間が経てば奴らに俺たちの動きが察知されてしまうだろう。その前に一気に攻め込み、そして殲滅する!!」

(無策なのか考えてんのかわかんねーなこれ)

「よし!じゃあ今日は準備して明日ここに集合だ!!」


(はあ…これで良かったのだろうか?)

「…ん?俺は一体何を考えているんだ??」

(俺の目的は前世の記憶を活かしてこの世界で勝ち組人生を歩むこと!ダークワールドと戦うとか、自ら死にに行くようなもんじゃないか!それならこの街に残っていた方が絶対に安全…)

 そう考えようとするタカシであったが、遊太の顔が脳裏に浮かぶ。

(本当に…それでいいのか…?戦いから逃げるのが正解なのか?)

 そんなことを考えているうちに家に到着した。

「ただいま」

「お帰りタカシちゃん…ってなんだか浮かない表情ね~」

「実は…」


「ふーん、そんなことがあったのね~」

「遊太から一緒に戦おうって誘われたけど、正直めんどくさいというか怖いというか…だけどそれってなんだか逃げてるような気がして…ばあちゃんはどう思う?」

「そうね~わたし個人としては、タカシちゃんがここに残ってくれた方が嬉しいわね。せっかく再会できたんだもの。またお別れなんて嫌だわ~」

「そっか。じゃあ俺やっぱり残って…」

「でも~どうするかを決めるかはあなた次第よ。あなたがお友達のために戦いたいっていうならおばあちゃんは止められないし。あなたが戦いたくないっていうならそれでもいい。逃げることは決して悪いことじゃないって、わたしは思うな~」

「ばあちゃん…」

「どちらを選ぶにせよ、後悔はしないようにしなくっちゃね」


「遊太と一緒に行くか…それともこの街に残るか…」

 遊太の目の前にあるノートには『一緒に行くメリット・デメリット』『街に残るメリット・デメリット』がびっしりと書いてある。

「考えてるうちに夜になってしまった…ふああ…段々眠気が…寝る前に決めなきゃいけないのに…」


「これが…全てを超越する究極のドラゴン…覇王神竜ボルヴァークの力だ」

 デュエルをする遊太。彼の目の前にいるのは…禍々しいオーラを放つ巨大なドラゴンであった。

「そ…そんな…俺の…モンスターたちが…」

「切藤遊太。貴様はよく戦った。しかし…神の前では全てが無意味!さあ…終わりにしようか。覇王神竜ボルヴァークの攻撃!!森羅万象終焉砲!!」

 天空よりまるで隕石のような巨大なエネルギー弾が飛来。地上に落下し、遊太だけでなく、惑星を揺るがす程の攻撃が炸裂する。

「ぐあああああああああああああああ!!!!」


「遊太ああああああああああ!!!…はっ!?」

 目を覚ますとそこはチヨの自宅であった。

「今のは…夢?いや…違う!」

 タカシは立ち上がり、Dシティまで旅していた頃に使っていたバッグを取り出すと、準備を始める。

「俺には前世の記憶があるけど…この記憶は完全に戻っている訳ではない。未完成のパズルのように、抜けているピースがちらほら存在する。今の夢は…そのピースの一つ…!」

 準備を終えたタカシは家を出ようとすると…

「たかしちゃん…」

 声をかけるチヨは少し心配そうな表情であった。

「ばあちゃん…ごめん。俺…」

「いいのよ。あなたの人生を決めるのはあなた自身。わたしに止める資格はないわ。でも…一つだけ約束してくれる?」

「約束?」

「必ず…生きて家に帰ってきて。お願い…」

「…うん。約束する…!」

 するとチヨはタカシを抱きしめ、そして告げる。

「行ってらっしゃい!たかしちゃん!」

「うん…行ってきます!」

 家を出て仲間たちの元へ向かうタカシ。チヨは手を振って見送った後、独り言を呟く。

「たかしちゃん…やっと自分のやりたいことを見つけられたのね。あんなかっこいい表情のたかしちゃんを見たのは初めてですもの。寂しいけど…止めることなんてできないわ。頑張ってね…たかしちゃん…!」


「アニメのあのシーン…忘れたい記憶だったせいか、前世の記憶が蘇った後もすっぽり抜けていた。俺の記憶がもし正しいのならこのままじゃ…」

 タカシは昨晩見た夢の内容を思い出す。遊太がドラゴンに敗れる姿を…

「遊太はラスボスに敗れて死亡する…!」


「タカシは…来なかったか…」

「ふん…無難な判断だ」

「待っている時間はないわ。そろそろ行きましょう」

「ま…待って…!!」

 公園に集まる遊太たち。そこへタカシは駆けつける!

