TURN5:主人公(ヒーロー)逆襲

「沼地の支配者ゲロゲロックでとどめで」

「うわあああああああ!!!!」


遊太 HP:1300→0


「そんな…先輩が…負けた!?」

「遊太…」


「………」

「…くっく…ふっふ…」

(やっべえ…笑いが止まらねえ!!!)

 遊太に勝利し、にやにやと不気味な笑みを浮かべるタカシ。

(俺勝ったぞ!?主人公に勝ったぞ!?主人公ってことはこの世界で一番強い奴ってことだぞ!?もはや俺は世界で一番強いってことじゃん!?ふはは!俺TUEEEEEE!!人生薔薇色!マジイージーモードですわー!!…おっと)

「…対戦ありがとうございました」

「…あ、ああ!ありがとな!!」

 攻撃を喰らって吹っ飛ばされていた遊太が立ち上がり、笑顔で返事する。

「いやー!こちらの動きをとことん封じてから攻める!そんな戦い方をする奴なんて初めてだよ!お前、面白いデッキ使うんだな!」

「は…はあ…」

(前世からこのデッキ使ってるけど舌打ちされたり「クソゲー乙!」って罵倒されたりSNSで最低な害悪デッキ使い呼ばわりされて晒されるなんてことはあったが「面白い」って言う人は初めてだな…)

「完敗だよ!でも次は負けない!なあ!また来週デュエルしてくれないか?」

「え?あ、はい」

「約束だぜ!じゃあな!!」

「あ、先輩!待ってくださいよー!!」

 その場から去っていく遊太達。

(…約束されてしまった。まあ、いっか。また倒せばいいだけだし!この世界で俺が一番強いんだからな!!)


「それにしても先輩、思ったより元気そうで良かったっす」

「ん?どうしたんだ急に?」

「負けた後ちょっと黙り込んでたから落ち込んでるんじゃないかってちょっと心配したんすよ?」

「ほっほっほ!表の面しか見抜けないようではまだまだじゃのう!!」

 遊太達が帰路を歩いていると、突如頭上から声が聞こえてきた。

「「校長先生!?」」

「おじいさま?」

 近くにある雑居ビルの屋上にいるのは立派な髭を生やした仙人のような顔立ちの、スーツを着た男であった。

「…おじいさま。何でいつも高い場所から話しかけてくるんです?」

「それよりも校長、表の面ってどういうことっすか?」

「切藤君、笑顔を装っておるが…本当は悔しいのじゃろう?」

「え!?」

「やっぱりね…」

「流石は校長先生、お見通しって訳か…ああ、あんたの言う通りだよ。俺はデュエルは楽しく、皆を笑顔にするのが一番だと思ってる。でも正直悔しいんだ。俺を信じて戦ってくれたカード達の力を全然引き出せなかったからさ…もっと強くならないと!」

「ではその方法は?」

「えーっと…それは…」

「ほっほっほ、切藤君!地獄のスーパーハイパーウルトラすごい特訓を受けてみる気はないかのう!?」

「…!」

「スーパーハイパー…なんすか?」

「げっ…遊太、やめといた方がいいわよ。マジできついってパパが言ってたから…」

「…その地獄のスーパー何たら特訓を受けたら強くなれるのか?」

「もちのろん。必ず強くなれると保証しよう」

「…よっしゃ!やってやる!地獄だろうが何だろうがかかってこい!」

「あんた人の話聞いてた!?死ぬわよ!?」

「心配してくれてサンキュー、愛良。でも俺のカードたちはデュエルで死ぬ気で戦ってくれてんだ!俺だって死ぬ気で頑張らなきゃ!」

「ふむ、良い心がけだ!とう!!」

 校長先生はビルの上から飛び降りて着地する。

「特訓は今からスタートする!わしについてこい!!」

「はい!!」

 街はずれへ向かって走っていく遊太と校長。

「…大丈夫っすかね先輩」

「あーもう!どうなっても知らないんだからねっ!」


 そして時は流れ…

「あれから一週間…先輩、大丈夫っすかね?」

「あのデュエリスト…タカシだったっけ?は、約束通りに来たみたいだけど…」

「………」

「待たせたな!!」

 公園のデュエル場に遊太が姿を現した。

「遊太!!」

「先輩!!!」

「もう!一週間全く連絡寄越さないから心配したのよ!」

「悪い悪い!この街から少し離れた所にデュエル山があるだろ?あそこで特訓してたんだ!あそこじゃ電波も届かなくてさ!」

「特訓…?」

 タカシが遊太の言葉に首をかしげる。

「ああ、そっか知らないんだもんな。俺はお前に負けた後、デュエル山で地獄のスーパーハイパーウルトラアルティメットカオスマキシマム超すごい特訓を受けたんだ!!」

「なんか特訓の名前、前より長くなって無いっすか先輩…」

「………」

「すっげーきつい特訓だったんだぜ。例えば滝に打たれたり…」

(デュエルの特訓だよな?)

「崖を登ったり…」

(デュエルの特訓だよな!?)

「大きな岩を担いで山を走ったり…」

(デュエル要素は何処にあるんだ!?)

「熊に襲われてデュエルで追い払ったりしたんだぜ!!」

(熊とデュエル!?)

「いやー、本当にきつい修行だったな…」

(まるで意味が分からんぞ…)

「だけどおかげで超強くなったぜ!!」

 遊太は両腕のリストバンドを外すと、ズシンと音を立てて落下した。

「…!?」

「このリストバンドも修行の一つでさ。それぞれ10kgあるんだ!こいつでパワーアップしたドロー力も解放だ!!」

(ドロー力って何だよ!?)

「ってことで始めようぜ!!」

(ツッコミ所が多すぎて頭が痛くなりそうだが…やることは前と変わらん。普通にデュエルして倒せばいい)

「行くぜ!!」

「対戦よろしくお願いします」

「「デュエル!!」」


「まずは俺のターン!ドロー!!」


遊太

HP:4000 AC:3 手札:5枚

タカシ

HP:4000 AC:0 手札:4枚


「早速モンスターを…いや、まずはマジックカード『トレード・アウト』を発動!」

「…!」

「自分の手札から効果を持たない上級モンスターを1枚選んでデッキに戻してシャッフル!俺は『エレメンタル・マジシャン』をデッキに戻す!」


「ええ!?エースカードを引いたのにデッキに戻しちゃうんすか!?」

「なるほど…そういうことね」


「そして3枚ドロー!!」

遊太

HP:4000 AC:2 手札:5枚→3枚→6枚

「よし!さらにマジックカード『ダブル・サモン』を発動!自分の手札からタイプの異なる下級モンスターを2体同時に召喚する!行け!マジシャン・ジュニア!ミステリーマグネット!」


AC:2→1 手札:6→3枚

『マジシャン・ジュニア』

下級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1500 防御力:1200

『ヘッドドラゴン』

下級 タイプ:風 分類:ドラゴン 攻撃力:1400 防御力:1200


「さらにブロック・エンジェルを召喚だ!」


AC:1→0 手札:3→2枚

『ブロック・エンジェル』

下級 タイプ:光 分類:天使 攻撃力:0 防御力:1400


「なんか今日の先輩いつもの先輩らしく無いっすね。いつもだったらいきなりエレメンタル・マジシャンを出してばーん!って決めるのに」

「馬鹿ねあなた。先週のデュエルを忘れたの?」


「上級進化!!エレメンタル・マジシャン!!」

「ウォーターサーファーの効果発動。エレメンタル・マジシャンバウンスで」

「ああ!エレメンタル・マジシャンが!!」


「先週のデュエルでは1ターン目からエレメント・マジシャンを出した結果、次のターンにウォーターサーファーを出されて手札に戻されてしまった。それを警戒して今回はいきなりはエレメント・マジシャンを出さずに下級モンスターを2体出した」

「なるほど!あとさっきから先輩マジックカードばっか使ってないっすか?」

「あのデュエリストのエース…『沼地の支配者ゲロゲロック』にはマジックカードを使えなくする効果があるのは覚えているわよね?」

「あ、はい。…あ!そっか!今はゲロゲロックがいないから!」

「出されてマジックを使えなくされる前に、使えるだけ使っておこう、ということでしょうね。遊太、結構考えてるじゃない。これもおじいさまの修行の成果かしら?」


「先行は攻撃できない!俺はこれでターンエンド!!」

「番貰います。ドロー」


遊太

HP:4000 AC:0 手札:2枚

フィールド:マジシャン・ジュニア ヘッドドラゴン ブロック・エンジェル

タカシ

HP:4000 AC:3 手札:5枚


(うーん、確かに上級1体出してエンドよりは下級複数体並べられた方がめんどくさいな。しかも先行でぶん回されたのも宜しくない。でも相手の場に高打点持ちはいない。なら…)

「ヨブゲロゲを召喚。効果発動。ミラゲロゲをデッキから召喚」


AC:3→2

『ヨブゲロゲ』

下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100


『ミラゲロゲ』

下級 タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:0 防御力:100


「ミラゲロゲ?初めて見るカードだな…どんな効果を持ってるんだ!?」

「ミラゲロゲの効果発動。場に出た時、手札にあるミラゲロゲをACなしで召喚します」

 手札からもう1体のミラゲロゲが現れ、フィールドのミラゲロゲが鏡のように分身する。


「ひょー!?これでタカシさんの場にはモンスターが3体…」

「来るよ!遊太!!」


「ヨブゲロゲと2体のミラゲロゲを素材にエクストラ召喚」

 ヨブゲロゲ達がデュエルガジェットに吸い込まれ、濁流と共に大型モンスターへと姿を変えていく。

(よし、今こそ考えた口上を唱える時!)