「俺も…連れて行ってくれないかな…?」

「タカシ…!ああ!勿論だよ!!」


 こうして遊太たちと共にタカシはダークワールドを倒す旅に出た。

(アニメ『デュエルオムニバースDX』の最終回…遊太はラスボスとのデュエルに敗れて死亡してしまう。しかしその意思は次回作である『デュエルオムニバースGOD』の主人公に引き継がれる…)

 その道中。歩きながらタカシは脳内で現状の整理が行っていた。

(でもぶっちゃけると新要素である『GOD召喚』をゴリ押しするために遊太たちは踏み台にされたようなもんなんだよな!!あの熱い友情展開やった後に負けるとかあり得ないだろ!!実質打ち切りみたいなもんじゃねえか!!!)

「あー!!!思い出しただけでムカついてきた!!!!」

「…アンタ大丈夫?」

「タカシ…お前もダークワールドに怒っていたんだな!その気持ち分かるよ!!」

「ふん」

「…本当に?」

(しかも『DX』の一部のキャラは『GOD』にも登場したけどほとんどがGOD召喚を持ち上げるための噛ませ犬みたいな扱いだったし!!あまりにもイラっとしたのでネットの炎上騒ぎにも参加したりしたんだったわ!!!)

「すう…はあ…ふう」

「うわあ、急に落ち着いたわね…」

(一旦落ち着こう。俺とデュエルした時、遊太はアニメに出たことの無いカードを使ってきた。もしかしたら…俺が介入したことにより、この世界の運命が少しだけ変わったのでは無いだろうか?)

「………」

(俺は遊太と違ってモブキャラ。圧倒的なドロー力は持っていない。でもこの世界の運命には干渉できる可能性がある…すなわちクソ展開という名の運命も変えられるかもしれないのではないだろうか…?)

「いわゆる歴史改変って奴か…やってやろうじゃあねえか…くくく…」

「またニチャニチャ変な独り言呟いてるわね…それよりアンタ」

「え?あ、はい。なんっすか?」

「どうして遊太と一緒に行く事に決めたの?てっきり面倒ごとは嫌いなタイプかと思ったんだけど…」

(確かに…愛良の言う通り、俺は面倒ごとは嫌いなタイプだ。ましてこの旅は死ぬリスクすら高い。楽勝人生を送ることだけ考えるなら行かないのが正解だろう。でも…)

 タカシは遊太をチラッと見つめる。

「ん?どうした?」

(遊太が死ぬのはやっぱり嫌なんだよな…今までの俺だったら他人の死になんか興味は無かったのに…本物の遊太と何度もデュエルするうちに情が湧いちまったのかもなあ…)

「これが…友情…か…」


 その後も遊太たちの旅は続いた。

「俺はダークワールドの兵士!ここから先には行かせぬぞ!」

 その道中ではダークワールドも待ち受けていた!

(よし、こいつはモブキャラ。俺でも多分勝てる!)

「あ…えっと…ここはおれにまかせろー」

「ん?おう!任せたぜタカシ!」

「…なんか棒読みじゃない?」

「行くぞ!」

「「デュエル!!」」


「私はダークワールドのパワーナインの一人…」

(こいつは…ボスキャラだしユニークに分類される可能性が高そうだな。俺じゃ引き運で負けてそうだし、ここで死ぬわけにもいかないし…)

 タカシはそーっと、一歩後ろに下がる。

「ふん、俺が相手しよう。貴様らダークワールドは必ず倒す!!」

(よし!ファイトだ大和!!)

 タカシは一般兵とは戦い、幹部との戦いは味方に任せるように立ち回り、道中の戦いでは生き残ることに成功。そして…


「ここがダークワールドの本拠地なのか?」

「どう見ても…ただの洞窟だけど…?」

「普通の人間なら寄り付かない場所に本拠地を隠す。連中らしい発想だ」

(まさか…ここに戻ってくることになるとは…)

「デュエニウム鉱山…!」

 ついにダークワールドの本拠地へとたどり着いたのであった!


To be continued…

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