「えー、好きな四字熟語は先行制圧!あ、でも今回は後攻だけど。えーっと、現れろ!沼地の支配者ゲロゲロック!」

「ゲロゲーロゲー!!」


『沼地の支配者ゲロゲロック』

エクストラ タイプ:水 分類:爬虫類 攻撃力:1500 防御力:1800

召喚条件:水タイプ爬虫類下級モンスター×3


「出たな…ゲロゲロック!」

「カード2枚裏側で。さらに素材モンスターを1枚捨ててゲロゲロックの効果発動。対象はマジックで」

 裏側のカードが出た後、フィールドに騒音が鳴り響く。


AC:2→0

裏側カード:2枚


「これでマジックカードは使えなくなったわね…」

「しかも伏せカードが2枚も!前と同じなら『落とし沼』と『聖なる結界ミラーバリア』っすかね?」


「バトル入ります。ゲロゲロックでマジシャンジュニアを攻撃」

「させない!ブロック・エンジェルのブロック効果!味方モンスターが敵に攻撃された時、代わりにこのモンスターと戦闘を行う!」


沼地の支配者ゲロゲロック:攻撃力1500 ブロック・エンジェル:防御力1400

遊太 HP4000→3900


「っ!」

(まあそう来るよね)

「エンドで」

「よし、俺のターン!ドロー!」


遊太

HP:3900 AC:3 手札:3枚

フィールド:マジシャン・ジュニア ヘッドドラゴン

タカシ

HP:4000 AC:0 手札:1枚

フィールド:沼地の支配者ゲロゲロック

裏側カード2枚


「よし!まずは進化召喚だ!ヘッドドラゴンをダブルヘッドドラゴンに進化!」


AC:3→2

『ダブルヘッドドラゴン』

中級 タイプ:風 分類:ドラゴン 攻撃力:1900 防御力:1500


「もういっちょ進化召喚!マジシャン・ジュニアをサモン・マジシャンに進化!」

「…!」


AC:2→1

『サモン・マジシャン』

中級 タイプ:闇 分類:魔術師 攻撃力:1600 防御力:1600


「あれ!?ハイ・マジシャンじゃないっすね!?」

「マジシャンカードの新たな進化系のようね」


「サモン・マジシャンの効果発動!デッキの一番上のカードを確認し、それが自分と異なるタイプで中級以下の効果を持たないモンスターだった場合、条件・ACを無視して召喚することができる!行くぜ!」

 遊太はデッキの一番上のカードをめくり、タカシに見せた。

「…!」

「よし!中級モンスターだ!!鋭石の巨兵召喚!!」

(デッキトップ操作なしで当てるとか…引きが強いな)

 サモン・マジシャンの作った魔法陣から尖った岩で身を包んだゴーレムが現れた。


『鋭石の巨兵』

中級 タイプ:地 分類:岩石 攻撃力:1900 防御力:1800


「さらにセットアップガールを召喚!」

「がんば♪」

 白い魔導着に身を包み、目元にマスクをしたポニーテールの女の子が現れる。


AC:1→0

『セットアップガール』

下級 タイプ:なし 分類:魔術師 攻撃力:100 防御力:100


「セットアップガールが召喚された時に効果発動!手札が3枚になるまでドローする!俺の手札は0枚!よって3枚ドローだ!」

手札:0枚→3枚


「ひょー!先輩の場に中級モンスターが3体も!」

「ダブルヘッドドラゴンと鋭石の巨兵は共に、落とし沼にかからずゲロゲロックを破壊出来る攻撃力1900。万が一どちらかが聖なる結界ミラーバリアで破壊されたとしても、もう1体で攻撃すれば突破できる。いい布陣ね!」


「バトルだ!ダブルヘッドドラゴンでゲロゲロックを攻撃!!」

「あ、カウンター発動」

「やっぱ来たかカウンターカード!だけどこっちにはモンスターが4体もいる!そう簡単にはやられないはず!」

「切断の壁使います」

「え!?」


「ひょひょ!?」

「ミラーバリアじゃない!?」


『切断の壁』 カウンターカード

相手モンスターが攻撃してきた時に発動できる。相手モンスター全員の攻撃力は、相手フィールドのモンスターの数×400ダウンする。


ダブルヘッドドラゴン 攻撃力:1900→300

鋭石の巨兵 攻撃力:1900→300

サモン・マジシャン 攻撃力:1600→0

セットアップガール 攻撃力:100→0


「俺のモンスターの攻撃力が1600もダウン!?」

「そのまま戦闘、返り討ちで1500ダメージです」


ダブルヘッドドラゴン:攻撃力300  沼地の支配者ゲロゲロック:防御力1800

遊太 HP:3900→2400


(そっちが大量展開で来るならこっちはそのメタを張るだけなんですわ)

「これじゃあ攻撃が届かない…!ターンエンドだ…!」

「…ニチャア」


To be continued…

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